亜童 3 ヤンマガKCスペシャル
著:天野雀
出版社:講談社
亜童と呼ばれる植物の力を宿した少年、エイト。
彼を回収に来た軍人の辻浦は同じく亜童の少年レンジを使い、回収を試みるも自由を求めるレンジはエイト共に川に身を投げ逃亡。
イカサマ師の下呂に拾われたレンジとエイトは、エイト回収を命じられた失敗作の一人、デミアンからエイトを助けたリコの話を聞く事になります。
その後、デミアンはレンジに倒され、リコを取り戻したいエイトはビルの屋上で力を解放、失敗作たちをおびき寄せるのですが……。
登場人物
ユアン
亜童の一人
他者の傷を癒す力を持つ。
あらすじ
エイトの力の発動を感じ、政府の指示を受け研究所主任の志賀の放ったデミアンと同じ失敗作の内の二人、アインとリンがエイトの前に現れる。
エイトはリコの行方を二人に尋ねるが、アインはまともに答える気は無く、リンは無駄話は嫌いだと腕をまるでドリルの様に変化させ、大人しくラボに帰るか、自分にボロボロにされて帰るかの二択を迫った。
どっちも断ると答えたエイトに苛立ちを募らせたリンが突進する。
しかし、エイトに迫った彼女の行く手をアインが放った酸が阻んだ。
舌打ちしつつも、一対一を重んじるリンは戦いをアインに譲った。
アインはエイトに接近戦を仕掛け、巧みな動きでエイトの操るツタを躱し、次々と打撃を加えていく。
それを別のビルの屋上から眺めていたジョー達はエイトの動きをまるで話にならないと切って捨てた。
感想
今回はエイトと亜童の失敗作であるアイン、そしてリンとの戦いから始まり、リンの過去、研究所主任、志賀とリンとの約束、攫われたエイト、リコと傷を癒す力を持つ亜童ユアンとの出会い等が描かれました。
今回はエイトとアイン達の戦いと、志賀とリンの過去が印象に残りました。
一つ目のアイン達との戦いですが、ジョー達が話していた様に、エイトはアインに翻弄され有効な攻撃は出来ていませんでした。
それは恐らく、エイトが戦闘訓練などを全く受けていない事が原因に感じました。
エイトはとても強力な力は持っていますが、その力の使い方を知らない素人。
一方でアインやリンは自分達の力の特性を見極め、一番うまいやり方を会得している様に感じました。
分かりやすくいえば、どんなに筋力があってもボクシングの経験が無ければ試合に勝つ事は難しいといった感じでしょうか。
二つ目の志賀とリンの過去について。
前巻の印象では志賀は研究の事しか考えていない、不愛想でマッドな人物といった印象でした。
ですが今回の二人の過去を見て、その印象は百八十度変わりました。
リンは亜童の力を身に宿す事で生き長らえました。
しかしそれは苦痛を伴うものでした。
施設から抜け出した幼い彼女は岬の先、崖の上で暗い海を見つめていました。
そんなリンを見つけた志賀は、彼女に死にたきゃ死ねと言い放ちます。
驚き彼を見返したリンに志賀は好きにすればいいと続けました。
彼はリンの人生は苦痛を伴う物である事を話し、終わりの無い拷問を受ける人間に未来は明るいなどと言うつもりは無いと語ります。
その上で、研究が進めばリンの体から植物細胞を取り除き元の体に戻せるかもしれないと続けました。
志賀はその際、確かなものなど一つも無い、だから何を選ぶも自由だと彼女に選択を委ねました。
志賀はリンの意思を尊重した上で、自分のした事、現在の彼女の状況を説明し、そして研究の可能性を提示して何を選ぶのか彼女に考えさせたのでしょう。
そんな彼の行動と提案は読んでいてとてもフェアに感じました。
結果、リンは生きる事を選び、一日も早く治せと志賀に約束を持ち掛け彼もそれに答えました。
志賀とリンの約束は何処へ向かうのか。
彼の今後もとても気になります。
まとめ
失敗作に回収されたエイト、ラボで目覚めたリコ。
次巻では二人は出会えるのか、先が楽しみです。
この作品はヤングマガジン公式サイトにて無料で第一話がお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。