小説 小説短編

道士リジィオ 夢みる佳人

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月道士リジィオ 夢みる佳人
著:冴木忍
イラスト:鶴田謙二
富士見ファンタジア文庫

類稀なる美貌と強力な道士の力、そして莫大な借金を背負った男。リジィオの冒険譚。

 

各話のあらすじと感想

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夢みる佳人

あらすじ
行き倒れている所を助けてもらったリジィオは、恩返しのため彼を助けた女性、アリアズナの頼みを聞くことにした。

彼女は、死んで墓に埋葬された夫が生きていて、助けを求めているから掘り出して欲しいというものだった。
半信半疑のまま、墓を掘り返すと彼女の夫、エンヌドは生きていた。

恐らく仮死状態のまま埋葬されたのだろう。
そう結論付け、屋敷を出ようとすると、彼女の叔父、オズボーンが訪ねて来た。

オズボーンはリジィオに余計な事をと言い放ち、屋敷の奥へ消えた。
言い争う声が聞こえる、慌てて駆け付けると、オズボーンがエンヌドを殺そうとして、アリアズナに止められていた。

彼を止め、術でエンヌドを守り、その場を収めるとリジィオは、オズボーンから話を聞いた。
オズボーンはリジィオにエンヌドを殺してくれと頼んだ。

感想
エンヌドが生きていた理由、それはアリアズナの狂的な復讐心から来るものでした。
心の壊れたアリアズナが、痛々しく、とても悲しいお話でした。

君のための子守歌

あらすじ
スティン達を撒き、仕事の礼金を手に入れ、リジィオは珍しく晴れやかな気持ちで街を歩いていた。

その街でリジィオは一人の少女と出会う。
六、七歳に見えるその少女は、彼を雇いたいと口にした。
少女に対する街の人々の反応は、彼女を恐れ避けているようだった。

その事を不審に感じつつ、リジィオは少女に押し切られる形で、彼女の住む街外れの屋敷を訪れた。

彼女の名はルピア、領主の娘でこの屋敷で一人で暮らしているという。
召使はおらず、食事を作りに通いで女性が来る以外はルピアは一人ぼっちらしい。

こんな子供を一人で生活させている事に憤りつつ、二人で彼女の部屋を目指す。
床のタイルを踏んだリジィオの頭上に、突然槍が降り注いだ。

咄嗟に避け槍を一本つかみ取り、降り注ぐ槍を叩き落す。
聞けば罠を仕掛けたのはルピアだという。
それに対し文句を言うと、罠は自分の身を守るためだと彼女は答えた。

命を狙われているのかと問うリジィオに、ルピアは不思議な影が現れるのだと語った。

感想
ルピアは所謂天才で、書物を読むだけで高度な数学を理解し、街の人や両親からも、その賢さゆえに疎まれていました。
そして、彼女自身もその事に気付いています。

彼女の両親は、ルピアを賢しいと忌避し、理想と違う彼女の事を拒絶しました。

物語の終わりは、彼女を理解する伯母の養子になるという、ルピアの幸せな未来を感じさせるものでした。

やさしく歌って……

あらすじ
ある春の日、スティンに頼まれた買い物をしていたリジィオとシザリオンは、金髪の美女に呼び止められた。

親し気に女はリジィオに話しかけるが、彼は覚えがないようだ。
その後、女が耳打ちするとリジィオは顔色を変え、シザリオンに口止めして、その女と一緒に去って行った。

納得いかないシザリオンは、宿にいたスティンとムスターファにその事を話してしまう。
宿に帰って来たリジィオに三人で詰め寄るが、彼は関係ないと何も答えなかった。

スティンとムスターファはリジィオの素行調査を始め、尾行したムスターファによると、リジィオは一日中、女と一緒にいたという。

思春期のシザリオンには、それが許せず宿をとびだし、訪れた公園で仲睦まじい様子の二人を目撃してしまった。
シザリオンの不満の声に男の声が重なった。

それは以前、冬の女王の依頼の時に居た、魔法使いのサイラスだった。
彼は金髪美女のエルビラに惚れており、それを邪魔したリジィオに決闘を申し込んだ。

決闘を申し込まれたことで、リジィオはエルビラに苦情を言っている。
どういう事かシザリオンが問いただしていると、おそらく隠れて見ていたのであろう、スティンとムスターファも顔を見せた。

