傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン 1 バンチコミックス
著:磯見仁月
出版社:新潮社
十八世紀のフランス。
フランス王妃マリー・アントワネットの仕立て屋となった女性「ローズ・ベルタン」の軌跡を描いた作品です。
登場人物紹介
マリー・ジャンヌ・ベルタン
後のローズ・ベルタン
クールで冷たい印象の女性。
髪結いと仕立てを地方都市アブヴィルにて叔母のバルビエから学ぶ。
女性が限られた仕事しか得られないこの時代に、女を武器にするのではなく自らの才覚と努力で道を切り開く事を選ぶ。
結婚して家庭を持つ事も想像はしたが、その相手が別の娘を選んだ事が彼女が仕事に生きると決める切っ掛けになったようだ。
マルセル
マリーの幼馴染
マリーは彼にほのかな恋心を抱いていたが、彼はいい意味でも悪い意味でも女の子らしい役人の子女ララを選んだ。
ララ
アブヴィルに住む役人の子女
裕福で幼い頃から何不自由なく育ち、容姿にも恵まれている少女。
マリーは自分に無い物を持つ彼女に憧れと嫉妬を抱いていた。
バルビエ
マリーの叔母
兵隊だった父を亡くしたマリーの才を見出し、引き取って自分の持つ技術を仕込んだ。
マリー・ジャンヌ・べキュー
後のデュ・バリー婦人
後々ルイ15世の公娼としてマリー・アントワネットと敵対する。
現在は美貌と肉体を武器にパリ一番のお針子として活躍中。
見た目だけでなく優れた知性と強かさを持つ女性。
ナンバーワンホステスといったイメージ。
女を武器にしている事に反発したマリーの心さえも利用した感がある。
強い。
レオナール・アレクシス・オーティエ
後に髪型の神様(ル・デュードゥ・ラ・コワフュール)と呼ばれた髪結い
マリーと同様、王妃マリー・アントワネットに仕える事になる。
ダルタニアンの故郷、ガスパーニュから来た男。
爽やかなイケメンで女好き。
髪結いとしての技量はマリーも認める程高い。
彼も己の技術で上を目指すマリーを認めている。
あらすじ
フランスの地方都市アブヴィルで髪結いと仕立てを生業にしていたマリーは、ほのかな恋心を寄せていた幼馴染、花屋のマルセルの結婚を機に仕事に生きる事を決め光の都パリを目指す。
パリでお針子として働き始めたマリーだったが女性の社会的地位はパリでも変わらず、同僚のお針子達も仕事を結婚までの繋ぎと考えているようだった。
そんな中、彼女の働く店にパリで一番のお針子として名高いマリー・ジャンヌ・べキューが訪れる。
自らの美貌を武器に男を手玉に取るべキューにマリーは強い反発心を覚えた。
べキューは店の品ぞろえに不満を漏らし、共に店を訪れた男性を自らが勤める店に誘う。
その去り際、他の店員同様、布地を掲げていたマリーにべキューは微笑みかけ「だっさ」と口を動かした。
それを見たマリーは無言で彼女の腕を掴み「私に仕立てさせて下さい」と思わず口にしていた。
べキューは訛りからマリーをパリに来たばかりだと見抜き、更に品ぞろえに言及して満足な物が出来るとは思えないと返す。
それに対してマリーは「満足出来なければお代はいりません」と答えた。
さらに続けて
「私は……女で服は売らないわ」
とべキューに真っ向から啖呵を切った。
感想
主役のマリー・ジャンヌ・ベルタンの心意気が素晴らしい作品です。
十八世紀のフランス。
このブログでも感想を書いているアルテと同様、この時代も女性の社会的地位は低いです。
男社会でありその中で女性がのし上がっていくには、べキューの様に女を武器にして戦う事が一番の近道だったようです。
また女性の仕事といえばお針子、髪結い、女工等の下働き的な物が大半だった模様です。
そんな中でマリーはモード商(ファッション・デザイナー)としてパリで名を馳せていきます。
マリーの印象は表面上は冷たく静かですが、内面は熱く滾る炎といった感じでしょうか。
言葉では無く、作り上げた物が相手の想像を凌駕し沈黙させる。
最高にカッコいいです。
まとめ
メインはマリーの栄達ですが、やはりこの時代のフランスと言えば革命は外せないでしょう。
激動の時代にマリーがどう生きたのか、次巻が楽しみです。
こちらの作品はコミックバンチwebにて一部無料で閲覧いただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。