小説短編

うぐいす浄土逗留記

投稿日:

梅の花
うぐいす浄土逗留記

著:峰守ひろかず
画:空梅雨
出版社:KDOKAWA/富士見L文庫

大学生の綿良瀬伊緒(わたらせ いお)は、気が付くとまるで時代劇の世界の様な長い塀の続く道に立っていました。
そこはおとぎ話に登場する者達が暮らす、隠れ里でした。

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登場人物

綿良瀬伊緒(わたらせ いお)
二十歳の女子大学生
身長145cmの小柄でロングヘアーの女性。
宮本女子大学人間文化科の二年で、いわゆるおとぎ話に詳しい。

七郎(しちろう)
隠れ里で護り部を務める青年
ニ十歳前後の細身で長身な青年。
水色がかった白く長い髪と青緑の瞳。
優しく生真面目な性格。
隠れ里にある十二座敷と呼ばれる宿で暮らしている。
里のヌシから護り部に任じられ、住民達の安全を守っている。

トボシ
十二座敷の住人
十二、三歳ぐらいの快活な少年。
口が悪くいたずら小僧といった印象。
彼もまた人では無い。

ヌシ
伊緒が迷い込んだ隠れ里の主
十代後半の美しい黒髪の美少女。
ヌシは里を作り出し、建物等の里の全てを生み出した。
気まぐれでいたずら好き。
トボシとは爛れた関係。

冒頭あらすじ

二十歳の誕生日のその日、大学二年生の渡良瀬伊緒は気が付くと時代劇で見る長い塀が続く夕暮れの道に一人、着の身着のままで立っていた。

自分の事を頭の中で確認する。
大学二年生で名前は綿良瀬伊緒、大学の寮に住み、趣味は読書と古書店巡り、好きな場所は図書館。

すらすらと自身の事を思い出せた事で、事故による記憶の欠落とかでは無いようだと伊緒は胸を撫で下ろす。

しかし、ここは一体どこなのか。
目の前には道が続き、後ろは山に続く森になっている。
とにかく、人の住んでいる家を探し、ここが何処なのか聞こうと人里らしいその場所で住民を探し歩き始めた。

人の気配の無いその里で、やがて伊緒は一軒の大きな屋敷に辿り着く。
その屋敷に住んでいた青年、七郎とトボシという少年の話でここが出入り口の無いおとぎ話に登場する隠れ里だと伊緒は聞かされる。

あり得ない状況に困惑しつつも、伊緒は日も落ちた事もあり、優し気な七郎の言葉に従いその日は一晩、十二座敷と呼ばれるその宿に泊まる事にした。

案内された部屋で一息ついた伊緒は、今後の事を考えた末、七郎にもう一度、話を聞こうと隣だという彼の部屋を訪ねる事にした。
十二座敷の部屋は通常の和風建築と違い一部屋一部屋が離れており、廊下も迷路の様に入り組んでいる。

そんな板張りの廊下を歩き、何とか七郎の部屋に辿り着いた伊緒は部屋の中を泳ぐ一匹の白い大蛇を見てしまう。
息を飲んだ伊緒に気付かず、大蛇はその身を和装の青年へと変じた。

大学で民話やおとぎ話を学ぶ伊緒は「蛇婿入り」という話を思い出す。
色々なバージョンがある話だが、大蛇が娘を喰う話もあった筈だ。
人の好さそうな振りをして、来訪者を襲う話も多く存在する。

逃げないと。

そう考えた伊緒は大蛇だった七郎に気付かれない様に静かにその場から離れると、屋敷を抜けだし夜の帳の下りた里を囲む山の中に逃げ込んだ。

感想

この作品は昔話をテーマに、隠れ里に迷い込んでしまった大学生の伊緒が大蛇の七郎やトボシ等、里の住民や昔話に登場する者達と関りながら、世話になった七郎への恩返しの方法を探りつつ帰る方法を探すといったストーリーになっています。

読んでいて印象に残ったのは、作中でも語られたのですが異類婚姻譚、人と異種族、神や動物等の結婚に悲恋が多いという話でした。
そういうルールがあるのか、正体を知られた者は大体が夫婦となった人の下を去る事になります。

そういう話を読む度に、別に狐でも雪女でも蛇でもいいから、そのままいてくれよと感じていた事を今回読んでいて思い出しました。

子供頃、そういう話を見た時も掟なのかもしれないけど、子供までいるんだから一緒にいればいいじゃん、旦那一人じゃ子育て大変だよとか、去っていった者達に子供ながらに無責任さを感じていた様に思います。

二人が幸せで納得してるなら、離れなくてもいいと思うんですよね。

まとめ

この作品が続くのか現段階では分かりませんが、気になっているキャラクターもいるので続編を読んでみたいです。
天狗の娘がどんな感じなのか、凄く興味があるんですよね。
(今回は木の天辺で山を眺めているだけで、殆ど動かなかった)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者の峰守ひろかずさんのアカウントはこちら

※イメージはPixabayのTakuro Obaraによる画像です。
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