Gutsy Gritty Girl – ガッツィ・グリティ・ガール – ビームコミックス
著:シマ・シンヤ
出版社:KADOKAWA
ロスト・ラッド・ロンドン、GLITCH(グリッチ)のシマ・シンヤさんの短編集。
ロスト・ラッド・ロンドンの登場人物、刑事のユキの前日談の他、デビュー作のLight and Speceの他、全六話が収録されました。
各話あらすじ感想
Gutsy Gritty Girl
成績は優秀だが身に振る火の粉は払いのけるタイプの少女、グレイス=ユキ=ハワード。
親の離婚や自身の結婚などを経て成長した彼女は、警官になることを望み……。
感想
家族であっても無条件に分かり合えるわけじゃない。
人と人はそれぞれが別の人生を生きていて、価値観はそれぞれに違う。
エピソードを読んでいて、そんな事を思いました。
宇宙の真ん中の隣
過去の一件で就職もままならないパイロットの女、リン・ハラダ(29)。
宇宙船の駐車場代にも事欠く彼女の前に、昔の仕事仲間シェイが現れ……。
感想
宇宙船のパイロット、リンと昔の仕事仲間シェイによるSFクライムアクション。
現代社会の延長線上にあるような、リアルな世界観。
主人公のリン、相棒のシェイともに魅力的で続きが読みたい作品でした。
キバタンのキーちゃん
妻を亡くした男が伝手を頼りオウムを飼い始める。
やがて男は年老い、キーちゃんと名付けられたオウムは娘に引き取られ、その後、孫娘が飼うことになるが彼女も乳癌で若くしてこの世をさり……。
感想
鳥の中でも長い寿命を持つオウム、キバタン。
作品は彼の目を通して、移り変わっていく家族の様子が描かれるというモノ。
年を取り消えていく命。
穏やかですが確実に過ぎていく時間の流れを感じるお話でした。
Good Morning Ladies
宇宙由来の寄生虫により、野生動物が狂暴化。
それにより人口が激減した世界。
狂暴化の発生から二十年、畑を作りコロニーで暮らしているキヨコ、マヤ、ローラの三人はその日も逞しく過ごしていた。
感想
宇宙由来の寄生虫により、ペットも含めた動物が狂暴化。
その事で文明は崩壊、生き残った人々は崩壊前の知恵と遺産で何とか生き延びている感じでした。
また寄生虫は遺伝子まで操作するのか、見た目も変わりより凶悪になっている様子。
キヨコ、マヤ、ローラ。
三人のおばさんがとても逞しく、読んでいて気持ちがよかったです。
Man On The Shore
人気のない街を二人の男が歩いている。
年配の男はリオン。
若い男の名前はゼン。
二人はリオンが見たことがないという、海を目指し街を歩いていた。
感想
街を歩きながらゼンはリオンの過去を語ります。
強靭な肉体と人を遥かに超える強い力を持ち、空軍いたというリオン。
彼は自身で積極的に選択した事がなく、流されるままに生きて来たのでは。
エピソードを読んでいて、そんな事を感じました。
Light and Specs
相棒を亡くした刑事のグレイ。
彼の現在の相棒は電球頭のアンドロイド。
成長型のAIを搭載し、ほぼ無限に経験を積み成長を続ける相棒と共に、グレイはその日も仕事をこなしていく。
感想
少しぶっきらぼうなグレイと人間臭いアンドロイドの電球君。
バディな二人の関係性が心地よい作品でした。
まとめ
どの作品も楽しかったですが、個人的には宇宙の真ん中の隣とGood Morning Ladiesの二つが特に印象に残りました。
いつか、長編作品として読みたい、そんな物語でした。
この作品はKADOKAWA公式サイトにて試し読みいただけます。