クマ撃ちの女 5 BUNCHコミックス
作:安島薮太
出版社:新潮社
牧場に熊が出た。
カズキの祖父、矢木経由でその情報を知り、熊狩りに参加したチアキとカズキ。
その牧場を荒していた熊はチアキと彼女の姉、チカを襲った熊でした。
チアキは熊を狩る為、単身、夜の牧場で待ち伏せを掛けました。
そして月明かりの中、森から標的が姿を見せました。
登場人物他
ワン
チアキが熊狩りの為に手に入れた狩猟犬
白毛の中型犬。
北海道犬(アイヌいぬ)と呼ばれる賢くすばしっこい犬種。
寒さにも強い。
ただ、チアキとの信頼関係はまだ築けていない模様。
北見(きたみ)
チアキにワンを譲った猟師
帽子に眼鏡のお爺さん。
農家としてトウモロコシ畑を営んでいる。
その畑も熊の被害に遭っている。
犬好きで家では現在七頭飼育している。
あらすじ
月が雲から抜ける中、頭を狙い放ったチアキの弾丸は熊が匂いを嗅ぐ為、頭を持ち上げた事で喉元の毛を翳め背後の樹に弾痕を刻んだ。
熊はチアキを認識し、干し草のロールの前にいた彼女に目を向ける。
そんな熊にチアキはボルトを操作し再度発砲。
弾丸は熊の右耳を吹き飛ばした。
その攻撃によって熊は身を翻し林の中の暗がりに消えた。
チアキはそれを追い林の中に入る。
だが月明かりの届かない林の中、僅かなライトの明かりでは周囲を確認出来ず彼女の心は緊張と恐怖に支配されていく。
暗闇の中、茂みの中からガサリと音がする。
何処から熊が飛び出してくるか分からない暗い林で、チアキはパニックを起こし、やがて雪の中の笹に足を取られ転倒。
その弾みでライフルが暴発し、弾丸はチアキが倒れ込んだ目の前にあった倒木を抉った。
発砲音を聞いた熊が遠ざかる中、その事に憤り叫び声を上げたチアキは弾丸が倒木の木片を弾けさせた事で、頭から血を流し左頬には木の破片が頬を貫く形で刺さっていた。
感想
今回は冒頭、狙い続けた熊を逃し傷を負ったチアキと、それを期に取材を終了したカズキ。その一年後、犬を使う事にしたチアキとカズキの再会、そして猟犬ワンとの狩猟の様子が描かれました。
闇の中、光が無いと獲物を視認出来ない人間は圧倒的に不利です。
その事を身を以って知ったチアキは、牧場の熊退治で一緒になった北見から犬を譲り受けました。
意外だったのは、北海道では現在、余り猟犬を使う人がいないという事でした。
今まで読んだり観たりした作品のイメージで、北海道の猟師さんも犬を使うものだと思い込んでいました。
簡単に調べた所ではアイヌの人々は作中登場した、ワンと同じ北海道犬を狩猟につかっていた様なのですが、作中語られた事によると効率を重視した結果廃れた様です。
そんな訳でチアキに犬を譲った北見も、チアキ自身も狩猟犬の訓練は手探りでやっていたみたいでした。
また、この巻ではカズキの取材は一旦終了し、それを纏めた本が刊行されそこそこ売れている様でした。
ただ、狩猟に対する拒絶反応もかなりあった様です。
野生動物保護、動物愛護の観点からそういった意見が出るのも分かります。
ですが、熊は野生動物であると同時に農作物を荒らし、家畜を襲う害獣でもあります。
作中、北見が語る事ではトウモロコシ畑の七割が被害に遭ったという例もあるようです。
農作物の出来不出来は農家にとって収入に直結します。
もし七割収入が減ったら、そしてもし農作業の途中で誰かが襲われたら。
そう考えれば安易に批判する事も出来ないのでは無いでしょうか。
今回読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
この巻のラスト、チアキたちは熊らしき獲物に遭遇します。
ワンが狩猟犬として熊と戦えるのか、次巻も楽しみです。
こちらの作品はくらげバンチにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の安島薮太さんのアカウントはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。