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戦乙女の槍 ソード・ワールド短編集 各話冒頭部分あらすじ・感想

投稿日:2018年9月16日 更新日:


戦乙女の槍 SW短編コンテスト優秀作選

安田均 監修
内藤渉 他
イラスト 米田仁士
富士見ファンタジア文庫

テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」の世界フォーセリアを舞台にした短編集。

今回の短編集はSW短編コンテストで、読者から投稿された作品を6作収録しています。

 

各話のあらすじや感想など 

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戦乙女の槍 内藤渉

あらすじ
剣の国オファーン、争いの森と呼ばれるターシャスの森近くの村、マオダ村にマイリーの神官戦士フィーンは訪れていた。

彼女の妹リルが攫われ、彼女をさらったと思われる男を探し、マオダ村にやってきたのだ。

食堂でフィーンが聞き込みをしていると、レジュアと名乗る村の青年が、近くの洞窟でそれらしい男を見かけたという。

リルをさらった男は闇司祭かもしれず、もしそうならばリルは生贄として殺されてしまうだろう。

フィーンはレジュアに詳しく話を聞くが、彼は確信が持てないとはっきりしない。

思わず声を荒げそうになったフィーンに、食堂の店主が実際に洞窟に行って確認することを提案する。

フィーンは洞窟に向かうことにして、案内を買って出たレジュアと共に、その洞窟「忌まわしき洞」に向かうのだった。

感想
ヴァルキリーの精霊魔法のヴァルキリージャベリンは、とても強力な魔法です。
実際のゲームでは一撃で強敵を倒し、戦いの流れを変えることもあるほどです。

このお話はそんな勇気の精霊ヴァルキリーがテーマになっています。
光り輝く甲冑を纏い、槍と盾を持った美しい女戦士。

レジュアが惹かれるのもわかる気がします。

ファイナル・バウト 水上暁

あらすじ
ロマールの郊外にある小さなラーダ神殿、神官であるルウは母であり司祭でもあるルディアと共に、けが人の治療に当たっていた。
そこに一人の男が訪ねてくる。

彼の名はハン、二メートル近い身長の筋骨たくましい青年だ。
一月ほど前、膝を痛めて神殿を訪れた際、治療に当たったルウに一目ぼれしたらしい。

今日は二人で芝居を見に行く予定だ。

二人で出かけた芝居小屋で、ルウはハンが格闘士であることを知ってしまう。
ハンの事を好ましく思っていたルウだったが、ラーダの神官として無駄な争いに身を投じる格闘士を認めることが出来ない。

