あと一歩、そばに来て BEAMCOMIX
作:武田登竜門
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
当ブログでも取り上げている「バッドダックス」の作者、武田登竜門さんの短編集。
各話あらすじ・感想
その時がきたら
あらすじ
左手の小指は心の指。
心の底から大好きな人には小指を繋いで想いを伝える。
そんな話を王女は幼い頃に聞いた。
許嫁は決まっており、彼にはそんな想いは抱けそうにない。
それから日々は流れ、市井に降り民の言葉を学んでいた王女は誘拐され、口の利けない男に世話をされることとなる。
感想
目隠しをされ監禁された王女と口の利けない男。
決して結ばれる事の無い二人でしたが、王女の左手の小指に宿った想いは彼へと捧げられました。
切なく淡い恋のお話でした。
10分後に警察は来た
あらすじ
その日、女が結婚式の二次会を中座し家に帰ると、そこには自分の下着を握った見知らぬ男がいた。
女は我知らず護身用のスタンガンで男に攻撃。
気絶した男をガムテープで縛り上げ警察に電話を入れた。
警察が到着するまでの10分間、彼女は男に話を聞くのだが……。
感想
容姿は悪くないが、素直になれずプライドも邪魔してもてない主人公とそのストーカー。
二人のその後が気になります。
初夜はつつがなく
あらすじ
皇帝の下へ嫁いだ小国の姫君。
その日彼女は初めて皇帝と臥所を共にしようとしていた。
平伏する姫の前、天蓋付きの寝台から姿を見せたのは、右腕と両足を持たぬ黒髪の青年だった。
感想
可憐な姫君は皇帝に刃を突き付ける武闘派で、皇帝はそんな姫をも受け入れるこちらもまた武闘派でした。
皇帝がふてぶてしくて凄く良かったです。
よかったね
あらすじ
自販機補充員の老女は炭酸飲料を思い切り振って自販機にいれる。
同僚がそれを注意するが、彼女は不敵に笑って買ったガキが慌てるのを見るのが趣味なのだと笑った。
それから半年後、戦争で破壊された残骸の街で、一人の少女が噴き出す飲み物に慌てていた。
感想
老女はあの世でニヤついていそうです。
楽園
あらすじ
新大陸の何処かに莫大な黄金を隠し持った村がある。
探検家の二人はその村を発見した。
だが、その村の祭壇には人間の骨、しかも自分達の同胞だと思われるものが積み重なっていた。
感想
未知の文化、通じない言葉。
認識の齟齬と欲望が生んだ悲劇。
そんな事を感じるお話でした。
悪くはねぇけど
あらすじ
その日、和田は体の不住な友人、タケを迎えに行っていた。
彼の家では仲睦まじい様子の夫婦の会話が漏れ聞こえてくる。
彼を車に乗せ送り届ける際、和田はプレゼントとしてボタン式のネクタイを渡す。
タケはそれを喜んでくれたが、後日、タケの家の近くのごみ収集所でネクタイが捨てられているのを見てしまい……。
感想
タケがネクタイを捨てた理由。
それは大好きな奥さんにネクタイを結んでもらうためでした。
気の置けない何でも言える友人、二人の関係性が気持ち良かったです。
大好きな妻だった
あらすじ
男が愛していた妻にガンが見つかり、余命は半年と聞かされた。
男は妻に尽くしたが、彼女は長く生きられない事を嘆いたのか、男に辛く当たる様になり……。
感想
愛とは相手の事を尊重し想う事。
そんな事を感じるエピソードでした。
まとめ
誰にも言えない王女の恋から始まり、男女間の恋や愛、諸行無常なお話、友情など収録された内容は多岐にわたりますが、どの作品の登場人物たちも魅力的で楽しく読めました。
個人的には、皇帝と姫君、あと炭酸を振るババアが好みです。
こちらの作品はKADOKAWA公式サイトにて試し読みいただけます。
作者の武田登竜門さんのTwitterはこちら。