近所の最果て 澤江ポンプ短編集 torch comics
著:澤江ポンプ
出版社:リイド社
創作作品から著者澤江さんの周辺で起きた日記的な物、思い出などを描いた物を集めた一冊です。
各話あらすじとか
ハダカヨメ
結婚三年目の主婦のトモコは旦那が会社に行っている間、内緒でしている事がある。
それは全裸で過ごすという事だった。
夜明けの未来ちゃん
引きこもりの源三はセーラー服の少女と暮らしている。
彼女の名はミライ。
彼女の言葉を信じるならば、ミライは源三の子孫。
未来から来た少女らしい。
2P漫画
名前の通り2ページの漫画。
SF、三十歳、誕生日の三本を収録。
悪い魔法使い
魔法の存在が科学的に証明され、研究が始まったころ。
科学者の薮田は魔法が使えるという先輩の菊丸に、魔法を見せて欲しいと頼む。
レッツインテリ
リングの上、眼鏡の男が覆面レスラーと戦っている。
リングネーム「インテリ堀田」。
これは地味な堀田に出した会長の指示。
インテリキャラで押す為、眼鏡を掛けろという無茶振りから始まった事だった。
煙街
煙の立ち込める街。
その街の工場で働く男は工場の医務係から病院に行く事を勧められる。
煙の中を歩く内、男は少女と煙の隙間から差し込む光を見る。
1P漫画
文字通り1ページの漫画。
ラジオのお題に沿って著者澤江さんの周辺で起こった出来事が描かれたエッセイ的な作品。
井之頭線の駅名に「ん」を付ける話が好き。きちじょうじんとか。
怖くない話
著者の体験した不思議な話。
上京したばかりの頃の体験談。
普通に怖かった。
怖くない話2
著者が住んでいた生家での話。
中学時代の著者が体験した出来事。
こっちも怖い。
真夏の夜の亀
ある夏の夜、余りの暑さに男がぼやいていると家のチャイムが鳴った。
誰だと訝しみながら出てみると、そこには甲羅を背負った少女がいた。
うちのフランスゴムの木
家でフランスゴムの木を育てていた男。
色々あって幹の三分の二を切る事になったが、季節が廻れば新たな芽を出す。
その生命力の強さに男は植物の事を暇つぶしも兼ねて調べた。
彼は光合成の仕組みを知り、自分も何もせず行きたいと昼寝をしながら考える。
そんな彼の元に葉緑体を名乗る球体が出現した。
オチが怖いです。
はっぱの人
妻と別れ無気力な日々を送る伊達。
彼は行きつけのスーパーのレジ係「吉井経(よしいけ)」さんの頭に生えたはっぱが花を咲かせるのを目撃する。
それを後輩に話すと、はっぱの人は気分がいいと花が咲くと教えられる。
更に後輩ははっぱの人はすごく元気で前向きだと話した。
伊達は沈んだままの心を回復させるヒントを貰えればと、吉井経さんに教えを乞う事にした。
飛翔
体が揚力を生む形の為、風を受けると空が飛べるじーじの話。
なんだかアルプスにいそうな孫娘とじーじによる少し不思議なファンタジー。
空
母と子の卒業式。
父を想い二人は泣きながら空を見上げる。
父は空の上から二人を見守っていた。飛行機の窓から。(出張かな?)
愛のBBQ
著者の大学時代。
倫理学の教授、上野先生の語った愛の定義のお話。
一夜干しプロポーズ
とある男女の手作りのアジの一夜干しと、それを使った夕食のお話。
ご飯が美味しい事は多分幸せに深く関わっていると思う。
サイコンクエスト
少年ユウはコードの切れたコントローラーを手に、ママを守る為「さいこんあいて」に戦いを挑む。
感想
日常の延長線上にあるSFやファンタジー的な創作作品の他、著者澤江さんの周辺で起きた事等を詰め込んだ作品集です。
収録された作品の中では「レッツインテリ」「はっぱの人」「サイコンクエスト」の三つが特にお気に入りです。
「レッツインテリ」は会長の無茶振りを昇華させ、エンターテイメントとしてのプロレスを見事に成し遂げた堀田がとても恰好良かったです。
「はっぱの人」は頭にはっぱのある吉井経さんがすごく可愛らしい作品でした。
彼らのその後も読んでみたいです。
「サイコンクエスト」はユウの想像の中のゲームテキストが楽しい作品でした。
ちょっとユウとは違いますが、頭の中で想像して自分がゲームキャラや、映画の登場人物、ロボットになる遊びは幼い頃たまにやっていました。
突然、ぎこちなく動き始める子供は傍から見れば多分不気味だっただろうなと思います。
感想
あとがきで作者の澤江さんが直腸がんである事が明かされました。
一日も早いご回復をお祈りしております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。