自作小説

花旅ラジオ 第十一話 「シェルターへ」

投稿日:2019年5月2日 更新日:

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01

ルクはシェルターへ続く道の中程で、センサーによりこちらに向かう集団がいる事を感知した。
二人は茂みに隠れそれをやり過ごす。

山の木々を切り開いて作られた道は細く、僅かにアスファルトが残ったその道をスーツを着た兵士が行軍していく。

集団は六十人、防弾盾を持っている事から、狙撃を警戒しているのだろう。
上陸した砂浜近くで十人、街で三十人、今、街に向かっている人数が六十人。
捕獲部隊の隊長から聞き出した、全部で百二十というのが嘘でなければ、シェルターに残っているのは二十人という事になる。

集団は重装備のためか足が遅く、街まではまだ時間がかかりそうだ。
移動に車等を使っていないのは、もともと持っていないか、六百年の内に壊れてしまったのだろう。
先ほど話しを聞いた副官も、アンドロイドは昔はいたが、今は動いている物は無いと話していた。
耐用年数を超え、故障したと考えるのが妥当だ。

「タマさん、シェルターの戦闘要員は、尋問した男の話が確かならば、残りは二十人だと予測されます。」
「その位なら、何とかなりそうだな。」
「ただ、男は防衛システムがあると話していました。それには気をつけないといけません。」
「防衛システムって例えばどんなのがあるんだ?」

ルクは一般的なシェルターの情報を、自身のメモリーから呼び出した。
端末で色んな情報を見ておいてよかった。
あの頃は、ただ知らない事を知る事が楽しくてやっていただけだったが。

シェルターの防衛システムについて調べると、セントリーガンという物が出てきた。
タレットとも呼ばれる物で機械制御で自動で敵を認識し、マシンガンや小型ミサイルを発射する物のようだ。
索敵範囲はそれほど広く無い様だが、潰しておかないと近づいた瞬間、ハチの巣にされるだろう。

「見てみないと分かりませんが、おそらく機械で動く銃が装備されていると思います。」
「銃が勝手に動くのか?」
「そうです。でも遠くのものまで撃っていたら非効率なので、有効範囲はそれほど広くない筈です。」

「また遠くから撃つのか?」
「その方が安全です。」
「なあ、ルク。動かない奴を撃つんだったら、俺にもやらせてくれよ。」

ルクはタマにやらせるべきか迷ったが、ハンドガンだけでなくライフルも使えた方が、彼にとってもいいかもしれないと時間を決めてやってもらう事にした。

「分かりました。でも攻撃を始めたら街に行った集団が戻ってくると思うので、五分間でお願いします。」
「えー、たった五分かよ。」

「それと場所がばれて、こちらを攻撃してくるようなら、すぐに私に変わってください。」
「ちぇっ、分かったよ。」

集団が街に着くまであと三十分はかかるだろう。
彼らが街に着いた時点で攻撃を開始すれば、呼び戻されても一時間は戻ってこないはずだ。
二人はシェルターへの道を辿り、入り口が視認できる位置まで近づいた。

センサーを使い動く物を捜索する。
周囲にはいくつか動物と思われる反応があったが、人は確認できなかった。
シェルター周囲の微弱な反応は、監視カメラと思われる。

スコープで確認すると、山の一部が削り取られ、コンクリートで固められた区域が見えた。
かつては周囲を囲んでいたであろう金網で出来たフェンスは、錆に覆われ何か所か崩れており、壁の意味を成していない。

フェンスの中には、コンクリートで作られた小さな建物が一つあった。
おそらく、扉の開閉をするための施設だろう。

フェンスの最奥、コンクリートの壁の中心に頑丈な合金製の扉が見える、
壁の上には、半球型の黒い物体が等間隔で置かれていた。
三十メートル程の壁の上に十基並んでいるのが確認できた。

ルクはメモリー内のシェルター防衛システムの項目の中に、壁の上にある物と同じタイプを見つけスペックを確認した。
索敵距離は二百メートル、7.62ミリの銃弾を発射する回転式多銃身機関銃を装備している。
基本的には自動制御だが、人が操作する事も出来るようだ。

 

02

ルクはタマにアサルトライフルを渡し、操作方法を説明した。

「いいですか。スコープを除いて真ん中の十字の部分に弾が当たります。実弾式では無いので、引き金を引けば瞬時に着弾します。この銃の威力なら一発で破壊出来るはずですが、他の物が反応するといけないので、遮蔽物を利用して、取り敢えず一つ潰しましょう。」

