自作小説

花旅ラジオ 第十三話 「格納庫」

投稿日:2019年5月4日 更新日:

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01

ルク達はシェルターの地図を辿って移民船に移動していた。

バルの呼びかけで集まった人間たちは二百人程、バステトも百人程いた。
ルクが端末を操作し、シェルターのカメラにダミーの映像を組み込んだので、気付かれる事はないはずだ。

移民船はシェルターの最下層に置かれていた。
小型と言っても、全長は三百メートルを超えている。

地図にはシェルターから海に出る地下トンネルが整備され、船からの操作で格納庫に水が入りそのまま島の外に出られるようになっていた。

ルクは格納庫のパネルに触れ、タラップを作動させる。
しかし中央部のメインハッチに上がるためのタラップは、老朽化のためか作動しなかった。

仕方なく船の前部にあるサブハッチ用のタラップを作動させた。
こちらは何とか動き、ハッチまでの階段が船につながる。

ルクは、船のタラップを上りサブハッチの横にあるパネルに手を振れた。
ハッチがスライドし、船内の照明が光を灯した。
入り口は狭く、一人ずつ入るしかない。
幅三メートル程の廊下が左右に伸びている。

「まずは補機を起動します。タマさんは集まった人を船内の居住スペースに入れて下さい。天井のライトに沿って移動すればいいようにしますから、その事を説明してください。」
「任せろ。」

ルクはブリッジに走り、コンソールから船のメインコンピューターにアクセスした。
まずはライトを操作し、居住スペースへ続くライト以外を非常灯に変える。
その後、メインエンジン起動のため、補機の起動に取り掛かった。

補機の起動には施設責任者の承認が必要だったが、マスターキーは最高レベルのセキュリティを一瞬で解除した。
ルクは疑似的に二人の架空の人物を作り上げ、責任者権限を持たせた。
彼らにしシステム上で承認をさせ、メインコンピューターは補機の起動を了承した。
その過程で責任者として登録されていた、保安主任と運営主任の登録を抹消した。

起動までにかかる時間は二十分程、人の収容と格納庫への注水にかかる時間も考慮すると、大佐が気付き駆け付けるまでとても持たないだろう。
ルクはブリッジを離れ、入り口で人を誘導していたタマに声を掛けた。

「タマさん、手伝ってください。発進の準備が整うまで大佐を足止めします。」
「分かった。チャコ、皆に光に沿って行くように説明してくれ。」
「うん!」

タマの隣にいたチャコが頷きを返す。
それを確認して、タマはルクに向き直りいった。

「んで、何をすればいいんだ?」
「格納庫入り口で、迎え撃ちます。唯入り口は二つあるので、そちらを担当して下さい。」

そう言ってルクはタマにアサルトライフルを渡した。

「入り口で乱射すれば、近づいてこれないと思います。」
「お前はどうするんだ?」
「私はハンドガンで十分です。」

タマは心配そうにルクを見て言った。

「…ホントか?」
「はい、信じて下さい。」
「分かった。信じるよ。」

二人は格納庫の前後に別れ、入り口の側に潜んだ。

※※※※

監視ルームは混乱の極みに在った。
モニター上では、普通に作業している筈の非戦闘員が、誰も連絡に出ず不審に思った大佐が兵を差し向けると、そこは、もぬけのからだった。

連絡を受けた大佐は自ら兵を率い、格納庫に向かう事に決めた。
シェルターに残っていた通信を担当する者達にも、武装するように命じる。
今いるのは二十名だが、あと三十分もすれば、街に送った八十名が戻ってくる。
そうなれば脅威となるのは侵入者の二人だけだ。

ブリーフィングルームに集まった二十名に大佐の檄が飛ぶ。

「いいか!目的は船の確保だ!補機は起動準備に入っているが、もうすぐ街に送った者も帰ってくる!発進させなければ、移民船は我らの物だ!行くぞ!!」
「ハッ!!」

大佐はシェルターに残った兵二十名と共に、ブリーフィングルームを出て格納庫に向かった。

(誰だが知らんが感謝せねば、ここ何年か無理矢理起動させようと、試行錯誤してきたが、電力不足が致命的で半分諦めかけていた。これで私の王国をようやく始める事ができる。)

大佐は長年夢みていた、星の王になる事が現実になりつつある事を感じほくそ笑んだ。

02

「タマさん、来ます!!」
「了解!!」

ルクは扉の影からハンドガンを乱射した。
この銃はアサルトライフルほど高出力ではないが、足止めぐらいは出来る。
タマの方は、ライフルを乱射している。
弾数に不安はあるが、あちらは当たれば致命傷になるので、向こうも踏み込むのに躊躇するだろう。

もう少しで、収容は完了する。
そうすれば、船に逃げ込みハッチを閉じればいい。

ルクがそう思い、タマに視線を向けた隙をついて、グレネードランチャーが撃ち込まれた。
轟音が格納庫に響く。
タラップを上がっていた最後の数人は、悲鳴を上げて船に駆け込んだ。

