小説 小説短編

後宮の烏

投稿日:2019年1月3日 更新日:

牡丹後宮の烏
著:白川紺子
画:香魚子
出版社: 集英社 集英社オレンジ文庫

後宮。宮殿の奥、皇帝の妃が住まう場所に、夜明宮(やめいきゅう)と呼ばれる漆黒の殿舎がある。
そこには烏妃(うひ)と呼ばれる夜伽をせぬ妃が住んでいる。
老婆であるとか、少女であったと様々な姿が噂され、呪殺から失せもの探しまで何でも引き受けてくれるという。

皇帝、高峻(こうしゅん)は依頼のため彼女の元を訪れた。
その出会いがやがて国が隠した禁忌につながっていく。

各話 冒頭部分あらすじ・感想

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翡翠の耳飾り

冒頭部分 あらすじ
夜明宮、その名に反し壁は漆黒に塗られ、雲に月が隠れているため瑠璃瓦もその美しさを示すことは無かった。
時の皇帝、夏高峻(か こうしゅん)が宦官の衛青(えいせい)をつれてこの夜明宮を訪れていたのには訳があった。

この殿舎には烏妃(うひ)と呼ばれる妃が住んでいる。
烏妃は不思議な力を持ち、呪殺、失せもの探し、招魂、祈祷まで様々なことを成せるという。
衛青が烏妃にまつわる噂を話す。
殿舎にいる金色の怪鳥のことや、烏妃は他の妃嬪と違い会えば厄災がおこる等。

しかし、高峻は気にすることなく殿舎を訪ねた。
扉を開けようとするとけたたましい鳴き声と共に何かが飛び出してきた。
衛青が高峻を守り素早く捕まえる。
それは丸々と太った鶏だった。羽根が金色に輝いている。

絞めましょうかと衛青が問う声に高峻が答える前に涼やかな声が割って入る。

「星星(シンシン)を放せ、下郎」

十五、六の少女だった。黒髪を結い上げ簪や歩揺をさしている。
漆黒の衣裳を纏った中で髻の下の赤い牡丹が一際目を引いた。

衛青が放した黄金の鶏を少女は抱き上げる。

「これは貴重な化鳥ぞ。殺せば、お主ではとても贖えぬ。気をつけるがよい。」

ずいぶん古風な言い回しをする。そして偉そうだと高峻は思った。
「そなたが柳(りゅう)烏妃か」尋ねた高峻に女が答える。

「帝がたった二人で何のようだ、私は夜伽はせぬぞ}

そう答えた少女に高峻は頼みがあると切り出した。

懐から取り出したものを几に置く。
それは翡翠の耳飾りだった。二つそろっておらず片方だけだ。

「これの持ち主を知りたい」

高峻はそう少女に話した。

感想
後宮の奥、夜明宮で一人暮らす烏妃、寿雪(じゅせつ)。
不思議な力を持つ彼女に人探しを依頼した時の皇帝、高峻。
彼の依頼はやがて先代の皇后、皇太后の陰謀につながっていきます。

寿雪の過去、高峻の過去など舞台の説明も兼ねたプロローグ的なお話でした。

花笛

冒頭部分あらすじ
夜明宮の小部屋の祭壇前で寿雪は頭を垂れた。
祭壇の後ろの壁には大きな黒い化鳥の姿が描かれている。
艶をおびた羽根は四枚、胴は猪、足は大蜥蜴、しかし顔は美しい女のそれであった。

烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)、海の向こうからやって来た女神、夜と万物の生命をつかさどる神の絵姿だった。
遠くで鈴の音が聞こえた。
寿雪は急ぎ小部屋を出て自室に戻った。
部屋では星星が騒いでいる。来客のようだ。

か細い女の声が「烏妃様」と呼びかける。
女は頼みがございますと言った。
寿雪は手を翻し、術で扉を開けた。
扉の前には侍女と女主人、宦官が二人立っていた。
女は椅子に腰を下ろすと、雲家の娘、花娘(かじょう)と名乗った。

要件を聞くと高峻が度々寿雪の元を訪れていることを聞かれる。
寿雪は依頼を受けたことと内容は言えないことを話した。

花娘は皇太后が処刑された事を話し、それが烏妃の呪殺だと噂になっていることを寿雪に語った。
しかし寿雪は意に介さず、処刑されたのなら呪殺ではないだろうと寿雪は答えた。

寿雪はしばらく花娘と高峻の事について話した。
彼女は皇帝である高峻が烏妃の寿雪の元に足しげく通っていることを気にして確認に来たようだった。
安心したようで「頼みはまた明日」とその日は帰っていった。

感想
皇帝、高峻にとって姉のような存在である花娘が依頼を持ち込みます。
彼女の依頼は、花笛(はなふえ)が鳴らない理由を探って欲しいというものでした。

花笛とは悼む相手が還って来たことを知らせるもので、それが鳴らないという事は魂が還って来ていないという事です。

花娘のかつての許嫁、欧玄有(おう げんゆう)の魂を探し、寿雪は調査を始めます。

前王朝の皇帝の一族、欒冰月(らん ひょうげつ)と名乗る銀髪の幽鬼も現れ、お話は少しずつ国の禁忌に迫っていきます。

雲雀公主

冒頭部分あらすじ
殿舎の格子窓に雲雀がとまっていた。
数羽いた雲雀の中の一匹は生きたものでは無かった。
雲雀は烏漣娘娘の眷属で、人の魂を楽土に導く手伝いをする。
その雲雀が楽土へも行かず迷っているとはどういう事だろう。

侍女の九九(ジウジウ)に話すと、雲雀公主(ひばりひめ)の雲雀かもしれないという。
詳しく聞くと高峻の異母妹で先帝の御世に亡くなったらしい。

公主は母が宮女だったため後ろ盾も無く、後宮の隅で一人暮らしていたそうだ。
彼女が可愛がっていた雲雀ではないかと九九は言った。

主がいなくなっても後宮に留まる雲雀が哀れだと、九九は寿雪に楽土に送って欲しいと頼んだ。
寿雪は九九の頼みを聞き入れ、雲雀公主について調べ始めた。

感想
公主はすでに亡くなっており彼女と関わりのあった侍女の話でしか為人は伺う事は出来ませんが、とても優しく健気な少女だったようです。
彼女の死の要因はその優しさが招いたものでした。

玻璃に祈る

冒頭部分あらすじ
その日も夜明宮には高峻が訪れていた。
寿雪は来るなと何度も言うが気にした様子もなく高峻は通ってきた。
用がなくても彼は菓子などを持って寿雪を訪ねてくるが、今日は何かあるらしい。

話を聞くと後宮に幽鬼が出るらしい。
その幽鬼は銀髪で柳の花が咲く時期だけ現れるそうだ。

銀髪は前王朝の一族の特徴で、先日の事件の欒冰月かもしれない。
現王朝の初代皇帝、炎帝(えんてい)の寝所に現れていた前王朝の幽鬼たちは先代の烏妃が追い払ったそうだが、寿雪はそのことを先代の烏妃、麗娘(れいじょう)からは聞いていなかった。

真相を探るため、寿雪は高峻たちと幽鬼が出るという柳に向かった。

感想
烏妃の秘密や国が歴史に残さなかったことが語られます。
真相を知り高峻はある誓約を寿雪にします。

すでに死んだ人たちの優しさを感じるお話でした。

まとめ

烏妃と呼ばれる特殊な妃、寿雪が後宮で起きる事件を解決してく探偵小説のようなお話でした。
寿雪と高峻の今後も気になるので、続刊も読んでいきたいと思います。

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