この世界は不完全すぎる 2 モーニングKC
著:佐藤真通
出版社:講談社
キングス・シーカー・オンラインというゲームの世界に閉じ込められたデバッガーのハガ。
彼はメタAIテスラに入られた事で滅びのイベントから抜けたNPC(ノンプレイヤーキャラクター、作品内ではNPCは現実同様、自動生成され同じキャラクターは存在しない)の少女二コラと共に、バグの調査・報告をしながら旅を続けていました。
二人は旅の途中、モーションバグを起こしている村に立ち寄り、悪質なデバッガー、酒井の下から逃げ出したデバッガーのアマノと出会います。
アマノは足の悪い少女のNPCのルゥと共に暮らしていました。
そのルゥの家をドラゴンに乗った酒井達が襲い……。
登場人物
テスラ
二コラを介して現れるメタAI
世界を統括しているが直接関与する権限は持たない。
現在は酒井の様なデバッグモードを使い好き勝手している者達のデバッグストーン(デバッガーとして様々なチートを使える石板)を回収し食べる事でデバッガー権限を剥奪する事を目的にしている。
キトラ
ぴえんっぽい顔のモンスター
毛の無いゴリラの様な体で体長は人の五倍ぐらいある怪物。
顔はぴえんっぽいが本当の口は顎の先にある割れ目。
モブの処理等で死肉を喰らっている。
酒井の部下達
帰還を諦めデバッグモードを使い、ゲームの世界で存分に楽しもうと開き直っている。
彼らの感覚だとNPCやデバッガー等のゲーム内の命はとても軽い。
あらすじ
部下の隅田を倒したハガを追って来た酒井は、彼を排除する為、三つ足のドラゴンを使いハガ達がいたルゥの家ごと建物を踏み潰した。
アマノの描いた漫画を読む為、地下にいたハガ、二コラ、アマノは潰される事なく助かったが、一階のベッドにいたルゥは瓦礫に押し潰され瀕死の重傷を負っていた。
この世界のNPCは基本、現実の人間同様、一度死んだら復活しない。
失われたルゥの命は二度と戻っては来ないのだ。
かつて酒井達に嫌気がさし、デバッグストーンを置いて彼らから逃げ出したアマノ。
彼はデバッグされていない村、つまりデバッガーが発見していない村に隠れようと考えた時、足の悪いNPCの少女ルゥと出会った。
NPCが自動生成するイベント、ルゥが作り出したイベントは世界の話を聞くという物だった。
漫画家志望だったアマノは自分の描いた漫画をルゥに見せる。
プログラムで生み出されたNPCに漫画を見せても……。
そう考えながら渡した漫画を読んだルゥは、とても喜んでくれた。
アマノはルゥに漫画の続きを見てもらおうと、彼女の家に居候しながら家の改修や家事を行いつつ漫画を描いた。
やがてルゥの存在はアマノにとってかけがえのない者となった。
ルゥもアマノの漫画をずっと一番最初に読む人でいたいと言ってくれた。
そんな彼女の死を確認したアマノは、嘆きの叫びをあげる。
やがてフラリと立ち上がり、目を見開きアイツらを殺しに行くと歩き出した。
無策で挑むのは無茶ですと止めるハガの制止を振り切り、アマノは酒井達の居城へ向かおうとする。
そんなアマノにハガはずっと考えていた作戦があると、彼をひとまず押しとどめた。
感想
NPCを遊びで殺している酒井達。
NPCを愛してしまったアマノ。
ゲームとして考えれば、暇を持て余した酒井達の行為も分からなくはありません。
私自身、遊び尽くしたゲームでNPCにこれをしたらどうなるのだろうといった好奇心から色々いたずらした事はあります。(変な服着せたりとか)
ただ、作品に描かれているキングス・シーカー・オンラインの世界では前書きに書いた様に基本NPCは同じキャラはおらず、死ねば復活する事はありません。
それは感覚でいえば現実社会での殺人と変わらない気がします。
そんな世界で遊びでNPCを殺している酒井達は、一見まともに見えても、やはり何処か正気を失っている様に感じます。
一方、ハガとアマノは二コラにNPCとして接しながらも、人として見ている部分もある様に思います。
一巻のラストでハガが言った様に、人は絶望的な状況下でも没頭する事があれば、やるべき事を見つければ真っ当でいられるのかもしれません。
まとめ
同僚の惨状(様々なバグで行動不能及び行方不明)からデバッグモードを使わないと決めているハガ。
この巻のラスト、窮地に陥った彼と仲間達がデバッグモード無しで事態をどう切り抜けるのか、今から読むのが楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。