紛争でしたら八田まで 5 モーニングKC
著:田素弘
出版社:講談社
日本のバイオベンチャー企業、創和メディカルが過去に起こした情報漏洩事故。
その事故の説明の為、創和メディカルの社員、杉村と共に今回の契約相手アイスランドのゲノム解析会社、オフラルコード社を訪れた八田。
情報漏洩については、事後処理の手早さをオフラルコード側も認めており、契約は問題無く進みそうでした。
しかし、杉村が契約書やUSBの入ったカバンをすり替えられてしまい、八田は杉村と共に鞄を探してアイスランドを駆け回る事になりました。
登場人物
八田の祖父
髯のキリっとした目の老人
幼い八田に宗教や世界の事を教えた。
レトロゲームマニア。
カイ
かつてタンザニアで八田とぶつかった青年
金髪パーマの美青年。
彼も八田と同じく世界各地で地政学に基づいたコンサルティングをしている様だ。
ただ彼は八田と違い、融和、統合では無く分断を行っている。
ドワイト・スワンソン
ローナンクリーク市、開発計画の代表
顎鬚を生やした陽気なおじさん。
リーマンショックにより衰退した市の復興を掲げ、開発計画を立ち上げた。
テレンス・ゴールドウェル
ミルドウッド・レジデンシャルの社員
眼鏡の黒人男性。
開発計画のプレゼンで八田達と争う。
ウィル・マーティン
ハヴィラント・ブラザーズの社員
短髪の白人男性。
レトロゲームオタク。
ビクター
ネイティブアメリカンの男性
一族の代表として大学に通い、現在は居留地で売店を営んでいる。
エドマンド
オハイオ州の州議会議員
赤毛でハンサムな男性。
民主党下院議員。
テレンス、ウィル、ビクター、エドマンドの四人は古い友人同士だったが、現在はお互いの主義主張の違いから仲違いしている。
あらすじ
杉村の鞄を追ってアイスランドを走り、やがて辿り着いたのは八田の幼馴染であるエステルの家だった。
八田が彼女と出会ったのは両親の不仲と金銭問題によって、イギリスの祖父に預けられていた頃だった。
その頃から食については貪欲だった八田は総菜屋を営むエステルの父親の店へ入った。
その店でレバーペーストを手に取った事が、彼女と仲良くなる切っ掛けとなった。
両親の所為で世界中を転々とする八田、ジューイッシュ(ユダヤ教徒の一派、テレビやネットを余り使わずコミュニティーの中で暮らしている)でありずっと同じ場所に住み続けているエステル。
そんな真逆な二人だが不思議と気が合い、親友同士になった。
そんな二人の別れは突然訪れる。
移民問題に端を発した暴動でエステルの父の店が襲われたのだ。
どうして店が襲われたのか、マーマイトを食べていただけなのに。
幼い八田には理由が全く分からなかった。
その理由を知る為、同じ事が再び起きてもそれに対応出来る様、八田の祖父は彼女に世界を教え、八田も学ぶ事を選んだ。
感想
今回は八田の幼馴染エステルとの再会、そしてその再開を仕組んだカイとのファーストインプレッションを描いたアイスランド編の後編と、多様な人種と民族を抱える大国アメリカ、オハイオ州での開発計画の様子の前編が収録されました。
日本では外国人の姿は増えて来たとはいえ、海外に比べればまだまだ数は少ない様に感じます。
ヨーロッパ等では昔からローマ人やゲルマン民族等、多様な民族が侵略を続けて来た歴史があり、民族間の対立は根深く残っている様に認識しています。
この作品のテーマはそんな相容れない人々の文化を互いに尊重し、受け入れ認め合い融和させる事だと思います。
いがみ合い文化を押し付け合えば多様性は失われ、世界は画一化されていく様に感じます。
以前書いたかも知れませんが、攻殻機動隊で少佐が言っていた様にどんなに優れたシステムや規格であっても、同じ物で構成されたモノは何処かに致命的な欠陥を持つ様に思います。
だから生物は遺伝子を混ぜ合い、一つとして同じ存在は無いのだと考えます。
文化、生活習慣等は生きる場所、発生した場所が違うのだから違って当たり前、それを認め受け入れる社会になればいいなと読んでいて思いました。
まとめ
今回のラストは開発計画に現実でも凄まじい発展を遂げる中国の介入が示唆されました。
カイの仕掛けた策に八田がどう対処するのか、次回も楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。