アルキメデスのお風呂 4 まんが王国コミックス
著:ニコ・ニコルソン
出版社:ビーグリー
岐阜での国際会議からA-PARCへと戻った陽子(ようこ)と大池(おおち)。
大池は食堂で相変わらず陽子の作った唐揚げ定食は頼むものの、懇親会で川に流されその後、疲労したまま朝食を作り倒れた陽子に怒りを見せて以来、彼女との会話はほぼしていない様でした。
また、現在、A-PARCで行われているNBI2019(国際ワークショップ、研究者が意見交換等を行う催し)では大池はエミィとずっと行動を共にしていました。
会話の無い大池、そして仲の良さそうな二人の様子に陽子は自分の恋は終わったと落ち込みます。
登場人物紹介
半太郎(はんたろう)
陽子の実家「はら天」で修業中の青年
師匠である陽子の父の命令で陽子の行動を監視、盗撮していた。
あらすじ
仲睦まじい様子の大池とエミィ、そして素粒子国際会議の後、自分とは殆ど話さなくなった大池。
陽子はその事にショックを受け、やつれ、友人の強子(きょうこ)からダイエットを勧められ痩せたり、その後、リバウンドで戻ったりしながら日々を過ごしていた。
大池と会話が無い事は辛かったが、岐阜の会議で朝食を作った陽子の事を食通のベルガー教授がSNSに上げた事で、A-PARCで行われているNBI(国際ワークショップ)に参加した海外の研究者達が食堂に押し寄せ、美味しいと言ってくれた事は陽子にはとても嬉しかった。
一方の大池は別に陽子の事を嫌った訳ではなかった。
毎日、彼女の唐揚げを食べていたのも、体調や精神状態によって微妙に変化する彼女の揚げる唐揚げで陽子の調子を計っていたのだ。
そんな大池に帰国間際エミィは夢中だなぁと微笑む。
大池は勿論と陽子の唐揚げを絶賛した。
「Nein(ちがう)唐揚げじゃなく、あの子に」
エミィは大池の顎を持ち上げ、不敵に笑いながらそう言った。
後は自分でエウレーカ(分かった)しな。
そう言葉を続けたエミィに大池は戸惑いを見せる。
風呂にでも入りゃァ閃くかもな。
戸惑う大池にそれだけ言うとエミィはじゃあなと立ち去った。
残された大池の思考はエミィの言葉によって、唐揚げから自分の中の陽子への感情へと切り替わっていた。
感想
この巻で作品は完結です。
今回は唐揚げでつながった陽子と大池の恋の行方と、陽子と父の和解の様子が描かれました。
父が陽子を厨房に入れなかった理由。
それは料理人として自分がして来た苦労を、いえ、女性である陽子は自分以上に苦労するだろうと考えた結果でした。
彼の心情が描かれたシーンを読んでその事は理解出来たのですが、頭ごなしに怒鳴りつけるやり方はやっぱり共感出来ません。
ちゃんと説明すれば陽子だって分かったと思うんですよね。
まぁ、彼は職人は口下手で頑固を地で行くキャラですから仕方ないとも思いますが。
また陽子と大池の事にも今回で決着がつきました。
大池は全ての事柄に理由を求め、それを理詰めで考える超理系タイプです。
それ故、彼は自分自身の感情でさえ分析する事が必要だった様です。
終盤、彼は理路整然と陽子が笑っている事が、自分の心に平穏をもたらす事をホワイトボードで解説しながら陽子に話します。
陽子が見送りの際渡した唐揚げを機内で食べ、アメリカに渡り、すぐさまとんぼ返りして陽子に会いに来た大池。
その理由を尋ねた陽子にこれまで科学者として理性的、合理的な態度を崩さなかった、いえ崩せなかった大池が戸惑いや恐れを見せながら告白するシーンはとても情熱的で素晴らしかったです。
まとめ
この作品は二巻以降は電子書籍で販売されました。
読めなくなるよりは全然良かったのですが、紙派な自分としてはその点だけが心残りです。
三冊とも表紙も素敵ですし、出来れば四冊本棚に並べたかったです。
こちらの作品はマンガZOROにて現在三話まで無料で閲覧いただけます。
作者のニコ・ニコルソンさんのTwitterはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。