自作小説

花旅ラジオ 第十話 「狙撃」

投稿日:2019年4月30日 更新日:

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01

二人は一度街に向かい、それから山に向かう事にした。
歩きながらタマがルクに尋ねる。

「ルク、端末を見つけてどうするつもりだ?」
「バステト達を解放します。最初は不意を突けたでしょうが、一度逃げ出せば、彼らを捕らえる事は人間では出来ないでしょう。」

タマは少し黙っていたが、やがて口を開いた。

「解放できてもあいつ等を何とかしないと、ずっと隠れて住まなきゃならないんじゃ無いのか?」

ルクはタマの言葉で作戦を修正した。

「そうですね。では移民船を奪って、彼らの移動手段と武器を潰して、船でバステトを大陸に移しましょう。」
「あの男が話してた船か。でも動かせないんだろ?」
「見てみないと分かりませんが、多分起動できます。」

「ホントか?」
「はい、タマさんは船に乗るよう、皆を説得してください。」
「分かった。」

タマはルクを見上げて笑顔を見せた。

「あんがとな、ルク。でもお前良かったのか?俺達より人間の方が、お前の見た目なら、暮らし安いんじゃないのか?」
「私はタマさんが一緒にいてくれるなら、どこでもいいです。」
「そっか。」
「はい。」

二人は移動しながら計画話し合った。
ルク達を捕まえに来た部隊は、彼らの位置を把握出来ていなかった。
ルクが持っているような、センサーの類は持っていないのだろう。

「タマさん、おそらく通信が入る筈です。それで他の人間をおびき寄せましょう。」
「声でバレるんじゃないのか?」
「本部聞こえるか?…どうですか?」

ルクの声は尋問した隊長と瓜二つだった。
タマが目を丸くして驚いている。

「どうやったんだ!?さっきの奴と同じ声だったぞ!?」
「声は自由に変える事が出来ます。」
「そんな事も出来るのか…。ホント便利だな。」

その後二人は街に辿り着き、山へ続く道が見下ろせる比較的頑丈そうな建物の屋上に登った。
ビーコンは屋上から狙いやすい別の建物に、捜索隊が立てこもっていると見えるよう配置した。
暫くすると無線に連絡が入った。

“こちら本部、動きが止まっているようだが、何かあったのか?”
「捕えた奴らが逃げたした。逃亡の際に武器を奪われ交戦している。負傷者も出ている。救援を頼む。」
“こちらで確認した数は二人だったはずだ。十名いれば対処可能だろう?”

「敵の一人はアンドロイドだ。捕獲の際二人やられている。救援を…」
“おい、どうした!?返答しろ!!”

ルクは無線を切った。

「これで何人かこちらに来るはずです。狙撃で数を減らしましょう。」
「狙い撃ちか…。俺は出来ないぞ、そんな事。」

タマは少しつまらなそうな口調で言った。

「任せて下さい。タマさんはシェルターに入ってからが本番です。」
「チェっ、わかったよ。」

二人は屋上に伏せて、敵が現れるのを待った。
三十分程で、ルクのセンサーに三十の光点が表示された。
敵は二人一組でバラバラに展開している。

こちらに接近してくる光点は取り敢えず放置して、離れた場所に移動した二組ほどをライフルのスコープで確認した。
狙撃兵のようだ。片方は観測手だろう。

ルクはライフルをレーザーモードに変更して、茂みに隠れた狙撃手と観測手の銃と右手を狙い引き金を引く。
レーザーは彼らの着ているスーツをたやすく貫通し、肉体を破壊した。
続けてもう片方の狙撃兵たちも同様に攻撃する。

高出力のレーザーは地球上では、引き金を引くと同時に着弾する。
しかもルクはアンドロイドだ。
人のように手ぶれなどは無く、正確無比な射撃が可能になる。

ルクは敵兵を次々に狙撃した。
武器を破壊し、移動している者は膝を、隠れている者は致命傷にならない場所を撃って、行動力を奪っていった。
最後に部隊の真ん中で茫然としている、隊長と横にいる副官らしき男の膝を撃ち抜き、ルクは戦闘を終えた。

 

