着たい服がある 5 モーニングKC
作:常喜寝太郎
出版社:講談社
KERAの近藤経由で依頼された中国ブランドのモデル。
その事はロリータ服を着たいと思った事、そして小澤と出会い勇気を貰い、実際に着て街に出た事、そんなこれまでの出来事を振り返る契機となりました。
マミは自分で選び取った道を歩き始めます。
登場人物
リリー・マディソン
世界的なアーティスト
奇抜な衣装がトレードマークのミュージシャン。
その人気の源の一つである衣装には強いこだわりを持っている。
それは派手さでは無く、それを選んだ人間の服に込めた想いではないかと思われる。
あらすじ
ニューヨークから帰国した筈の小澤から連絡は無く、気になったマミは彼が働いているショップを尋ねた。
小澤はニューヨークでの買い付けが上手くいかず、更にそこで出会ったボスの友人バイヤー、マイキーの言葉で思い悩んでいた。
自分のセンスに自信を失い、沈む小澤。
そんな小澤とショップ前で会ったマミは、彼の様子が気になり立ち去ろうとする小澤に追いすがる。
彼から勇気をもらった事を口にし、力になりたいと言葉を重ねる。
しかし小澤は勘違いしているとマミの言葉を否定した。
語られた小澤の過去。
些細な事から始まった虐め。
それは彼から友人を奪い、孤独を与えた。
小澤の服はその孤独に耐える為の鎧だった。
誰かの為ではなく全て自分の為、彼の服に対する想いは広がるのではなく彼一人の中で閉じていた。
完全に拒絶されたマミだったが、憧れて何度も彼の言葉に救われ好きになってしまった小澤を、彼女は放っておく事は出来なかった。
自暴自棄になり、あれほど拘っていた服を捨てようとする小澤にマミは必死に寄り添い続ける。
感想
今回で物語は完結です。
内容としてはマミにロリータ服を着る事を決意させる切っ掛けとなった小澤の葛藤と、それに寄り添い続けたマミの姿が描かれました。
当初、ロリータ服を着る事を躊躇し他人の目や揶揄に怯えていたマミでしたが、最終巻では心に強くしなやかな芯の通った女性に変わった様に感じました。
ロリータ服を着る様になって出会った人々。
様々な経験が彼女を少しづつ成長させ、優しくて包容力のある人物に変えて行ったのだと思います。
それは第一巻と最終巻である第五巻の表紙を見ても感じます。
第一巻ではこちらを睨み、全てを警戒しているような表情のマミですが、最終巻ではとても嬉しそうに優しく微笑んでいます。
また表情だけでなく、一巻は何処となくぎこちなさを感じさせるのに比べ、五巻はとても自然でロリータ服という非日常を纏っているという事を一切感じさせない物でした。
そう感じるのは作中でも語られた様に、マミという人物の中に核となるブレない物が出来たからの様に思います。
まとめ
読み終えて感じた事は、自分の心に正直に生きる事の大切さでした。
社会の方向性、大多数に従う事で捻じ曲げられる物はある様に思います。
それに迎合すれば生きやすくはあるのでしょうが、心は死ぬ様な気がします。
反社会的な行為、他者を傷付ける事は勿論許せませんが、それ以外の事はもう少し緩く生きれる世界なればと思います。
こちらの作品はモーニング公式サイトで第一話が無料で閲覧いただけます。(20年3月現在)
作者の常喜寝太郎さんのアカウントはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。