鋼鉄のウツィア 1 ボーダーコミックス
作:稲田晃司
出版社:リイド社
蒸気機関が淘汰される事無く発達した世界。
蒸気立国ポーランドで蒸気甲冑と呼ばれる、蒸気機関(この世界では蒸気機関をいわゆるパワードスーツ及び兵器、乗り物の他、サイボーグ的な義手等にも使っている)を使った甲冑を身に着け、騎士同士が戦う武術大会に小柄な少女が参加していました。
武器の使用が認められるその大会で、少女は両腕の蒸気甲冑の力とその力で繰り出される拳のみでトーナメントを戦っていました。
登場人物
ウツィア
騎士伯ヤドヴィガ家の娘
両腕が蒸気甲冑の深紅の目と髪を持つ少女。
パンチにこだわりを持ち、武器の使用が許されるトーナメントにおいても、その拳のみで戦う事に拘る。
彼女の装備する蒸気甲冑はとても古く、現在では製造法が失われており、メンテナンスも容易ではないようだ。
ボイチェフ
ウツィアの従者
黒髪眼帯の背の高い男。
現在は従者というよりは、マネージャー的な役割を担う事が多いようだ。
年若い少女の側面と騎士の激情と誇りが同居するウツィアを時に叱咤し、時に慰め、守り導いている。
ルーシー
蒸気技師
金髪で姉御肌の女性。
ボイチェフは腕がいいと評判の彼女に、ウツィアの腕のメンテナンスを頼む。
蒸気機械に愛情を注ぎ、それを雑に扱う騎士に嫌悪感を抱いている。
トマシュ卿
バイソンの騎士王と呼ばれるトーナメントの優勝候補
金髪ロン毛で彫の深い顔立ちの男。
騎士の誇り、騎士の在り方に強いこだわりを持っている。
バイソンを模した蒸気機械に騎乗し、ランスを使ったチャージ攻撃を主体としている。
ロシアの重装戦車部隊を部隊を率い撃退した英雄。
アルベルト
クラクフの街の守備隊長
翼を持つ蒸気甲冑と大鎌を持った残忍な男。
王国軍の中でフサリアと呼ばれる守備隊の隊長。
その瞳は蒸気機械の義眼となっており、クラクフに持ち込まれようとしている武器を見ただけで特定出来る。
カントル
ルーシーの師匠
髯に眼鏡の太った老人(ドワーフ風)
左手は蒸気機械の義手を装備している。
天才では無く、努力によってその技術を磨いてきた。
あらすじ
赤い髪と赤い瞳の少女ウツィア。
彼女は両腕の蒸気甲冑の力を使い拳を打ち込むファイティングスタイルに拘り、真正面から相手とぶつかりながら敵を下して来た。
ただ、その事で彼女の甲冑は酷く痛んでいた。
それを修理しようと従者のボイチェフは、街でも評判の蒸気技師ルーシーの下をウツィアと共に尋ねる。
修理を依頼したボイチェフだったが、ウツィアの義手を見たルーシーは憤りを見せた。
彼女は蒸気技師として、作り出した蒸気機械を我が子の様に愛していた。
だが、明らかに手入れされていない義手を見て、ルーシーはウツィアも他の騎士と同様、蒸気機械を使い捨てにする輩と思ったのだ。
その後、修理をしてもらえないと知ったウツィアの感情の暴走で、修理の見込みは完全に無くなった。
ボイチェフはウツィアの壊した壁の修理費を払う事をルーシーに約束し、その日はそそくさと退散した。
その後、仕事を終えたルーシーは行きつけの店で、ウツィアの戦い方を知る。
全身を蒸気甲冑で固め武器を使う相手に、両の拳だけで挑む。
いい根性してるじゃないか。
ウツィアの心意気に感じる物があったルーシーは、翌日、トーナメントの行われる闘技場を訪れた。
そこでは、優勝候補、バイソンの騎士王トマシュ卿の槍に拳を叩き込むちいさな少女の姿があった。
感想
この作品における蒸気機械の技術はかなり高度で、ロボット的な物やサイボーグ技術に近いレベルで描かれています。
主人公の女騎士ウツィアは両腕がそのサイボーグアームになっており、高威力の打撃で相手を屠る戦い方を基本にしています。
作中、彼女がパンチに拘る理由はまだ描かれておらず、何故、ウツィアの様な少女が危険な武術大会に参加しているのかも不明です。
ただ、拳に拘り、相手の攻撃に真正面から自分の全てをぶつけるウツィアの姿にはやはり心の昂りを感じます。
また、この巻では蒸気技師ルーシーの師匠、カントルの言葉も印象に残りました。
彼は自分が天才では無いと認めています。
作中の歴史においても、現実と同じく天才的な技師の存在が語られます。
カントルはそんな技師達に少しでも近づこうと、日々研鑽と研究を重ねていました。
「牛歩のごとく一歩ずつ愚直に実験を重ねる。一見すると遠回りのようじゃが確実に前進する……それがワシら凡人のやり方じゃないかのう?」
そう言って不敵に笑ったカントルは凄くカッコよかったです。
まとめ
ウツィアの心に反応して、蒸気を吹き出しギアが唸りを上げる。
そこから放たれる渾身の一撃は武装と装甲を砕き貫く。
熱くて読むと心が湧き立ちます。
こちらの作品はコミックボーダーにて一部無料で閲覧できます。
作者の稲田晃司さんのTwitterはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。