小説 小説長編

隣り合わせの灰と青春

投稿日:2019年1月25日 更新日:

刀隣り合わせの灰と青春 幻想迷宮ノベル
作:ベニー松山
出版社:幻想迷宮書店

狂王トレボーの支配する城塞都市、その地下には広大な迷宮が広がっていた。
地下迷宮にはトレボーから、力の源である護符を奪った魔術師ワードナ―が主として君臨していた。
トレボーはワードナ―から護符を奪い返すため、冒険者を募った。
街はワードナ―を倒し、近衛隊に取り立てられようとする冒険者が群がった。
しかし、街が冒険者で溢れる事は無い。
冒険の中で限界を感じ街を去る者、迷宮の中で消息を絶つ者が後を絶たないからだ。

この物語は、そんな冒険者の一人、スカルダと仲間たちの戦いの記録である。

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冒頭部分 あらすじ

カント寺院に僧侶の詠唱が響く。
囁き、詠唱、祈り、念じろ…。
祈りの甲斐もなく、一つの命が失われた。

若い男が、壮年の僧侶に憤っている。
僧侶は手を尽くしたというが、納得できるものではない。
声を荒げる男を、連れの男が宥める。
消失した命は二度と取り戻すことは出来ない。
彼らは長くパーティを支えてくれた偉大な魔法使い、シルバーを永遠に失った。

冒険者が多く集まる歓楽街、その一角にあるギルガメッシュの酒場にスカルダは赴いていた。
先日の苦い敗戦から力を求めたスカルダは、戦士から侍への転職のため道場を訪れ、その帰りに酒場に寄ったのだ。

酒場の前で一人の男が声をかけて来る。
パーティメンバーのジャバだ。
強制労働でもしてきたのかと言う彼に、スカルダは訓練場に行ってきたと答えた。
転職してきたのか、どうりで老けてるわけだぜと、ジャバはスカルダの胸を叩いた。

彼らが話していると、酒場から一人の女が出て来る。
彼女も仲間の一人、魔法使いのサラだ。
サラもジャバと同様、スカルダに強制労働でもしてきたのと尋ねる。
彼らは人を何だと思っているのか。

サラは酒癖が悪く、今日も赤い顔をしてふらついている。
ジャバが空いた酒樽があるから、寄りかかって休めと声をかけると彼女は言われた通り酒樽の隣に座りこんだ。
ジャバが暴れるなよとサラに声をかけ、スカルダを店に押し込む。

放っておいていいのかとジャバに言うと、ローブで年寄りにしか見えないし、サラだとわかりゃ声をかける奴はいないと答えた。
スカルダは彼女が以前、酔っぱらって店で魔法を使い、しばらく出入り禁止になったことを思い出す。
暗闇、仮眠、小炎と次々に呪文を唱え、大騒ぎになったのだ。
あの時、窒息なんか唱えてりゃ、俺たちは永久追放だとジャバは言った。

案内されたテーブルには男が二人座っていた。
一人は戦士のガディ、もう一人は僧侶のベリアル、二人ともパーティの仲間だ。
席に着いたスカルダにジャバが盃を渡してくる。
彼は鎮魂の酒だと言った。

鎮魂、まさかとスカルダはジャバに問う。
そのまさかさと、ジャバはスカルダに話した。
カント寺院がしくじって、シルバー爺さんは塵になったとベリアルが言葉を引き継いだ。

前衛が転職したばかりの自分と盗賊のジャバ、ガディの三人では接近戦闘はかなりきつい。
それに加え、呪文攻撃の要、シルバーを失ったとなると戦力はがた落ちだ。
なにより、苦楽を共にした仲間を失った悲しみは大きかった。

杯をあおるスカルダにジャバが話しかける。
ところで何か気付かないかと彼は言った。
冒険者という職業は危険と隣り合わせだ。
悲しみをいつまでも引きずっては、生き残ることなど出来ない。

気を取り直して、スカルダはジャバを見た。
別段、いつもと変わったようには見えなかったが、腰に下げている獲物は盗賊が扱えるものではなかった。
真っ二つの剣、ジャバはニヤっと笑った。
ガディがジャバは忍者に転職したと告げる。

ジャバが忍者になるのは戒律的に出来ない筈だ。
そう話すスカルダに、ジャバは掘り出し物を見つけたと語った。
盗賊の短剣、魔法の力を宿していて、戒律に関係なく盗賊を忍者にすることができる代物だ。
更に転職すれば失う経験をそのまま活用できるようだ。

その後、転職の件でガディにはロードになることも出来たのにと残念がられたが、スカルダにはどうしても侍でなければならない理由があった。
黙り込んだスカルダを他所に、ジャバが一人の人物を連れてきた。
ローブのフードをかぶり、口元を隠した性別不明の人物だった。

魔法使いのバルカン、その人物をジャバはそう紹介した。
呪文は全てマスターしているとその人物はいった。しわがれた男の声だった。
バルカンの言葉に嘘がなければ、実力は十分だが、明らかに悪の戒律のものだろう。
善の戒律に属するスカルダとガディであったが、シルバーの抜けた穴を埋めなければ探索は続けられない。

スカルダたちは、バルカンをパーティに迎え入れることにしたが、一緒に酒を飲む気にはなれず、彼とは迷宮で落ち合う事にした。
スカルダは組むのは良いが、バルカンには不吉なものを感じると仲間につげた。

考えすぎだと酒を飲もうとするジャバをガディが止める。
彼も嫌な予感がするといい、飲みすぎると逃げられないと話した。
何で逃げるんだよと言うジャバの言葉を遮るように、火のついたゴロツキが数人、店に飛び込んできた。

男達が水を求めて、転げまわるのを見ながらスカルダがつぶやく。
「サラだ…。」
「サラだ!!」

感想

コンピューターゲーム、ウィザードリィの一作目を舞台にノベライズ化された作品です。
ゲーム自体は現在のように、キャラクター達の会話等は無く、ワードナ―を倒し、護符を取り戻すというシンプルな物でした。

あらすじにあった様に、苦労して育てたキャラクターを失うことも珍しくなく。
寺院で蘇生に失敗すると「○○はまいそうされます」という、トラウマになりそうなセリフが表示されます。

このゲームでは失ったキャラクターは二度と戻ってきません。
更にどんなにレベルを上げても、即死する可能性があるので油断できません。
それでも未だに語り継がれて、続編が作られているのは、他の作品にはない魅力があるからでしょう。

迷宮の入り口でウロウロしていた駆け出しの頃。
初めて切り裂きの剣を手に入れた時。
マーフィー先生。
徐々に強力な魔法憶える魔法使い。
ずっと留守番をしているビショップ。
どんなに金があっても泊まるのは馬小屋。
不意に手に入れた武器がムラマサだった時の興奮。
それをつかった時のカシナートの剣とは段違いの攻撃力。

プレーヤーは探索を続けるうち、ワードナ―の事はどうでもよくなり、ただ強さと冒険を求めるようなります。

なぜか小説の感想ではなく、ゲームの感想になってしまいました。
小説はゲームでは語られない部分を、存分に描いていて、読み応えのある楽しいものでした。

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