「分かった。でもコレ重いし、大きいな。」
「タマさんには使いにくいかもしれませんね。」
「とにかくやってみるよ。」

二人は入り口の側面に回り込み、タレットが一基だけ見える位置に身を伏せた。
銃身を安定させるため、ルクは背負っていたバックパックを地面に置き、タマに銃身を乗せさせた。

「タマさんは私と違って、呼吸や体の反応で狙いがブレますから、それに注意してください。息を吸って、吐き切った所で止めて、ブレを少なくすると狙いやすいはずです。」
「よし、やってみる。」

タマはカミュに教わった通りに、スコープを覗いて標的を確認した。
確かに息をするだけで、狙いは小刻みにブレ安定しない。
目標までは三百メートル。
タレットは反応していない。

タマはゆっくり息を吸って、吐き切った所で止めた。
ブレは幾分収まり、狙いが中心に着た所で引き金を引いた。

瞬間、黒い半球が爆発し黒煙を上げた。

「やった!当たったぞ!!」
「他の物が起動したようです。タマさん、移動しましょう。」
「分かった。」

ルクはバックパックを拾い上げ、タマを促して後退した。
回り込むように移動して、茂みからシェルターの様子を伺った。
壁の上部で残った九基のタレットが周囲を警戒するように動いている。

「後は私が潰します。」
「もう終わりか?」
「九基は数が多いです。場所を特定されれば、こちらが危険です。」
「ちぇっ、分かったよ。」

タマは残念そうにライフルをルクに返す。
ライフルを受け取り、ルクはそれを膝立ちで構え、次々とタレットを破壊した。
まだ場所は特定されてないようなので、ルクは最後の一つはタマに任せる事にした。

「いいのか?」
「はい、今はまだ位置がバレていない様ですから。」

タマは先ほどと同様に、ルクのバックパックを支えにしてタレットを破壊した。

「遠くから撃つのは面白いな。」
「狙撃は一方的に攻撃出来る場合もありますが、敵に狙撃手がいたり場所が特定された場合、包囲される危険もあります。戦闘はどんな場合でも命の危険を伴います。気を引き締めていきましょう。」

「ルクは心配症だなぁ。」
「私はタマさんを失いたくありません。」
「……分かった。気をつける。」
「はい!」

ルクはタマが真剣な顔で頷いたのを見て笑みを浮かべた。

その後、スコープを使いシェルター周辺を確認して、発見したカメラやセンサーをルクは次々と破壊した

センサーを併用して確認したが、反応は見られなかった。
どうやら全て潰したようだ。

二人は茂みに隠れるように、シェルターに接近する。
ルクはコンクリートの建物に近づいた。

建物は三メートル四方の大きさで、外壁に風化は見られたが扉のシステムは機能しているようだ。
ルクは建物の扉の横にあるパネルに手を当てた。

彼女が作られた目的は世界を見て、その情報を管理者に送る事だ。
管理者はどこへでも入れるよう、ハッキングプログラムをルクに設定していた。

マスターキーと呼ばれるそのプログラムは、プランカルキュールと名乗るハッカー集団が開発したもので、当然違法だったが管理者は移民でどうせ星を離れるのだからと、ルクに組み込んだのだ。

ドアは一瞬で開き、ルクとタマは中に滑り込んだ。
建物の中は高さ一メートル程の箱型端末が一台置いてあるだけの簡素なものだった。
ルクが端末に触れると、端末上部に認証画面が現れた。

「なんだコレ?」
「登録された者しか、扉を開けられないようにする仕組みです。」
「この端末は、ドアの開閉以外は出来ないようですね。」
「開けられるのか?」
「任せて下さい。」

ルクは、ナイフを使って端末下部のカバーをはずし、内部のメンテナンス用コンピューターを確認した。
その後、バックパックからブレスレットを取り出し左手に嵌める。

これはスタンドアローンで動いている物に、アクセスするためのもので、ルクが施設を出る際、制作したものだ。
ブレスレットからコード引き出し、コンピューターに接続する。

ブレスレットを介して、メンテナンスコンピューターにアクセスしたルクは、マスターキーを使い扉のロックを解除した。
重い音を響かせて、シェルターの扉が開いて行く。

「開きました。」
「早えな。」

タマは建物の外に飛び出し、扉を確認した。

「ホントだ!開いてる!」

タマに続いて建物を出たルクが彼に声をかける。

「次は内部で端末を見つけて、バステトを解放しましょう。」
「よし、やろうぜ。」

二人は薄暗いシェルター内部に足を踏み入れた。

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