キャンディ&シガレッツ 9 ヤンマガKC
著:井上智徳
出版社:講談社
眠り続ける孫の正太の特効薬「ルバイヤート」。
その薬を求め街を占拠した武装勢力と政府軍が睨み合いを続けるアレクサリドへ潜入した雷蔵と美晴。
二人はNGOシルバーフードに協力しつつ、雷蔵はルバイヤート、美晴は傭兵部隊テンタクルス(黒い触手)の一人である少女ベルサを追う事になる。
登場人物
ザック・ファルコーネ
ファルコーネ家長男
金髪でサングラスの青年。
中東の紛争を拡大させ武器流通の拡大を狙っている。
モーゼル
傭兵部隊テンタクルスの一人
中世の鳥を模したマスクを着けた男。
化学兵器を用いる。
陳東風(チン トンプー)
中国大手通信会社社長
天辺ハゲでチョビ顎鬚の男。
雷蔵たちのターゲット。
最近ファルコーネの会社とM&Aをしていた。
ガイル・スターマン
大統領候補
元軍人で左手を負傷し機械の義手を装備している青年。
彼の打ち出している政策は銃規制。
あらすじ
一旦はテンタクルスから離れたベルサだったが、村がラドム達に襲われ村人を救う為、ベルサはラドムの下に戻った。
そんなベルサとアレクサリドで再会した美晴たちは、シルバーフードと湯川の要請で武装勢力を排除しつつ彼女を追う。
そんな中、日本では絹目とシャピロが医師の湯川が敵側だった事を突き止めた。
更に、NGOのシルバーフードを名乗ったアーロンも紛争を激化させる目的で潜入していた新世界秩序に繋がりがあると判明する。
しかし、絹目がそれを雷蔵たちに伝える事と時をおなじくして現れたアーロンは、村の少年クルトを人質にした事を雷蔵たちに告げ、彼らに銃を突き付けた。
雷蔵が裏切り者だと判明した湯川の行方を尋ねると、彼はクルトの頭に銃を突き付けながら歩み出た。
湯川はかつて国境によって家族を失う事となった。
その国境を無くそうとしている新世界秩序。
彼は滾る憎しみによって国境の無い世界を望み、新世界秩序という幻想に身を投じたのだ。
湯川は雷蔵たちが巻き込まれた航空機の襲撃、日本人を人質にして身代金を要求、そしてそれを資金としてザックたちから武装勢力に武器を流すまでの一連の計画に携わっていた事を告白した。
しかし、その計画は雷蔵と美晴によって潰されてしまった。
湯川は計画を変更し二人を使い紛争を激化させる事を画策、その思惑通り、雷蔵と美晴による武装勢力の排除は紛争を激化させ、その様子は世界中に報道される事となった。
感想
今回は中東編の完結までと、アメリカ編の始まりが描かれました。
紛争の拡大による武器の販売、ひいては戦争の状態をコントロールする事で世界を支配しようとしているファルコーネ率いる新世界秩序。
今回はそんなエピソードの中でも、憎しみの連鎖が描かれたクルトのお話が印象に残りました。
元はアレクサリドに住んでいた少年クルト。
しかしザックたち死の商人が裏で糸を引き起こした内戦で、妹は雷蔵の孫正太と同じく意識の無い状態となり、家族も失いました。
そんな彼は作中、武装勢力に連れられ雷蔵たちと別れしまいます。
この作品はフィクションではありますが、現実に紛争地域では幼い子供が銃を手に戦っています。
憎しみが新たな憎しみを生み、破壊と死が生み出され続ける。
そんな中で、作中描かれた破壊された街で救助と復興に関わるシルバーフード(紛争に関わっていたのはアーロンの他、一部でその他は平和維持活動の為に参加した学生達)の姿は希望の様に思えました。
まとめ
次回はアメリカ、ニューヨーク編の続きから。
テンタクルスに戻ったベルサ、彼女と美晴がどんな運命を辿るのか、次回も楽しみです。
この作品はヤングマガジン公式サイトにて無料で第一話がお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。