黒鉄のヴァルハリアン 1 ヤングジャンプコミックス
著:松原利光
出版社:集英社
大帝国「元」の侵略、元寇。
その元寇から日ノ本を守る為に戦った御家人、相馬鉄二郎(そうま てつじろう)。
その剣の冴は鋭く多くの敵を打倒すも、相馬の剣は呪われし剣、魔王の武として仲間にも忌み嫌われる事になる。
それから三年後、幕府は戦った御家人たちに恩賞を支払う事が出来ず、異常気象による不作も重なり鉄二郎は息子の武丸と二人、飢えに苦しんでいた。
登場人物
相馬鉄二郎(そうま てつじろう)
肥後国の御家人、相馬家の当主
鞍馬山天尊(くらまやま てんそん:天狗)から伝授されたという相馬流の使い手。
災害に巻き込まれ、その魂をワルキューレのフリストに見出され死戦士(夜の鐘が鳴ると蘇る不死者)となる。
愛刀は大太刀の月震(げっしん)
相馬武丸(そうま たけまる)
鉄二郎の息子
食料不足により体を病んでいる。
優しく誇り高い少年。
偲(しのぶ)
鉄二郎の妻
流行り病(おそらく疱瘡)によって幼い息子を残し他界した。
フリスト
片翼のワルキューレ
ミズガルズに神が創った死んだ戦士の館ヴァルハラ。
そのヴァルハラの中心、世界樹を占拠したワルキューレ、カーラに対抗する為、鉄二郎を戦士としてミズガルズに呼び込んだ。
マハ
木の洞で一人ぼっちだったフリストを助けた家族の娘
額に角を持ったミズガルズ人の少女。
ミズガルズ人は現在、カーラによって民族浄化の危機にある。
マハの姉もカーラが呼び込んだローマ軍に捕まり連れ去られた。
オエノマウス
死戦士、ローマ軍将軍、クラックスの部下
ロン毛顎鬚の戦士。
クラックスから主のいない戦士、野良狩りを命じられている。
マルクス・リキニウス・クラックス
死戦士、ローマ軍の将軍
前髪切りすぎ刈り上げな男。
紀元前一世紀ごろ、共和制ローマで台頭した闘族派の将軍。
世界樹を支配するカーラに呼び込まれた英雄。
関羽(かんう)
死戦士、中国三国時代、蜀漢の将軍
字は雲長(うんちょう)。
髯自慢おじさん。
彼を呼び込んだワルキューレは死んだ模様。
あらすじ
飢えに苦しみながらも、ようやく捕らえた烏の肉を鉄二郎は息子の武丸に与えた。
しかし武丸はその肉を口にせず、夜中、死期が迫った者達が集められる無常堂に肉を届けた。
武丸に感謝しつつも、幕府に見捨てられた事を嘆く老婆に武丸は
「天はきっと、正しく戦い続ける者を見定めようとしているんです、もう少し共に耐え忍んでみましょうよ」
と励ましの言葉を掛けた。
武丸の後をつけその事を知った鉄二郎は呆れつつも、明日も狩りに行くからちゃんと食えと武丸に告げる。
だが武丸は腹は空かないと答えた。
「だって誇りで満ちているんですから」
その言葉を聞いた鉄二郎は自分よりも立派な武士だと、その横顔に目をやった。
息子の横顔を見ながら鉄二郎は亡くなった妻、偲との約束を思い出す。
「この子が剣を持った後でも、どうか可能な限り……見守ってあげてほしいのです……」
自分の死期を悟っただろう偲に鉄二郎は心配いらない、家を護るのが武士の務め、武丸は任せろと答えた。
その後、鉄二郎は見知らぬ森で目を覚ます。
鹿や猪等、獲物が溢れる森の中、鉄二郎は息子武丸を探し彷徨う。
やがて、人影を見つけ武丸かと駆け寄った鉄二郎に、その人影は槍を振りかぶり襲い掛かって来た。
感想
ベースは北欧神話で語られる戦士とワルキューレの物語。
勇敢に戦い死んだ戦士はその魂を戦乙女(ワルキューレ/ヴァルキュリア)に導かれ、ヴァルハラと呼ばれる戦士の楽園でやがて来る神々の最終戦争、ラグナロックまで戦いにあけくれ過ごすといった物だったかと記憶しています。
この作品はその北欧神話の世界、ミズガルズの中心、世界樹をローマ軍を呼び込み支配したワルキューレ、カーラと戦う為、片翼のワルキューレ、フリストが災害(地震?)で死んだ鉄二郎の魂をヴァルハラに呼び込む所から始まります。
武士とローマ兵士、更には三国志の英雄関羽も加わり、不死の戦士による戦いが繰り広げられるようです。
また、北欧神話に登場するフレースヴェルグ(死者喰らいと呼ばれる巨大な鷲)等も登場します。
息子武丸に恥じない武士として戦う鉄二郎が無敵で素敵なお話でした。
まとめ
次巻では鉄二郎が元寇で戦った相手のボス、フビライ・ハーンと出会う様です。
鉄二郎がどんな選択をするのか、読むのが楽しみです。
この作品はとなりのヤングジャンプにて一部無料でお読み頂けます。
作者の松原利光さんのTwitterはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。