ふたりのラビリンス
安田均 編
水野良 他
イラスト 米田仁士
富士見ファンタジア文庫
テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」の世界フォーセリアを舞台にした短編集、第三作目。
三作目はモンスターをテーマにして書かれています。
この短編集では3作品が収録されています。
各話のあらすじや感想など
ふたりの迷宮(ラビリンス) 羽根頭冒険譚2 水野良
ライスたち羽根頭は剣の国オーファンから、南のロマールへ向かおうとターシャスの森にいた。
暗黒神ファラリスの噂の多いファンドリアの王都さけるため、街道を外れ森を抜け湖沿いに南下し、レムリアの街を目指したのだが、森の中で道に迷ってしまったのだ。
森の中ハーフエルフのリーライナが古代王国の遺跡を見つける。
冒険者にとって手付かずの遺跡は宝の山だ。罠が生きていたり番人が居たりと危険は多いが、見返りも期待できる。
ライスはあまり乗り気ではなかったのだが、リーライナと魔術師のチャペルに押され、遺跡に足を踏み入れた。
遺跡に乗り込んだライスたちだが、彼らのパーティには盗賊の技術を持つものがいないため閉じ込められてしまう。
脱出の手がかりを求めて遺跡を探索していたライスたちは、遺跡の中で一体のレイス(生霊)に出会う。
レイスのディアネーはこの遺跡で、恋人のジェフメルをずっと待っているというのだ。
彼女はなぜジェフメルが現れなかったのか真相が知りたいとライスたちに願った。
ディアネーの願いを叶えるためライスたちは遺跡の調査を再び始めるのだった。
感想
羽根頭の物語その第二話目です。
彼らのパーティには遺跡探索に必須といえる盗賊がいません。
これはかなり致命的で罠の感知も出来ませんし、鍵のかかった扉や宝箱を開けることも出来ません。
普通のパーティなら鍵をこじ開け遺跡から脱出してお話は終わりでしょう。
彼らは盗賊が居ないことによってディアネーと出会い、真実を見つけだすことになります。
惨劇は突然に 高井信
あらすじ
アレクラスト大陸中部、エストン山脈中腹にある小さな村ターロンが舞台。
村の青年サリドは酒場で一日の疲れを癒していた。
その日は冒険者であるゼムスという男が村を訪れており、彼の話を聞こうと多くの村人が酒場を訪れていた。
彼の話で盛り上がる村人たちを横目で見ながら、サリドは内心面白くない。
サリドは戦士で村では一番の使い手だと思っている。
そんな折、酒場の扉が乱暴に開かれドワーフの中年女性バーナが駆け込んでくる。
彼女の息子ドルムが何者かに襲われ怪我を負ったと言うのだ。
バーナの夫であるダマトの回復魔法でドルムは一命をとりとめた。
ドルムの話を聞くと、どうやら森の中でゴリラらしきものに襲われたらしい。
話を聞き村長であるローガスは、冒険者のゼムスにゴリラ退治を依頼する。
サリドは戦士であるプライドから自分が退治すると宣言する。
二人のやり取りをみていた村長はどちらが先に倒すかで賭けをしようと提案。
娯楽の少ない村だ。村人は大いに盛り上がり提案は受け入れられた。
翌朝、サリドはゴリラ退治のため昨夜ドルムが襲われたという森に向かうのだった。
感想
彼らが退治しようとしているゴリラはもちろん普通のゴリラではありません。
このお話はホラー映画の導入のような物語です。
村が最終的にどうなったのかまでは描かれていませんが、続きが気になるところです。
緑の都市 下村家恵子
あらすじ
オランの北にあるミード湖の更に北、エストン山脈の深き森でナリルは一人探索していた。
彼はこの森のどこかからいけるという古代魔法王国の精霊都市をさがしているのだ。
祖父が吟遊詩人から聞いた話で、吟遊詩人はおとぎ話のように語っていたが、本当にあるなら見つける価値はあると祖父はずっと探索を続けていた。しかし祖父は足に怪我を負いついに見つけ出すことは出来なかった。
ナリルはそんな祖父の意思を継ぎ都市を見つけたいと願っていた。
探索の途中、ナリルは野宿をしているところをゴブリンに襲われる。
彼を救ったのはリザンと名乗る魔法使いの青年だった。
彼らは二人で協力することにして都市の入り口を探す、やがておとぎ話と同じように空の道を通り、密林のなかから大きく伸びた大樹の頂上にある精霊都市へたどり着く。
都市に着いた彼らを出迎えたのは牡鹿に乗った少女だった。
彼女はここは精霊都市アーティスで二人を歓迎するという。
少女に案内され二人は街にはいるのだった。
感想
緑の溢れる美しい精霊都市の真の姿が物語をすすめると少しづづ見えてきます。
美しさの裏に隠されたおぞましい真実とは。
この物語で登場するリザンは長編小説「死せる神の島」で活躍するキャラクターです。
上記の小説から少しあとの話で「死せる神の島」を読んだ方はより楽しめるのではないでしょうか。
まとめ
今回の短編集はモンスターをテーマに書かれており、ソード・ワールドにおけるモンスターの生体・特徴等が細かく描写されています。
モンスターはファンタジー小説において多くは討伐される存在ですが、彼らなくしては物語は生まれません。
そういう意味では大変重要な要素といえるでしょう。
ソード・ワールド短編集 ふたりのラビリンス (富士見ファンタジア文庫)[Kindle版]