漫画短編集・一巻完結作品

S.Flight 内藤泰弘 作品集

投稿日:2019年11月18日 更新日:

ラジオS.Flight 内藤泰弘 作品集 ハルタコミックス
作:内藤泰弘
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン

トライガン、血界戦線の作者、内藤泰弘さんの初期作品集。
1989年から1997年までのアマチュア時代からデビューした後の短編作品が収録されています。

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サンディと迷いの森の仲間達

あらすじ
南のはて、ロストアイランドという島に降り立った学者のパトスは、その島に広がる原生林、ストレイドフォレストと呼ばれる帰らずの森で、人では無い者達と出会う。

彼らの話ではこの森には、サンディという少女が暮らしていると言う。
サンディは彼女を連れてこの島に迷い来た祖父が死んでから、ずっとここで暮らしているらしい。

サンディと話し帰るかどうかパトスは尋ねたのだが……。

感想
人と異なる生命との共存、これは内藤さんの作品ではずっと語られているテーマの様に思います。
この作品で語られる理想はスターウォーズの世界の様に、個人の好悪は有っても、種族による差別的な物はない世界であるように感じます。

僕等の頭上に彼の場所

あらすじ
平成二年七月、十八歳の咲添かなみは予備校に向かう電車内で、吊り輪に捕まり眠るサラリーマンに、寄りかかられ押し倒される。

その場は何とか収まり、サラリーマンには丁寧な謝罪をうけた。
その後、向かった予備校で、かなみは目標を同じくして進む予備校の人々の中に、自分がいる事に息苦しさを覚える。

家に帰ると、父母がいとこの結婚について話していた。
当たり前で平穏な暮らし。
かなみにはそれがなんとなく嫌だった。

日も暮れ気分転換に出かけた海で、かなみは宙に浮いた牛乳瓶を見つけた。
声を掛けるとその牛乳瓶の横にいた青年は、慌ててそれを隠した。

その青年は、昼間かなみを押し倒したサラリーマンだった。

感想
空を泳ぎ、星を回遊しているくじら。
そのくじらを見る為、空に上がるサラリーマンと学生のお話です。

大人になる前の、ひと夏の冒険といった感じの話です。
空を泳ぐくじら、海水で浮く石等、ジュブナイル小説のテイストに溢れた作品となっています。

夢ばかりじゃ生きていけないけど、夢が無いとつまらない、そんな感想が浮かびました。

CHRISTMAS HEART

あらすじ
雲間に浮かぶ島から終わろうとしている祖父に変わり、孫娘クロウディアは赤い帽子と赤い服を着て、デリバリーバイクで配達に出かけた。

まだほんの少しだけ残っている、サンタクロースを信じる子供達にプレゼントを届ける為。

とある街で、自分を見る事が出来る少年にプレゼントを手渡す。
それは、サンタが消えそうな世界で、存在を繋ぎ止める礎となった。

感想
子供の頃、家には煙突が無かった(ある家の方が日本では珍しいよね)ので、サンタがプレゼントを届けてくれるのか、不安だった事があります。

勿論、煙突が無くても翌朝プレゼントは枕元にあったのですが、何処から入ったのだろうと不思議に思ったものです。

サンタは元はキリスト教の聖人ですが、宗教を抜きに良い風習だと思います。

call xxxx

あらすじ
孤児だったランヴェルトは、世界は灰色だと思っていた。
そんな彼は、成長し人類初の恒星間宇宙飛行士として旅立つ事になる。

唯、その為には地球に残る全てを捨てる必要があった。
恒星へ往復中、彼はコールドスリープで眠りにつく。
その時間は四十年。
知り合いは老人となり、もしかしたら死んでいる可能性もある。

ストイックに訓練に励むランヴェルトに、同じ孤児院出身だというゴンドレイ博士が声を掛ける。

彼はランヴェルトをその孤児院に誘った。
孤児院には、変わらない様子の寮母さんと、騒がしい子供達、そして美しく成長した幼馴染のフランセスカがいた。

感想
人は一人では生きていけないし、一人で生きてちゃいけないそうです。(別の人は割と一人でも生きていけると言ってましたが…)
ランヴェルトの世界が灰色だったのは、本当の意味での家族や仲間がいなかったからかなと思いました。

帰る場所があるとフランセスカがはっきり口にした事で、ランヴェルトにとって地球は蒼く輝く故郷の星になった様に感じました。

CHRISTMAS HEART AGAIN

あらすじ
アカツキはクリスマスの日、赤い服の女性からプレゼントを受け取った。
家族は誰も信じてくれなかったが、祖父だけはアカツキの言葉を信じてくれた。

その女性は、サンタの孫、クロウディアだった。
彼女が配達を終え家に帰ると、友人のアルカンフルが待っていた。
アルカンフルは家業を継いで死神になったらしい。

その死神の仕事として協力して欲しいと、アルカンフルはクロウディアに写真を差し出す。
写っていたのはアカツキの祖父だった。

感想
サンタのお話、第二弾。
この作品は前作と違い、少し寂しいテイストの物になっています。
老いと死は誰にも平等に訪れ、今の所逃れる事は出来ません。
ただ、死ぬ時はなるべく後悔無く笑っていたいなぁと思います。

Satellite Lovers

機会に夢中の恋人のトビオと勢いで別れた蒼音(あおね)。

それから時が過ぎ、和解する機会を得る前に世界は崩壊した。
人は死に耐え、残った数人で彷徨う日々。

そんなある夜、雑音しか入らなかった小さなラジオに女性の声が流れ出す。
女性の名はエノア、彼女はこの世界に生きている誰かに向けて語り掛けていた。

蒼音たちは、電波を辿り位置を割り出す。
其処はかつての蒼音の恋人、トビオの研究室の近くだった。

感想
災害時、一番活躍する情報源はラジオだと聞いた事があります。
僅かな電力で動き、携帯の様に無数の基地局を必要とせず、軽く持ち運びに便利なラジオはやはり、単純なだけあって強いのでしょう。

音だけのメディアは、映像配信が溢れる昨今、斜陽だと言われていますが、ラジオが伝える音と声は人の心に希望を与える様に感じます。

私は被災者ではありませんが、震災の時、とても胸が痛くなりました。
その時、聞いた深夜ラジオのパーソナリティたちの言葉で、ほんの少し心が軽くなった事を覚えています。

テレビが悲惨な映像を流す中、被災した人達を心配し、言葉を選びながら話す、普段は面白い事しか言わない人達。
その時の事は今も心に残っています。

まとめ

デビュー前、アマチュア時代の作品を集めた短編集ですが、描かれているテーマは現在の内藤さんの作品と変わっていない様に感じます。

世界に愛と平和、そして少しのユーモアを。
内藤さんが、一貫して描いている物はそんな物の様な気がします。

この作品はComic Walkerにて第一話が無料で閲覧いただけます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのIgor Ovsyannykovの画像です。
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