メタモルフォーゼの縁側 5
著:鶴谷香央理
出版社:角川書店
コミティアに参加し自分で描き上げた漫画を販売したうらら。
結果は雪が買ってくれた一冊と、女性が買った二冊。
売り上げは三百円。
ですが、その三百円はうららにとって大切な物になりました。
あらすじ
コミティアが終わり、本格的に受験勉強に取り掛かったうらら。
そんなうららに気を使い雪も彼女に連絡を取る事は控えていた。
そんな日々も過ぎていき、二人を結び付けた漫画「君のことだけ見ていたい」も最終回を迎える。
会うのを控えていたうららと雪だったが、雑誌を買ったうららはどうしても雪と会いたくなり連絡を取った。
二人は親に隠れて会うカップルの様に合流し、いつものファミレスで最終回の感想を話し合った。
その後、作品の完結と第四巻の発売を記念して、作者のコメダ優のサイン会が開かれる事になった。
サイン会は抽選だったが無事二人とも抽選に当たり、サイン会には参加できる運びとなった。
うららが幼馴染のつむっちの頼みで少し遅れる事になり、雪は一人でサインの列に並ぶ事になった。
いよいよ雪の番となり、コメダに作品の主役の一人、佑真を描いて欲しいと伝える。
イラストを描きながら、コメダは雪に五月のコミティアの事を話し始めた。
コメダはうららの本を見て、行き詰っていた時だったから元気が出たと微笑んだ。
憧れの漫画家が自分の本を読んでくれた。
それを聞いたらうららはどんなに喜ぶだろう。
雪は本を描いたのは自分では無くうららで、彼女はうしろに並んでいる筈と説明しようとした。
だがサイン待ちの人々がいる事で、スタッフは二人の話を打ち切ろうとする。
雪はそんなスタッフをちょっと待って下さいと制止し、コメダに思いの丈をぶつけた。
「今日 彼女も来てるんです。後ろの方に並んでいると思うんですけど……この漫画のおかげで私たち お友達になったんです。描いて下さってありがとうございました」
そう言った雪をコメダはポカンとした表情で見返していた。
感想
この巻で作品は完結です。
あらすじで書いた雪の言葉、その後の展開、そしてうららが言った
「今日は完ぺきな日でした」
というセリフまで、流れがとても美しくて凄く感動しました。
漫画が本来であれば出会う筈の無かった二人を結び付け、それによりうららは漫画を描き、雪は行く筈の無かったイベントに参加し作者に直接お礼を言う。
一冊の本が人を繋げ変えて行く。
それは読者であるうらら達だけでなく、作者であるコメダにも波及している様に読んでいて感じました。
人は無関係に見えても、互いに影響を与え変化しながら生きている。
最終巻を読んでそんな事を思いました。
まとめ
静かで優しくて暖かい、よく晴れた春の日の縁側の様な読んでいてずっと気持ちいい、そんな完ぺきな物語でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらの作品はコミックNewtypeでも一部無料でお読みいただけます。
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