02

「終わりました。タマさんシェルターに移動しましょう。」
「あ…。ああ。」

建物を降りながらタマがルクに話しかけた。

「お前凄いな。あいつ等何も出来なかったぞ。」
「私が凄いのではありません。武器とプログラムのおかげです。向こうに戦闘用アンドロイドがいたら、死んでいたのはこちらだったでしょう。」

「戦闘用ってそんなに強いのか?」
「体のつくりが違うのです。戦闘用はタマさんより早く動けますし、力は猪を素手で殴り殺せるほど強力です。」

タマは自分より早く動いて、猪の頭を殴っているルクを想像してブルっと体を震わせた。

「そりゃ、こえぇな…。お前が戦闘用でなくてよかったよ。もしそうだったら最初に会った時、俺死んでただろうな。」
「本当ですね、私もそう思います。戦闘用では無かったから、タマさんとこうして話す事が出来る訳ですから…。」

そう言ってルクは笑みを見せた。
タマもその笑みを見て、少し笑った。

二人は他の兵に見つからないように、最後に倒した男二人に近づいた。
膝を撃ち抜かれた男たちは、足を投げ出すように座り込み、こちらを茫然と見ている。
隊長が腰に手を回したしたので、ルクは腰の銃をホルスターごと破壊した。

「こんにちは。」
「貴様ら何者だ!?なぜそんな高度な武器を所持している!?」
「言う必要は感じません。こちらの質問に答えて下さい。そちらにアンドロイドはいますか?」
「言うと思うのか?」
「いいから答えろよ。」

タマがそう言ってナイフをチラつかせたが、隊長に怯んだ様子はない。
ルクは二人を見た。隊長はこちらを睨んでいるが、副官は怯えているようだ。
話しを聞くなら副官の方が良さそうだ。

「あなたなら素直に話してくれそうですね。アンドロイドはいますか?」
「……。」
「言うな!命令だ!」

ルクは隊長の左手を撃ち抜いた。

「ぐッ!」
「黙っていて下さい。今はこの人と話しているのです。」
「アンドロイドはいますか?」

銃を構え無表情にこちらを見下ろすルクを見上げ、男は震えながら口を開いた。

「いっ、いない。昔はいたようだが、俺が生まれた時には動いている奴はいなかった。」
「私が使っているような兵器を所持していますか?」
「…持っていない。俺達が持っているのは、炸薬式のアサルトライフルやグレネードランチャー。一世代前の物だけだ。」

ルクはショックモードに切り替え、二人を気絶させた。
アンドロイドがいないなら、何とかなるだろう。
この事は捕獲部隊の隊長に聞いておくべきだったなと、ルクは反省した。

「ルクどうする、また待ち伏せするのか?」
「いえ、この人たちがやられた事は相手に伝わっているでしょうから、もっと救助隊を送り込んでくるでしょう。シェルターへの道中で隠れてやり過ごしましょう。」

「分かった。でもお前、怒ると怖いな。」
「えっ!怖いですか!?……タマさん、私の事嫌いになりました?」
「いや、嫌いにはなってないけど、俺は少し抜けてるルクの方が好きだな。」
「……好き。」

ルクはタマに好きと言われて、顔を赤らめた。
会話の流れを聞けばタマが言っているのは、どちらかと言えばという事だと分かるはずだが、ルクは好きという単語単体で捉えてしまっていた。

「おい、なに、ぼーっとしてんだ。隠れるんだろ?さっさと行こうぜ。」
「はっ、はい。」

※※※※

 

大佐は救援に向かわせた部隊が全滅したと聞いて、通信室に駆け付けた。
通信室では撃たれた兵のうめき声で溢れていた。

「スピーカーを切れ。一体何が起きている?」
「敵にアンドロイドがいたようです。送った三十人は全員返り討ちに合いました。」
「何だと!?」
「高性能の狙撃銃を持っているらしく、位置を特定する間もなくこちらは戦闘不能に陥りました。」
「それで現在の敵の位置は?」

「不明です。大佐どうしますか?送った人員は生きています。救助を送りますか?」

「…いや救助は後回しだ。倍の六十人を送れ。狙撃という事は待ち伏せしている筈だ。街を取り囲むように兵を展開させて、位置を確認しグレネードを打ち込め。兵には盾を装備させろ。」
「了解しました。」

「クソっ、忌々しい奴らだ。大人しく捕まっていればいいものを。」

大佐はそう言って歯を軋ませた。

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