白山と三田さん 5 少年サンデーコミックス
著:くさかべゆうへい
出版社:小学館
田んぼで溺れていた老人を助けた事で、彼の孫娘、三田民子(みた たみこ)と付き合う事になったラジオ好きの高校生、白山辰彦(しろやま たつひこ)。
クリスマスも近づいた年末。
いつもの公園で録音していた深夜ラジオを聞いていた辰彦は民子から声を掛けられる。
ラジオを聞いていた事を話すと、民子は自分も聞いてみたいと言い出し……。
登場人物
大手町子(おおて まちこ)
小説家
黒髪ショートで眼鏡の女性。
辰彦が好きな深夜ラジオ「ダブル町子のゆるふわラジオナイト」のパーソナリティ。
内幸町子(うちさち まちこ)
エッセイスト
黒髪ショートメッシュで眼鏡の女性。
辰彦が好きな深夜ラジオ「ダブル町子のゆるふわラジオナイト」のパーソナリティ。
大手とよく似た顔立ちだが、二人は姉妹というわけではない。
辰彦は彼女たちの番組によって、生きてていいのだと思えた。
あらすじ
辰彦が聞いていたラジオが聞きたい。
そう民子に言われた彼は、自分が一番好きな深夜ラジオ「ダブル町子のゆるふわラジオナイト」について説明を始めた。
番組は小説家の大手町子とエッセイストの内幸町子の二人のパーソナリティで進行するトークバラエティだ。
辰彦が彼女たちの番組にハマったのは親近感からだった。
例えば文化祭。
クラスメイトと協力し出し物をする。
そんな雰囲気に馴染めない辰彦は、自分と同じ感覚の人が少なからずいる事を二人のラジオで知った。
普通じゃない自分。
それを受け入れてもらえないことがあることも、よく分かっている。
だが、自分と似た感じの人が送ったメールを読んで、面白がっているのを聞いていると、間違っているわけじゃないのかもと思えたのだ。
そんな辰彦の話を聞いたその夜、早速番組を聞いてみる事にした。
帰宅後、すぐに布団に入り放送開始に向けて仮眠を取る。
放送中、コーナーで民子のメールが採用されるのを聞きながら、辰彦は一人布団の中、同じものを共有する楽しさを感じていた。
そして番組も終わりに差し掛かった時、番組が来年の三月で終わる事が告げられた。
感想
今回は冒頭、民子の友人、千代(ちよ)の民子グッズについての会議から始まり、深夜ラジオとその終了、落ち込む辰彦と民子の提案、クリスマスとプレゼント、お正月と今年の抱負、東京での出待ち、ダブル町子と感謝の言葉、コンビニバイト春日(かすが)と東京での暮らし、二人の進路等が描かれました。
その中でも今回はあらすじで書いた辰彦とラジオのエピソードが印象に残りました。
画一化を求められる学生生活。
その中で辰彦の様に馴染めない人は、それなりにいるのではないでしょうか。
大勢でわいわいと騒ぐのが好きな人もいれば、一人でいるのが好きな人もいるはずです。
そんな一人が好きな人にとって、ラジオはとてもいい距離感で楽しめる娯楽の一つのように思います。
特に深夜ラジオはテレビでは見せないパーソナリティの素の部分が多く出ていて、より親近感を感じやすいように思います。
作中、自分と似た人たちがいて、同様の感覚を感じながらそれを笑いに変えて生きていると知り、自分も生きていてもいいんだと思えた辰彦。
彼が出待ちで会えたパーソナリティの二人に感謝を伝えるシーンは、読んでいてグッときました。
まとめ
この巻で辰彦たちの高校二年は終わり、次巻からは高校三年生の二人が描かれるようです。
東京でフリーターとして働き暮らそうと考えている辰彦。
民子は東大への進学を目指す模様。
二人の一年がどうなるのか、次巻も楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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