スインギン ドラゴン タイガー ブギ 3 モーニングKC
作:灰田高鴻
出版社:講談社
育ての親であるトシの危篤、電報でその事を知ったとらは、迎えに来たトシの息子、充太郎(じゅうたろう)と共に福井に帰る事にしたのですが……。
登場人物
軍曹
新たな米軍キャンプのクラブのマネージャー
規律を重んじる堅物。
とら達の音楽を低俗だと切り捨て、バンドとの契約を打ち切る。
鮫島兄
バンドのドラマー鮫島の兄
丸眼鏡で刈り上げの男性。
代々続く船大工の七代目。
おっかない。
マス子
バンドのトランぺッター峯川の奥さん
お団子頭の黒目がちな女性。
おっかない。
サチ
バンドのピアニスト藤田の妹
お下げで丸眼鏡の女学生
文学少女、多分、百合好き。
彼女はおっかなくない。
四方トシロー(よも としろー)
作曲家兼プロデューサー
ポマード頭の渋いおじさん。
格付け審査の審査員としてとらの歌に興味を持つ。
木村寅子(きむら のぶこ)
四方が育てている女性シンガー
ツインテールで猫目の少女。
彼女もその名前から「とらちゃん」と呼ばれている。
四方の下で正統派シンガーとして訓練を続けている。
恐らく戦争の影響だと思うが、貧困に苦しんだ過去を持つ。
その為、四方に捨てられる事を非常に恐れている。
とらに負けず劣らず気が強い。
あらすじ
トシの危篤はとらの伯父である諏訪敬忠(すわ のりただ)の仕組んだ計略だった。
彼は地元の政財界に縁故を作ろうと手を尽くしており、とらを呼び戻し政略結婚の駒の一つに使おうとしていたのだ。
その事をとらの従姉、染香(そめか)から聞いた丸山は焦りを見せる。
そんな中、ベーシストの龍治(たつじ)は今ならまだ間に合うと駅へと向かった。
一方、丸山達はキャンプへと向かい二人の到着を待ちながら、ボーカルとベース抜きで演奏する事となる。
その頃、列車に乗り出発を待っていたとらは、迎えに来た充太郎の言葉と態度からトシの危篤は嘘であり、全ては伯父の仕組んだ策略だと見抜く。
降りる、そう言って荷物を荷台から下ろしたとらの目に、息を切らしホームに辿り着いた龍治の姿が飛び込んで来た。
「オダジマ!? なッ、なんでお前……いるんだよ~!?」
窓から顔を出し驚きの声を上げたとらに、龍治は早く降りろ!! と叫ぶ。
走り出した列車、伸ばされるお互いの手、その手が重なり、とらは列車の窓から引き出された。
手を握り駅のホームの上で宙を舞った時、とらを抱きしめた龍治はこの感覚何処かで……と失った記憶の断片を思い出す。
彼はその記憶の中で、放してはいけない手を放してしまった気がしていた。
だから今度は……今度こそは……。
そう思いながら龍治は絡まったとらの手を力いっぱい強く握った。
感想
今回は冒頭、福井に帰郷し伯父の手に落ちそうだったとらを龍治が取り戻したシーンから始まり。
バンドの契約打ち切り、とらを中心に据えた今後のバンドの展開、丸山によるとらの売り込み、とらのライバルになりそうな女性シンガー木村寅子との出会い。
そして朝鮮へ出兵するチャーリーの為に酔っぱらったピアニストの時子(ときこ)が企画した「必ずまた会おう会(チャー会)」の始まり等が描かれました。
今回はその売り込み過程とチャーリーの出兵を知ったとらの、何の為に東京へ来たのか、何の為に歌うのかという葛藤が印象に残りました。
彼女が東京に来た理由、それは精神を病んだ姉に恋人だったろう龍治を引き合わせる為でした。
それがいつの間にかジャズに魅了され、歌う事が楽しくなっていました。
何故歌うのか、何の為に歌うのか。
この巻の終盤、楽しいからという事で、まだきちんとした答えはとらの中で出ていない様でした。
そんなとらに龍治は一つの答えを示します。
前も似た事を書いた気がしますが、様々な歌手の歌を聞いていると歌詞では無く、その歌声で感動する事がたまにあります。
それは歌の上手い下手では無く、歌い手が歌に感情を乗せているからの様に思います。
龍治がとらに言った「お前の鼓動を信じろ」という言葉。
音が音楽が心を躍らせ、鼓動が弾けそれをシンガーは歌に乗せる。
思わず体が動き出してしまう。心が震える。
人が音楽を作り出し、聞き続けているのはそんな心の震えを求めているからでは無いでしょうか。
今回、読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
この巻では丸山は焦り、少し急ぎ過ぎている様に感じました。
次巻ではそんな丸山ととらが衝突する様です。
バンド解散の危機……次も楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
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