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六道先生の原稿は順調に遅れています 第一巻 登場人物・あらすじ・感想

投稿日:2020年1月30日 更新日:

万年筆
六道先生の原稿は順調に遅れています 1

著:峰守ひろかず
画:榊空也
出版社:KDOKAWA/富士見L文庫

中堅出版社に勤める滝川詠見(たきがわ えみ)は、ベテラン作家六道琮馬(ろくどう そうま)の担当を編集長から命じられます。
大役に尻込みする詠見でしたが、最近起きた大御所とのトラブルの件を持ち出され渋々琮馬の担当を引き受ける事になるのでした。

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登場人物

滝川詠見(たきがわ えみ)
文芸編集者
キリっとした眉と尖った鼻と顎を持つ二十六歳の女性。
過去に自分でも小説を書いていたが、才能に見切りをつけ編集者の道を選んだ。
創作物やそれに関わる者に対してこだわりを持っており、それが大御所を殴る事態を招いた。

六道琮馬(ろくどう そうま)
四十年以上活動しているベテラン作家
見た目は十九歳前後の青年。
身長は160センチ程で男性としては小柄。
童顔で柔らかそうなくせ毛の髪の和服男子。

その正体は人の念と土地にまつわる話が凝り固まった「物ノ気」を喰う妖怪。
六道の話では「物ノ気」は妖怪の幼生体の様なモノらしい。

執筆スタイルは原稿用紙に万年筆で手書き。
字は綺麗でとても読みやすいらしい。

立花(たちばな)
ベテラン編集者
琮馬の担当だったが突然目を覚まさなくなり、意識不明まま入院中。
詠見の大先輩に当たり、面倒見のいい男。
彼が倒れた為、臨時で詠見が六道を担当する事になった。

錦橋薫陶(にしきばし くんとう)
文壇の重鎮
豪快さを売りにしている作家。
詠見に対してセクハラをして思いっきり殴られる。

勝呂完太郎(すぐろ かんたろう)
大手出版社のやり手編集者
数々のヒット作を飛ばす業界人を地で行く人物。
作品の内容では無く、話題性を重視しプロモーションにより佳作を名作に仕立て上げる。

加賀見賢示(かがみ けんじ)
六道の古い知り合い
二十代後半の大柄で格闘家のような雰囲気の男。
正体は全てを見通す雲外鏡。
六道とは妖怪の存在についてのスタンスの違いで対立している。

冒頭あらすじ

中堅出版社「千鳥社」に勤める滝川詠見は、ようやく手に入れた文芸編集者という夢に終わりが告げられるのを覚悟しつつ待っていた。

文壇の重鎮、錦橋薫陶。
千鳥社としては彼には初めて書いてもらう事になる。
その錦橋との顔見せを兼ねた接待の席で詠見は、彼のセクハラに耐え兼ね殴ってしまったのだ。
当然話は流れ、現在の詠見は移動を告げられるのを待つ身という訳だ。

その死刑宣告を待つ詠見を編集長の山城が呼ぶ。
終わりを覚悟していた詠見に山城が言ったのは、ベテラン作家の六道琮馬を担当しろという命令だった。

六道は四十年以上執筆活動を続けるベテラン作家で、庶民の苦しみと癒しを書き続け根強いファンを持つ人物だ。
以前は別の出版社からも本を出していたが、近年は千鳥社からしか出しておらず、業界中堅の千鳥社にとっては有難い作家だった。

最近は新作を出していないその六道に、新作の打診をしろと言うのが山城の指示だった。
これまで六道の担当はベテランの立花が担っていたが、彼は現在意識不明で入院中。

問題を起こしたばかりの詠見は山城にその事を訴えるが、逆に担当する筈だった錦橋の件が消えた事で比較的暇な事を指摘される。
現在、立花が抜けた穴を埋める為、編集部はてんてこ舞い。
確かに若干だが手が空いているのは詠見しかいない。

渋々、担当の話を受けた詠見は電話も繋がらず、メアドも分からないという山城の言葉に困惑しつつ、六道が住むという市ヶ谷の家を訪ねる事にした。

向かった先、オフィス街の喧騒を離れた住宅街の一画。
古風な日本家屋の玄関、その玄関脇に取り付けられた呼び鈴のボタンを押す。

ピンポーンと音が鳴り響き待つ事しばし、玄関の戸を開けたのは和服を着た年若い小柄な青年だった。

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感想

六道先生は土地に根付いた話に集まる人の想いや念が凝り固まった存在「物ノ気」を糧に生きる妖怪です。

このお話では「物ノ気」は曰く付きの場所を依り代にして人の想いが集まり発生する様です。

作品は古典から近年の都市伝説まで、様々な怪談作品をモチーフにして作られています。
今回は姿見ずの橋、こんな晩、池袋の女、夜毎の亡妻、黒坊主の五作が収録されています。

「こんな晩」は「六部殺し」という話とほぼ同じ展開です。
怪談には状況を変えて様々な亜種が生まれるようで、別の話が融合しオチが変わっていたりする物もあります。
そんな物を並べて読むのも面白いかもしれません。

まとめ

六道先生の正体については本でご確認頂きたいです。
私は彼の正体の妖怪について、とても意外な印象を受けました。
作品としては峰守さんの他の作品と同じく、オカルトミステリーとなっています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者の峰守ひろかずさんのアカウントはこちら

※イメージはpixabayのCharles Risenによる画像です。
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