紛争でしたら八田まで 6 モーニングKC
著:田素弘
出版社:講談社
アメリカでの大規模アミューズメント施設の建設。
その工事には地元住民を優先的に雇い入れる事で話が進んでいた筈だった。
しかし蓋を開ければ中華系の作業員の姿が多数見受けられ……。
その事でウィルとテレンスは議員のエドを責めるが、ビクターの全員がそれなりの利益を得た事、仲違いしていた四人が再び集まったという言葉で四人は一応の納得を得た。
結果として八田は共和党が優勢な土地に、民主党の支持者を送り込むというカイの狙いを助ける形となってしまうのだった……。
登場人物
キッド・ローレン
八田と何かと縁のあるインド系の少年
今回は自身の所属するサッカーチームのコンサルタントを八田に依頼する。
オリバー
ローレンの所属するサッカーチームのフォワード(FW)
キック力と正確さが持ち味。
ライリー
ローレンの所属するサッカーチームのディフェンダー(DF)
体格のいいDFの要。
エヴィー
ローレンの所属するサッカーチームのエース
女子選手でありながらチームをけん引するそばかす美人。
ローレンは彼女に恋心を抱いている。
ロナルド・ケケ
S・P・Aのボスの友人
白髪で髯の太っちょな老人。
オーストラリア、ニューサウスウェールズでの土地購入の交渉を八田に依頼する。
ルーベン・ワイオラニ
ロナルドが購入しようとしている土地に建つ家を所有している会社、ナウル・トラスト・コーポレーションの代表
彼を探し八田は太平洋の島国、ナウル共和国へ向かう事となる。
ドミニク・ワイオラニ
ルーベンの息子で現ナウル・トラスト・コーポレーション代表
黒髪髯の男性。
リン鉱石の採掘で外貨を得ているナウルに危機感を持ち、グレーな事業を行っている。
タマトア
新聞記者
現在のナウルの状態に危機感を持ち、政権に批判的な記事も掲載している匿名新聞の記者。
常夏で凍死する事も飢える事も無いナウル。
それ故、おおらかで政治もナアナアな祖国に不安を抱いている。
かつて腐敗追及に動いた政治家ルーベン・ワイオラニを尊敬し、活動を始めた。
あらすじ
カイに踊らされる形で八田のアメリカでの仕事は終わった。
ロンドンに戻った八田はサッカーの観戦中、何かと縁のある少年キッド・ローレンと再会する。
二人の再会と時を同じくして、試合では選手交代が告げられる。
八田は自信満々にここから逆転タイムだとキッドに告げる。
キッドは呆れた様ににわかファンだなと口にするが、試合は八田の予想した通り交代直後に得点が入った。
得点の理由はリーグ屈指のディフェンダー、プピンの交代。
八田は彼の一昨日、クロアチアに戻り、昨日は国会で演説、今日イギリスへ戻り試合というハードスケジュールでの体調不良まで調べ、プピンが交代する事を読んでいたのだ。
キッドはそんな八田の分析能力を見て、次の試合に勝つ為、チームのコンサルタントして欲しいと頼むのだった。
感想
今回はアメリカ編の完結編から始まり、イギリスでキッドのサッカーチームのコンサル、ナウル共和国における政治と再興等が描かれました。
その中でも今回はナウル共和国における人と風土が印象に残りました。
登場人物紹介で書いた様に、ナウル共和国は豊かな大地と海の恵みで飢える事が無く、気候が常に夏な為、凍死する心配もありません。
つまり働かずとも最低限死なない暮らしが成り立ちます。
また、人口が少なく国民は親戚に一人は政治家がいる様な状態です。
それが生み出したのは政治への無関心でした。
監視、糾弾される事のない政治は無軌道な政策を打ち出し、かつてそれを正そうした人も挫折させました。
日本でも違った意味で政治への無関心はある様に思います。
どうせ選挙に行っても何も変わらない。
誰に入れようが同じような物だ。
ですが、政治は自分達の生活に密接に結びついています。
現状で政府は飲食関係に対し営業を自粛するよう要請しながらも、それに対する粗利補償等は行っていません。
自分は飲食関係ではないから関係無いという意見もあるでしょう。
ですが、飲食関係者も国民であり消費者です。
職を失い収入が無くなれば消費自体が減り、それは巡り巡って誰かの利益の損失となる筈です。
一部の人が潤う社会では無く、みんなが安心して暮らせる社会になって欲しい。
ナウルのエピソードを読んでいていてそんな事を思いました。
まとめ
余り政治の話をしたい訳では無いのですが、飲食関係に何人か知り合いがいるのでつい書いてしまいました。
一度失われたモノは取り戻す事は難しいです。
それが命ならなおさら。
そういうケースもあるという事を多くの人に考えて欲しいなぁと思いました。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。