ルクは爆風で吹き飛ばされていた。

「ルク!!」

タマはライフルを投げ捨て、ルクに駆け寄り抱き上げた。

「タマさん…。」

右腕は吹き飛び、内部から飛び出たコードが火花を上げていた。

黒いスーツを着た兵たちが格納庫に雪崩込んできた。
その数は十人に減っている。
一番後ろにいた男が、タマが捨てたライフルを拾い上げ前に進み出た。

「お前らが侵入者か。バステトとアンドロイド…。人の下僕として作られた分際で、引っ掻き回してくれたものだ。」
「…あなたが大佐ですね?」

ルクが口を開くと大佐はルクの左足をライフルで撃ち抜いた。
左腿が撃ち抜かれた箇所から溶解し床に落ちる。

「何しやがる!?」
「黙れ。奴隷が私に質問するな。……まあお前らには感謝している。わざわざ補機を起動してくれたおかげでようやく船が動かせる。」
「お前に船を渡す訳ないだろ。」

タマはそう言ってナイフに手を伸ばした。

「動くな。貴様らはこの武器の事を吐いてもらわねばならん。素直に言えば飼うぐらいはしてやる。」
「クソッ!」
「言います。言いますから殺さないで下さい。」
「ルク!!」

タマがルクを振り返ったタイミングで、彼女は残った左腕でタマのベストのホルスターから、ハンドガンを素早く抜いた。
大佐が構えていた銃のマガジンを狙って、引き金を引く。

マガジンは大容量のバッテリーだ。
不可視の弾丸はバッテリーを撃ち抜き、内部に蓄えられた電力を一気に放出した。

「グガァアアアア!!」

バッテリーから放たれた電撃は、周囲の兵も巻き込み戦闘不能にした。

「タマさん!!船へ!!」
「おう!!」

タマはルクを抱え、タラップを駆けあがる。
ルクが大佐達を見ると、距離のあった四名がこちらに銃をむけた。
タマに抱えられながら、ハンドガンで攻撃する。

攻撃を受けた兵達は散開し格納庫の遮蔽物に身を潜めた。
その間に二人は船に駆け込んだ。
ルクはタマに支えられながら、サブハッチを閉じた。

「大丈夫かね?」
「お姉ちゃん…。」

バルとチャコが不安そうにこちらを見ている。
彼らの他にも何人かが、ボロボロになったルクを心配そうに見ていた。

「私は大丈夫です。皆さんは居住スペースへ行って下さい。そこが一番安全です。タマさん、私をブリッジに連れて行って下さい。」

「…大丈夫かよ、ルク?」
「私は平気です。それより早く。」
「分かった。」

タマは不安そうな顔をしたが、ルクが笑みを見せると彼女を抱えブリッジに走った。

03

格納庫では、大佐が意識を取り戻していた。
兵の中には電撃で絶命した者もいたが、彼はシェルターに残されていた指揮官用のスーツのおかげで助かっていた。

大佐は周囲を確認しルク達が船に逃げ込んだ事を悟ると、死んだ兵士が持っていたライフルを拾い上げ、タラップを駆け上がった。

「奴隷共が!!逃がさんぞ!!」

ハッチ横のパネルにパスワードを入力する。
だが、何度入力してもハッチが開く事はなかった。

「レーザーカッターを持ってこい!ハッチをこじ開ける!」

大佐の命令で、四人のうちの一人が格納庫から飛び出した。

「忌々しい奴らめ。アンドロイドもバステトも、メインエンジンを起動したら八つ裂きにしてやる。」

大佐がサブハッチの前で怒りを顕わにしている頃、ルクはブリッジでメインエンジンの起動に取り掛かっていた。
補機の余剰電力を使い、格納庫に注水を開始する。

カメラを起動し船外の様子を伺うと、大佐はレーザーカッターでハッチをこじ開けようとしていた。

「あれはまずいですね。侵入されてしまいそうです。」
「なんとかならないのか!?」

タマがルクを支えながらタマが叫ぶ。

「メインエンジンが起動すれば、対人兵装が使えるのですが、もうしばらくかかりそうです。」
「分かった。俺が足止めしてくる。」
「駄目です!危険です!」

「このままじゃ、皆やられちまうだろ。もう一つ入り口があっただろ。あっちを開けてくれ。」
「タマさん…。」
「ルク、頼むよ。」

「…分かりました。……でも約束して下さい。帰ってきて、私の頭を撫でてくれると…。」
「おう、約束だ。」

ルクはタマをぎゅっと抱きしめた。

「絶対ですよ。」
「絶対だ。」

タマはルクをコンソールの椅子に座らせると、ハンドガンを手にメインハッチに向かって走った。
道はルクがそうさしたライトが教えてくれた。
タマがハッチに近づくと、扉はひとりでに開いた。

ハッチから覗くと、大佐がレーザーカッターで扉を焼き切ろうとしている。
タマは、ルクから教わった通り、右腕を伸ばし照準を大佐に合わせた。
絞るように引き金を引く。

狙った通りに、弾は大佐の持ったカッターを弾き飛ばした。
こちらに気付いた兵が、ライフルを乱射する。

「へっ当たるかよ。」

ハッチの影に隠れたタマを横からの銃弾が襲った。
街に行っていた兵達が戻ってきたのだ。
弾丸はタマの真横から左腕を貫通し、その体を吹き飛ばした。

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