地図にない場所 1 ビッグコミック
著:安藤ゆき
出版社:小学館
優秀な兄が通った進学校に入った土屋悠人(つちや ゆうと)
小学校では優等生だった悠人ですが、その中学では授業について行けず「終わった」と悲観していました。
そんな時、マンションの隣人であったバレリーナの宮本琥珀が、母を亡くした上、怪我でバレエも引退しパリから帰国してきます。
自分より終わってしまった奴が見たいという、中々に最低な理由で悠人は琥珀の下の訪れるのですが……。
登場人物
土屋悠人(つちや ゆうと)
私立中学に通う中学一年生
学校では勉強について行けず、家では優秀な兄と美形の弟に挟まれ居場所が無いと感じている。
宮本琥珀(みやもと こはく)
悠人の住むマンションの隣人
ショートカットの気さくな女性。
天才バレリーナと称され、フランスのバレエ団でトップとなる。
以前は無口で冷たい印象だった。
自分を捨てた夫を見返す為、彼女の母は琥珀が有名になる程喜んだ。
彼女はそんな母の為、バレエに全てを捧げていた。
悠人の母
小学校時代優等生だった悠人に兄と同じ中学を進めた。
ただ、彼女は強く希望していた訳では無く、優等生だから兄と同じで良いと思っただけのようだ。
悠人の父
勉強について行けず落ち込み気味の悠人を気遣う。
しかしその気遣いも悠人をへこませる。
すず
悠人の小学校時代の友人
黒髪ロングで涙黒子の美少女。
親の意思に沿い悠人とは別の私立中学に進学した。
バレエをやっている。
琥珀のファン。
彼女は将来バレエ教室をやりたい様だが、親はすずにバレエを辞めさせ公務員か大企業のような安定した職について欲しいようだ。
あらすじ
土屋悠人、私立中学に通う中学一年生。
彼は小学生の時は優等生としてクラスでも上位の存在だった。
しかし、母の勧めで入った中学では、成績は下から数えた方が早い位置だった。
別に勉強をしていない訳では無い。
それどころか必死で勉強してこれなのだ。
小学校時代、成績が良かったのは単に成長が早かっただけ。
その事に入学後、気付いた悠人はこれから先を思い「終わった」と暗い気持で日々を送っていた。
そんな陰鬱とした毎日を送っていた悠人の耳に、隣に住んでいた宮本琥珀が怪我でバレリーナを引退したというニュースが飛び込んでくる。
母子家庭の琥珀は母を亡くし天涯孤独。
その上、バレエも引退し職を失った。
その琥珀が隣の部屋に戻ってきたらしい。
悠人は三十歳で無職で独りぼっちの自分より終わっているだろう琥珀を見たいと、回ってきた回覧板を手に琥珀の部屋のインターホンを押した。
感想
優等生として扱われていた少年が、レベルの高い学校に入り落ちこぼれになる。
そんな所からこの作品は始まります。
作品の主人公悠人は全てを失い落ち込んでいるだろう琥珀の下を訪ねますが、彼女は全然落ち込んでおらず、むしろ笑顔で隣人の悠人を部屋に迎え入れました。
琥珀はバレエ以外何もしてこなかった女性です。
彼女は母親の為、学校も遊びも友人も恋人も、生活の全てを捨てバレエに費やしてきました。
彼女はだから本場パリでトップになれたのだと作中語ります。
ですので彼女はバレエ以外は何も出来ません。
ただ、彼女は母親から解き放たれた、その何も出来ない日々の新鮮さを心から楽しんでいるようでした。
その何も出来ない琥珀から貰った「ありがとう」で悠人の心は救われていきます。
作品はそんな中学一年生で終わったと思っている少年悠人と、始まったばかりの自分の人生を楽しんでいる琥珀が、都市伝説の地図にない場所「イズコ」を探す事をメインに進んでいきます。
作者の安藤ゆきさんの著作である「町田くんの世界」と同じく、登場人物がとても魅力的で読んでいて凄く楽しいです。
まとめ
主人公の悠人は「終わった」と落ち込んでいますが、結構メンタル強めで闇落ちするとかじゃないので、辛いと感じること無く楽しく読む事が出来ました。
悠人の友人のすずも悩みを抱えており、今後はその辺りも描かれるのかなと先が楽しみです。
この作品はビッグコミックBROS.NETにて第一話が無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。