宝石商のメイド 2 MFC
作:やませちか
出版社:KADOKAWA/MFC
メイドが宝石を売る店「ローシュタイン」
大通りから外れた新参のその店に自分にふさわしい宝石との出会いを求め、客達は訪れる。
登場人物
事業家の夫婦
一人息子が会社を継がなかった事で引退し田舎に越す事にした。
婦人はその際、持っていたパリュール(装飾を意味するジュエリーセット)を買い取って欲しいと店を訪れる。
ラヴェンデルの母
メイドのエリアが王族との結婚が決まっている娘、ラヴェンデルと付き合う事に不満を抱いている。
学び舎(まなびや)の園長
貧しく学校に通えない子供達に無償で勉強を教えている。
エリアはザトウムシの名で学び舎に寄付を続けていた。
ジョージ
グレンツェ国第一王子
平民であるカレンシアと結婚する為、王室を離脱した。
カレンシア
資産家の娘
早くに結婚し十六歳の息子のいる女性。
現在は離婚し独り身。
パティシエ
エリアの行きつけの洋菓子店の店主
父親が宝石商に騙された事で、宝石商全体に偏見を抱いていた。
エリアが二つ買った新作は必ずヒットする事から、彼女が新作を買うかどうかに注視している。
あらすじ
その日、宝石店「ローシュタイン」を訪れたのは柔らかい雰囲気の上品な老婦人だった。
エリヤはいつも通り彼女に石にまつわる話を語ったが、老婦人は今の私に宝石は必要無いと呟き、でも必ずまた来ると告げその日は店を後にした。
数日後、老婦人は言葉通り夫を連れてローシュタインを訪れる。
訪問の目的は金細工の名工、ファベル作のパリュールの売却。
老婦人の夫は大きな会社の社長だった。
社交界での付き合いもある為、豪華なパリュールを付き合いで買ったのだが、その会社を継ぐ事を一人息子が拒否。
失意の中、夫は会社を他の者に任せ引退を決めた。
妻である老婦人も社交界を引退、今後は田舎に農場を買ってのんびり暮らすのだという。
パリュールはその資金にしたいらしい。
エリヤは自分では値が付けられないと、店主であるアルフレッドに見積もりを頼んだ。
アルフレッドの見立ては、金細工の素晴らしさに加え、トップクオリティのエメラルドをふんだんにあしらった、博物館行きになってもおかしくない品という物。
ローシュタインは石好きの客は来てくれれば、店を維持できるだけの収入でいいという信念の下に開かれた店だ。
儲けは二の次である為、資金は有名店ほど潤沢とは言えない。
結果として買い取り金額で提示できるのは、有名店の三割ほど下の額だった。
アルフレッドとエリヤは老婦人にその事を正直に話した。
すると婦人は微笑みを浮かべその額でいいと答えた。
夫は差額を考え反対し、エリヤ達も彼に賛同した。
しかし、婦人は足ることを知らないとと、アルフレッドが提示した額で十分だと返し、商売人な夫に自分は穏やかに暮らしたいのだと続けた。
四十年、夫の商売に付き合って来たのだから、今度は自分のわがままを聞いて欲しい。
そんな言葉に夫も折れ、パリュールはローシュタインで買い取る事になった。
一つだけお願いがある。
最後に老婦人はそう言って言葉を紡ぐ。
「私はあまり夜会が好きじゃなくてね。このパリュールの価値も分かってあげられなかった。今度は……本当の意味でお好きな人に譲って欲しいのよ。お二人にお願い出来るかしら」
彼女の言葉にアルフレッドとエリヤは勿論ですよと笑みを浮かべ、頷きを返した。
老婦人と夫が店を去り、アルフレッドが商談に出た後、店に一人の男が訪れる。
その口髭の男は、婦人のパリュールを言い値で売って欲しいとエリヤに申し出た。
話を聞けば男は老夫婦の商売敵で、夫が社長を退いた事で会社は傾くだろうと予想していた。
パリュールは自分の会社がナンバーワンになった事を知らしめる為、男の妻に身に着けさせたいそうだ。
話を聞いたエリヤはパリュールを販売できない旨を男に告げ、彼を店から追い出した。
感想
今回は、冒頭、老婦人とパリュールのエピソードから始まり、ラヴェンデルの母、祝日の祭と古物市、エリヤ先生になる、王子のプロポーズ、描き下ろしとしてエリヤとパティシエ等が描かれました。
今回はその中でもエリヤが学び舎で宝石、鉱物について教えたお話が印象に残りました。
エリヤは給料の一部を、ザトウムシという名前で学び舎に寄付していました。
エリヤの質素な生活の様子から、それはかなりの額なのではと予想されます。
偶然、その事を知った園長は彼女を子供達と会わせたいと考え、ローシュタインを訪れました。
蛍石の光と子供達からの感謝の手紙とキャンディ。
優しくて、心が温まるエピソードでした。
まとめ
今回も宝石とそれにまつわる話、そして宝石を求める人々の悲喜こもごもが描かれました。
次巻では新聞記者がローシュタインを訪れる模様。
どんな展開になるのか、読むのが楽しみです。
こちらの作品はコミックウォーカーでも一部無料で閲覧頂けます。
作者のやませちかさんのTwitterはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。