ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~ 4 ビッグコミックス
著:和田隆志
出版社:小学館
幻獣、ファンタジーに登場する彼らが生み出す物を素材にして、世界に一着だけの服を作り出す店、クチュリエ―ルシガラキ。
祖母からその店を引き継いだ若きファッションデザイナー、ババ・キヌヨの物語、最終巻。
あらすじ
魔法王国の王女のウエディングドレスの素材を集める為、アイエイエ島での素材集めに参加したキヌヨ達。
島に閉じ込められた王女パミアの双子の姉、ヒラミヤに翻弄されながらもキヌヨとライバルのクリストフの二人は何とか素材を得る事に成功した。
素材集めはウエディングドレスメーカーとしての審査も兼ねており、最終選考に残ったのはキヌヨとクリストフとなった。
そして二人はドレスを着る事になる王女パミアと謁見する。
だが王女は自身のウエディングドレスの事だというのに、上の空の様子だった。
どちらかといえば、遅れて登場したフィアンセの公爵、アルフォンソ六世の方が乗り気な様子だった。
謁見が終わり城から帰るキヌヨは、とらえどころない人だったという相棒のハリエットの言葉に唸り声を上げていた。
彼女はこれまで依頼者の性格やその服を着て何をしたいのかを考慮し、服のデザインを考えていた。
王女の本質がつかめなければ、本当にパミアに似合うドレスは作れない。
そんなキヌヨ達に突然声が掛けられる。
声を掛けたのは今まさに話題となっていたパミアその人だった。
透明マント(光学迷彩)で城を抜けだしたパミアは、話もそこそこにキヌヨから箒を奪い何処かへ向かおうと飛び立つ。
だが余り魔法は得意ではない様で飛び立ってすぐに地面に落ちた。
放っておく訳にもいかず、キヌヨはパミラを後ろに乗せ彼女が目指した場所へと向かう。
そこは新たに造られた電波塔の影響で、餌場に辿り着けなくなった迷子のグリフィンがいる林だった。
王女パミアは身分を隠しグリフィンレース(グリフィンに車を引かせ競う武器と罠も使用可能な危険な競技)に出場するかなりお転婆なお姫様の様だった。
そんなパミアが言うには王女として生きる為、野性に返した二頭のグリフィンが気になり城を抜けだしたという事らしい。
彼女はグリフィン達を餌場まで導くと決めているようだった。
キヌヨは意思の固そうなパミアの説得を諦め、冬将軍(モンスター、纏う冷気に触れると一瞬で体が凍る空を渡る魔物)の突破に手を貸すのだった。
感想
今回は冒頭の王女パミアとグリフィンのお話から始まり、王女の婚約者アルフォンソ王子とスライムのワックスを使ったジャケット、そして王女のウエディングドレス制作の模様と結末が描かれました。
オートクチュール、オーダーメイドは、現代では一部の人しか利用しない贅沢品というイメージが強いように思います。
実際、既製服の方が安価で手に取りやすいのも確かです。
ですが、一着ぐらいは自分の体に完全に合わせた、自分が思い描いた服という物も着てみたい気がします。
ライダースジャケット等、既製品ではラインはいいんだけどデザインのこの部分がこうだったらと思う事が過去にもありました。
気に入らない部分を自分好みに修正し着る。
そんな事が出来たら楽しいだろうなと作品を読みながら感じていました。
最後に個人的な感想として、終盤に登場したパミアの姉、ヒラミヤのドレスのデザインがとても素敵でした。
まとめ
作品はこの巻で完結です。
内容はファンタジーに登場する生き物の素材で服を作り上げるという物でしたが、その方法、皮のなめしや糸の生成等は現実の方法に則った解説が為されており、そういった方面に疎い私には非常に勉強になりました。
また、常に顧客の事を考えベストを目指すキヌヨの姿は、読んでいてとても気持ち良かったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。