最果てから徒歩5分 1 BUNCHコミックス
作:糸井のぞ
出版社:新潮社
自殺の名所、死出ノ岬(志手ノ岬)。
どこかのサイトでランキング四位になった事で、更に死を求める者が集まる様になったその岬から徒歩五分。
オーベルジュ・ギルダという名の泊まれるレストランに訪れるお客たちの物語です。
登場人物
幸田すもも(こうだ すもも)
死出ノ岬を目指していた女性
シルバ―の髪の毛先をピンクと紫のグラデーションに染めた、派手な服の女の子。
幼い頃好きだったアイドル、ユココを探している。
死ぬ前にやりたい10の事をメモに箇条書きしている。
ユココに会って話す事は最後の一つ。
息吹(いぶき)
オーベルジュ・ギルダの雑用係
黒髪の背の高いハンサムな青年。
店のオーナーの孫。
昔、蔵人(くろうど)という名でホストをやっていた。
その頃のキャラ付けは耽美なお金持ちお兄さん。
夕雨子(ゆうこ)
オーベルジュ・ギルダのマネージャー
いつも笑みを浮かべている髪の長い女性。
すももが探していたアイドル、ユココ、その人。
アイドル時代の記憶を失っている。
オーベルジュ・ギルダは元々息吹の祖父母が営んでいた。
その息吹の祖父が亡くなりその後、旅に出た息吹の祖母から引き継ぐ形で夕雨子はマネージャーをやっている。
膳(ぜん)
オーベルジュ・ギルダのシェフ
眼鏡をかけた物腰の柔らかそうなおじさん。
オーベルジュ・ギルダは基本フランス料理店だが、膳は多くの店を渡り歩いたらしく出される料理は多国籍。
その料理はどれも絶品らしい。
その真面目そうな見た目に反して意外とおちゃめ。
あらすじ
死を求め電車で志手ノ岬へとやって来た幸田すもも。
自殺の名所として知られ、死出ノ岬と言われているその岬の最寄り駅で降りたすももは、駅前でチラシを配っていた青年と出会う。
どうやら青年はリニューアルしたレストランの宣伝をしていたようだ。
彼はすももにも声を掛けチラシを渡す。
お腹は空いてないとすげなく言ったすももに、青年はランチのメニューを伝える。
空腹では無いと言ったすももだったが、メニューを聞いた彼女のお腹は盛大に音を立てた。
結局、青年に案内される形で料理だけでなく宿泊もできるというその店、オーベルジュ・ギルダへと足を向けた。
その年季の入った西洋風の建物に足を踏み入れると、眼鏡の男性が戻った青年にいきなり泣き付いた。
何事かと視線を店内に向けると、そこには髪の長い女性の首にナイフ突き付けている男が立っていた。
感想
自殺の名所の側に立つ宿泊出来るレストラン、オーベルジュ・ギルダ。
そのオーベルジュ・ギルダを訪れる客たちとお店の人々の触れ合いを描いた作品です。
店を訪れる人々は自殺志願者であったり、そうでなかったり様々。
また、店の従業員たちもそれぞれに過去に何か抱えている様です。
作品は母親を殺してしまったと思い家を飛び出したすももが、店の従業員となり働き始める所からスタートします。
スキャンダルに巻き込まれた女優、亡くなった妻の思い出の料理を食べに来た父子、親友と片思いの相手との関係に悩む女性、仕事に生き家族に捨てられた雑誌記者。
様々な人が店を訪れ新たな選択肢を得て店を後にする。
こう書くと癒しやハートフルな物を想像するかもですが、この作品はそれを前面に押し出した物では無く、対話によって悩んでいた人が自らを省み新たな道を模索するといった物となっています。
夕雨子たちも強く自殺を止めたりはせず、普通に接し会話の流れで人々に気付きを与えていきます。
人が死を求める時、追い込まれ道は一本しかない様に感じていると思います。
ですが立ち止まって周りを見渡せば、意外と道は複数あるのかもしれません。
読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
死を求める人を無理矢理説得するのでは無く、普通に接し普通に話を聞くだけ。
そんなさりげない優しさがとても心地よい作品でした。
こちらの作品はくらげバンチにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の糸井のぞさんのアカウントはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。