トクサツガガガ1
作:丹波庭
出版社:小学館/ビッグコミック
中村叶、26歳、OL、特撮オタク。
彼女は重度の特撮オタクでありながら、それを隠し生活している。
趣味を隠し続ける理由、それは特撮という分野が一般的には子供、それも男の子が見るジャンルであり、母や友人から否定された過去によるものだった。
一人暮らしを始め、働き始めた叶を止める枷はなく、彼女は得た報酬を好きなだけ特撮につぎ込む自由を得たのだった。
第1話 獣将王シシレオー
あらすじ
叶は飲み会の誘いを断り家路を急いだ。
同僚には彼氏の存在を疑われているが、そうではない。
彼女が急ぎ帰宅する理由、それは撮り貯めた特撮の新シリーズ。
獣将王(ジュウショウワン)を見るためだ。
そう彼女はいわゆる特オタだ。
戦隊ヒーロー、怪獣、ライダー等が活躍するアレである。
彼女にとって今回のシリーズは当たりらしく、早々とDVDを買う事を決めてしまうほどハマっていた。
彼女は幼い頃、一度特撮にハマっていたが、母はそういうものが嫌いで、一度卒業していたのだ。
しかし、一人暮らしをすることになり、見事返り咲いたという訳だ。
彼女の部屋には特撮グッズが所狭しと並んでいた。
彼氏がいたこともあったが、彼女が部屋に彼を入れる事は一度もなかった。
同僚は彼女のことを女子力が高いという。
お弁当を手作りしている所などがポイントが高いと言うが、彼女は節約してDVDを買いたいだけなのだ。
叶が頑なに特オタであることを、隠そうとする理由は恐怖からであった。
誰しも好きで好きでしょうがないものを、否定されたくはないのだ。
ある日の帰宅途中、満員電車の中で高齢の夫婦が電車に乗ってきた。
仕事に疲れ、座っていたい叶に獣将王のリーダーシシレオーが語り掛ける。
「自分が苦しいことは、弱い者を見捨てていい理由にはならない」
叶は彼らに席を譲った。
後輩の小野田は電車の隅で赤面している叶を、良い事をして照れていると勘違いしていたが、叶は獣将王のシーンを思い出してにやけているだけだった。
小野田が叶に問う。
「どうしたら先輩みたいに行動できるようになりますか?」
叶は特撮見たらいいんだよと言いたいのを抑え、小野田に言った。
「立派な大人になろうとするんじゃなくて、子供の頃に(特撮に)習ったことを思い出すの。
大人になった時大事なことは、全部小さなうちに(特撮に)ならうでしょ。ズルしちゃいけないとか、嘘つかないとか、あきらめないとか」※()内は心の声
「それをやっていれば、なんにも難しいことはないよ。」
爽やかな笑顔で小野田に言い、親指を立てる叶の目にはシシレオーの姿がはっきりと見えていた。
気持ちが昂った叶は、私はくじけないと駅の階段を飛び降りた。
足をくじいた叶を救ってくれたのは、先ほど席を譲った老夫婦だった。
中村叶26歳OL、特撮を見て、前向きに生きています。
感想
アニメ、ゲーム、特撮。オタク文化が一般的に認知されてきたとはいえ、やはり気持ち悪がられたりすることもあるでしょう。
上記の物が大好きな私も、叶の気持ちはとてもよく分かります。
好きなものを、見てもいないのに否定されるのは、やはり悲しい気持ちになります。
子供向け番組であっても、制作に関わっているのは大人です。
そこには視聴者にむけたメッセージが含まれていると思うのです。
年齢に関係ない普遍的な物もあると感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。