ロスト・ラッド・ロンドン 3 ビームコミックス
著:シマ・シンヤ
出版社:KADOKAWA
市長殺人事件の捜査を主導しているグラントの方針から、警察の家宅捜索を受けたアル。
刑事のエリスからそのままにしておけと言われたナイフの件で、気が気では無いアルだったが、捜索の結果、彼の家からは何も出なかった。
真犯人が家に入り込みナイフを持ち去ったのでは?
家宅捜索で神経をすり減らしたアルは別の事で気を揉む事になる。
その後、アルのアパートに来たエリスにナイフの件を告げたが、エリスは問題無いと笑う。
ジャケットのポケットに入れたままにしておいたナイフ、それは既にエリスが証拠として回収していたのだった。
登場人物
サファ
警察官
ムスリムの女性警官。
所内で情報の整理等を担当している。
性別や人種で出世が望めない事から別の道を考えている。
チャウ
アルがバイトしている店の店長
中華系の中年男性。
以前、アジア人という事で容疑者として疑われた過去を持つ。
その経験から警察に呼び出されたアルを気遣う。
あらすじ
グラント主導の家宅捜索が空振りに終わり、ひとまずアルが犯人として追及される事は回避できた。
エリスは未だに標的をアルに決めているグラントに逆らい、捜査線上に浮上した市長の息子、ロイスに当たりを付ける。
少しずつ事件が進展を見せるなか、アルの下に知らない番号から電話が掛かって来て……。
感想
地下鉄に乗っていた現役市長が刺殺される。
そんなショッキングな場面から始まったこの物語も、この巻で完結。
物語は淡々と進み、今回は真犯人の動機等も描かれました。
作品を通して印象に残ったのは、有色人種に対する差別や性別による扱いの違いでした。
それはあからさまな物ではありませんでしたが、確かな壁として存在していると読んでいて感じました。
本人は意識していなくても、深層心理に刷り込まれた差別意識、それは差別という感覚では無く、常識として社会に根付いているようにこの作品を通して思いました。
執拗にアルを犯人と決めつけるグラント。
アルの存在を認められず、彼の死を望んだ真犯人。
二人にはなんというか、揺らぎや余裕を感じられず、こうであるべきだという様な頑なな物を感じました。
逆にエリスは自由で柔軟で、彼の考え方はとても心地良かったです。
まとめ
とても静かでハリウッド映画的な派手な物は無いですが、アルとエリスの関係性がとても気持ちいい作品でした。
作者のシマさんは新連載も決まっているようですので、そちらも楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品はComicWalkerにて、一部無料で閲覧可能です。