リジィオは観念したように、女性は兄弟子だと話した。

感想
リジィオの兄弟子エルビラは、かつてグレアムという名前のれっきとした男でした。
一度死に、女としてよみがえったと彼は語ります。

彼はシザリオンにだけ、自分がなぜ女になったのかを話します。
秘密を守るという道士の辛さを、初めて理解したシザリオンが少し成長した事を感じるエピソードでした。

月の彼方の道

あらすじ
リジィオは困っていた。
ある人物に依頼され、彼の部屋にはその依頼料として、金細工の壺や皿が山のように積まれていた。

ニセモノではないし、前払いで依頼料としては破格なのだが、依頼主が問題だった。
尊大で傲慢、貴族の選民意識に凝り固まった子供。

それだけならば、あまり相手にしたくないが、借金のある身としては贅沢は言えない。
我慢して依頼をこなせばいい話だ。

問題はその依頼主が、幽霊という事だった。
彼の名はアーネスト、この地域の名門貴族の息子で、依頼は死んだ自分の体を探す事と、自分を殺した犯人を捜して欲しいというものだった。

感想
アーネストは、かなり傲慢な性格で、その所為で周囲の人間から煙たがられていました。
原因は、教育と彼の行動を注意する者が、誰もいなかったからでした。

彼は死んでから、自分がどう思われていたのかを知り、怒り悲しみ、何故生きている間に、諫めてくれなかったのかと嘆きます。

人の死に多く関わる道士であるリジィオは、彼のように死んでから生の尊さを知る者が多いと、作中で語っています。

生きている時間は有限で、間違う事もあるけれど、後悔の無いように生きたい。
アーネストの事を思うとそう感じます。

空の石 海の虹

あらすじ
スティンが取って来た幽霊船退治の仕事を、承諾もないまま任されたリジィオは、幽霊船は退治出来たものの、相手の起こした嵐に巻き込まれ、海を漂っていた。

やがてたどり着いた島で、彼は自分と同じ古代神人の血を引くルーチェンという少年と出会う。
ルーチェンは島に一緒に来た仲間二人と、リジィオを引き合わせこの島に来た目的を語った。

彼は以前リジィオが壊した、偽りの楽園を作った古代神人の末裔を名乗る組織「ナーカル」に奪われた彼の村の宝を取り戻すためこの島に来たという。

ルーチェンの村は、代々古代神人の言い伝えを受け継いでおり、リジィオのように先祖返り的に、力を受け継いだ者とは違い、様々な伝承を知っていた。

この島は「死の島」と呼ばれており、奪われた村の宝「覇王の石」がこの島に戻った時、世界が動くと石には記されていたそうだ。

ナーカルは必ずここに来ると予想して、この島に上陸したのだが、まだ盗んだ者は見つけられていないらしい。
どうやら島には結界が張られており、力が制限されてしまうようだ。

とんでもないことに巻き込まれた。
リジィオはそう思い、眉間にしわを寄せた。

感想
古代神人の遺産を巡るお話でした。
この話では、リジィオの封印が解けその力の一端が垣間見えます。

古代神人の力があれば、借金などすぐ返せそうですが、そうしないのも彼の良い所かなとも感じます。

まとめ

借金に喘ぐ凄腕の道士リジィオの冒険譚、その第二作目です。
今回はリジィオの兄弟子エルビラや、古代神人の末裔ルーチェンなど今後、再登場する人物が登場しました。
また、リジィオの封印された力、古代神人の姿も描かれました。

アリアズナやアーネストのエピソードのように、悲しい結末を迎えるお話の中で、ルピアの物語は気持ちが軽くなる気がします。

お読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのscartmyartによる画像です。
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