八百夜 3 ウィングス・コミックス
著:那洲雪絵
出版社:新書館
語り部のヤオと出会い元気を取り戻したトオワの王アケト。
まだ幼い彼女はヤオの話で外の世界に憧れを持ち、城を抜けだします。
城の裏山という極近場の散策でしたが、電気を得る為の風車に猿がいた事で見張りについていた防人(ぼうにん:守備や罪人の討伐に従事する者)のイシトが威嚇の為に銃を発砲。
それに驚きパニックを起こした猿の群れに巻き込まれ、アケトは斜面を転がり落ち、危うい所を防人のタザに救われました。
しかし、傷を負ったアケトに応急処置を施したタザは、アケトが王である事と同時に彼女が女である事に気付きます。
その後、事の詳細を王の教育係であるケイトから聞いたタザは、アケトの周囲に女の子の友達も姉も妹も、そして母親もいない事に憤りを覚えます。
彼は自分の知己であるマキノの娘、リカを世話役に連れて来ると言い出したのですが……。
登場人物
リカ
トオワの十家族の一家、マキノの娘
黒髪そばかすで気丈な女の子。
幼い頃、タザも所属していたネコ谷で訓練の為住んでいた。
ネコ谷は身寄りの無い男児を集め、戦闘訓練を行い兵士を養成している集落。
バイカ
リカの妹
そばかすジト目の女の子。
寡黙なリカとは逆に頭の回転が速く饒舌。
イケメン好き
あらすじ
冬になる前にと防人のタザは、同じく防人のメイト、そしてイワテ(王の側近として仕える十家族の一家)の役人と共にマキノの里へと向かった。
山道を超え、奇妙な物音(太鼓の音や笑い声)に山里であるマキノの里へと辿り着く。
族長であるリカの父親はイワテの出した、娘と引き換えに税の利息の免除するという条件にぼやきつつも、気が強く頑固なリカが片付くならと申し出を受け入れた。
その際、姉のリカの身を案じ彼女の妹のバイカも同道を希望する。
族長は勝手にしろと事も無く口にし、最後にリカにこう告げた。
「もしも王がお前を殺そうとしたら 殺せ。その為にお前はネコ谷にいったんだからな そうだな?」
続けてそうなればイワテと戦になるがなと呟いた。
そんな父の言葉にリカはわかってると答えた。
感想
この巻では周囲に女性のいないアケトの為、タザの提案でマキノの娘、リカとバイカが王宮に来る事になりました。
それと並行して言葉の通じない山賊、そして冬の訪れが描かれました。
リカ達が世話役として加わった事で、アケトの周りは賑やかになり、その事で彼女は更に明るくなった様でした。
しかし国を閉じている事によって消耗していく物資の事など、宰相のモリヤは国を開く決断を迫られているようで、幼いアケトに国の代表は務まらないと考えているようです。
前王が女を次々と殺した事で、ずっと王宮の中で独り父の姿に怯え生きて来たアケト。
彼女の笑顔が曇らないといいなと今回読んでいて思いました。
まとめ
他国との関係、モリヤの意図、山賊と呼ばれた得体の知れない者たち。
色々問題は山積みで、幼い王と国がどうなるのか先は分かりません。
ただ、今回タザにリカ達を連れて来てくれた礼を言えず、涙を浮かべたアケトを見て、彼女には笑っていて欲しいと強く思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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