ゴブリンスレイヤー12
著:蝸牛くも
画:神無月登
出版社: SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリン退治しかしない変わった冒険者、ゴブリンスレイヤーの物語、第十二弾。
今回は第四巻と同じくゴブリンスレイヤーの周囲の人々のお話を描いた短編集です。
各話あらすじ
第1章
棍棒剣士、至高神の聖女、白兎猟兵の三人はゴブリン退治に出かけた先でワイバーンの襲撃を受ける。
何とか洞窟に逃げ込んだのだが、入り口にワイバーンが居座ってしまい……。
第2章
ゴブリンスレイヤーは槍使いと重戦士に連れて行かれ、鉱人道士と蜥蜴僧侶も出かけてしまった。
残された女神官は同じく置いて行かれた女騎士の提案で魔女、妖精射手と共に依頼を受けた砦に赴いた。
間章
少年斥候は少女巫術師と共に馬車に揺られていた。
お使いじゃないかとぼやく彼に、鉱人道士は冒険者には顔を売る事も重要だと諭す。
蜥蜴僧侶もそれに同意し、能力を一目で見抜く事が出来ないのだから、駆け出しの頃は家柄や人のつながりで判断されると説明した。
第3章
砂漠から戻った密偵。
彼と仲間の新たな仕事は、組織を介さない薬の売買に手を染めた森人(エルフ)の破落戸(ごろつき)の始末。
だが彼がその女森人の家に踏み込んだ時、女の胸には短剣が突き立っていた。
第4章
冬も近くなったある日、牛飼い娘は自分の服や叔父の服が随分前に仕立てた物だとふと気付く。
彼からは竜の鱗と駱駝といった品を貰っている。
鱗は首飾りに、駱駝は伯父が言うには乳が良いそうだ。
そのお礼にと彼女はセーターを編む事にした。
そこではたと気付く。彼はいつも鎧を着こんでいる為正確なサイズが分からないのだ。
牛飼い娘はサイズを知る為、友人である獣人女給に助けを求めた。
間章
国王は豪華な玉座の上でため息を吐いた。
東方の内乱が落ち着きを見せたと思ったら、次は国内に混沌の勢力の拠点が見つかる。
これでは財貨を国内の隆盛に回す事も出来ない。
書類仕事に食傷気味だった王は自ら問題に当たる為、かつての仲間を呼び寄せる事を枢機卿に命じた。
第5章
少年魔術師と圃人の少女は鼠も虫もいない地下水路を進んでいた。
目指す先はその水路の端。
滅んだ街の地下は、同様に滅んでいた。
辿り着いた先で、少年魔術師は合図の符牒を繰り返す。
しかしここで落ち合う筈の相手からの反応はない。
数度、符牒の為に杖を振り回すが何も起こらない。
独力での解決が難しい今、八方ふさがりの苛立ちを圃人の少女は落ちていた兜にぶつけた。
騒がしい音を響かせ兜が水路に落ちる。
それに呆れる少年魔術師の足元の水路から、彷徨う鎧に似たモノが這いあがって来た。
第6章
勇者たちは地下のグロテスクな魔宮で死人の王と対峙していた。
彼女達は四方世界を守る為、お膳立てをしてくれた多くの人の努力に応える為、傷付き血を吐きながらも強大な敵に立ち向かう。
終章
町に戻ったゴブリンスレイヤーはいつも通り牛飼い娘と話し、いつも通りギルドに向かい、少しずつ変わっていく周囲の状況や彼自身の事を感じながら、いつも通りのセリフを言った。
「ゴブリンだ」
感想
今回は短編集としてゴブリンスレイヤーを取り巻く人々のエピソードが収録されました。
前回と比べると登場人物たちの成長や変化が垣間見え、とても楽しく読む事が出来ました。
ただ、その中でも水の街でのランナーのお話はテイストが大きく違うので読む時、ギアを変えるのに手間取りました。
彼らの話だけファンタジーじゃなくて、頭の中にネオ東京とかが浮かぶんですよね。
会話もそこかしこにアキラやブレードランナーへのオマージュが散りばめられており、石造りの街じゃなくてコンクリートのビル群な感じがします。
まぁ何にしても面白いのは確かなんですけど……
まとめ
今回はネタバレになりますがゴブリンスレイヤーはゴブリンを退治しませんでした。
何か付随してゴブリンが出て来たイメージがあるので、殆ど登場しないのは少し新鮮でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。