ハンに対する好意と神の教えの間で悩むルウを、ハンは自分の仕事を見て欲しいと闘技場に誘う。

闘技場では次のハンの対戦相手ガウルの試合が行われていた。
凄惨な試合を見て、気を失ったルウをハンは神殿に送り届ける。

ハンは神殿でルディアに自分が格闘士になったいきさつと、今日見た試合は自分たちが作り上げてきたものとは違うことを説明する。

ハンたちは無意味に相手を傷つけることはせず、力と技で競い合うことを目標にしていた。

ガウルの行為は今まで培ってきたものを冒涜する行いで、決して許すことは出来ない。

ハンはルウに試合を見に来て欲しいと、ルディアに伝言を残し神殿を後にした。

感想
ソード・ワールドではあまりない、格闘をテーマにした作品です。
ハンたちが行っているのは、所謂プロレスに近いものです。

格闘士同士の技の競い合いで観客は熱狂しているのですが、そこにガウルという相手を再起不能にすることを躊躇いなく行う男が現れます。

彼の行為が受け入れられれば、闘技場は殺し合いの場になってしまうでしょう。

ハンの格闘への熱い思いと、ルウとの愛の行方が大変楽しめました。

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黒い肌の軍師 笠原優介

あらすじ
城塞都市プリシス、現在この街は軍事国家ロードリルの侵攻に曝されていた。

二年前までは指し手ルキアルという天才軍師が居たおかげで、ロードリル軍を打ち払えていた。

しかし彼がロマールに行ったことで戦いによる被害は大きくなっていた。

冒険者の店「葦の足」に一人の男が訪れた。
彼の名はイッシュ、エルフの特徴である尖った耳を持った褐色の肌の青年である。

長くプリシスから離れていたが、ロードリルが一万の軍勢を率い侵攻してくる情報をつかんだため、今回久しく訪れていなかったプリシスに返ってきたのだ。

イッシュは昔の仲間であり、現在はプリシス騎士団の実質的な指揮官であるアメリスに情報を伝え、ロードリル軍の侵攻を阻むべく行動を開始した。

感想
主人公であるイッシュはその容貌から、ダークエルフに間違えられ様々な迫害を受けた過去をもちます。

そんな彼がプリシスを守ろうとしたのは、彼を愛してくれたかつての仲間ラリアンや、彼女の娘ミリアのためでした。

ソード・ワールド小説ではあまりない、戦争を題材にした作品です。

戦記物が好きな方にはお勧めです。

INTERMISSION 瀧沢信

あらすじ
東の大国オラン、酒場兼宿屋の冒険者の店と呼ばれる店であるパーティが酒を酌み交わしていた。

戦士のカウル、盗賊のシード、精霊使いのフェリム、マーファーの神官戦士レマナ、魔術師のアルサルティ。

彼ら五人はパーティを組んだばかりの駆け出しだ。

初めての冒険を無事に終え、祝杯を上げようと集まったのだが、貴族出身のカウルと盗賊のシードはそりが合わず事あるごとに諍いを起こしていた。

今回も二人は言い争いを始め、挙句殴り合いの乱闘を起こしてしまった。

彼らの行動に魔術師のアルサルティは憤慨し、祝杯を挙げることなく部屋に引き上げてしまう。

感想
駆け出し冒険者の彼らが、それぞれの過去を明かすことで、少しずつまとまり仲間になっていきます。

コンピューターゲームではあまり語られない、冒険初期の人間関係が描かれています。

剣の主 光理せらふ

あらすじ
ラムリアース王国の王都ライナスにほど近いファムの町。
そのファムの町の居酒屋で、一人の剣士が地図を片手に飲んでいた。

剣士の名はキュクレイン、彼は魔剣を求め地図にあるデルク山の遺跡を目指していた。

そんなキュクレインの耳に争う声が聞こえてくる。
男の声ともう一つは少年のようだ。

厄介ごとに巻き込まれるのを嫌ったキュクレインは、その場を立ち去ろうとするが、男が剣を抜いたことでつい介入してしまう。

少年だと思っていた声の主は黒い髪の美しい少女だった。

冒険者の男を退けたキュクレインは、彼女の歯に衣を着せぬ言動と、世間知らずな様子から、どこかの神殿の巫女であろうと推測し、エレノアと名乗る少女を、父の元へ送り届けることにする。

感想
キュクレインは父の仇を討つため、ドレイクに通用する魔剣を求め遺跡を探しています。

この物語では魔剣の活躍は見られませんが、彼が魔剣を振るう姿を読んでみたいところです。

夢への街道 奴賀照康

あらすじ
エレミアの行商人ナージムは途方にくれていた。
隣国ザインの内戦に巻き込まれ、積み荷のほとんどを失ってしまったのだ。

彼は積み荷と一緒に、商人と最も大切な信用も失ってしまったのだ。

ナージムには大商人ラグワートに借金があり、その返済日が迫っていた。
何とか仕事を得ようと奔走したナージムだったが、それも無駄に終わった。

返済日に現れたラグワートは、ナージムから店と荷馬車を奪い去っていった。

それから数か月後、酒場で飲んだくれていたナージムの元に、ラグワートが現れる。

彼は仕事を引き受けてくれれば、店と荷馬車を返そうと持ち掛ける。

商売の夢を捨てきれないナージムは、この提案に乗るのだった。

感想
ナージムは荷馬車と店を失っても、商業許可証だけは手放しませんでした。
彼にとって商売で成功することが夢であり、生きる理由だったからでしょう。

ナージムの夢を追いかけ続ける姿は、読んでいて勇気をもらえます。

まとめ

今回の作品集は一般方からの投稿から選ばれたものでした。

プロの作家陣書いたものと毛色が異なり、普段焦点が当てられない題材が取り上げられていて、楽しく読むことが出来ました。

表題作、「戦乙女の槍」を執筆した内藤渉さんの別の作品「遅れてきた鍵」は短編集「まぼろしの女」に収録されています。気になった方は、こちらもチェックしてみてください。

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