小説 小説長編

海賊モア船長の遍歴 冒頭部分あらすじ・感想

投稿日:2018年9月30日 更新日:

海賊船
海賊モア船長の遍歴
多島斗志之
中公文庫

大航海時代、インド洋やカリブ海で暴れまわった海賊たち。
その中の一人、数奇な運命をたどり海賊船「アドヴェンチャー・ギャレー」の船長となった男、ジェームス・モアの物語。

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あらすじ1

イギリス国王ウィリアム三世から、海賊討伐の委任状を授かったキッド船長は武装船「アドヴェンチャー・ギャレー」を手に入れロンドンを出港した。

しかしテムズ川を出たところで英国軍に停船を命じられ雇い入れた水夫の約半数七十名近くを強制徴募されてしまう。

しかたなくイギリス南西海岸にあるプリマスに寄港したアドヴェンチャー・ギャレーの船長室でキッド船長は陰気に黙り込んでいた。
そこに中年水夫の大樽が、一人の男を連れてくる。

大樽の話では、男は東インド会社で航海士をしていたらしい。
名前はジェームス・モア。

しかしキッド船長は男を胡散臭そうに見た。
それも無理はない、男は薄汚れた服を着て、目は濁り、髪も髭も伸び放題。
キッド船長に言わせれば、濡れ雑巾。

本来なら雇わないが今は乗員が足りない。
背に腹は代えられず、キッド船長はモアを乗組員に加えた。

その後アメリカ、ニューヨークに着いたアドヴェンチャー・ギャレーは乗員を補充し、マデイラ諸島、ヴェルデ岬諸島を経由しアフリカ南端の喜望峰へ向かった。

あらすじ2

喜望峰への航海の最中、しけに襲われたアドヴェンチャー・ギャレーを救ったのはモアだった。
彼はシーアンカーを使うことを提案し、見事しけを乗り切ったのだ。

その後、しけで重傷を負った航海士にかわり、モアが航海士を務めることになった。

航海を続けるアドヴェンチャー・ギャレーはイギリス軍のウォーレン艦隊と遭遇する。
嵐により帆布を失ったアドヴェンチャー・ギャレーはウォーレン艦隊に委任状を見せ、援助協力を要請する。
しかし交渉は決裂し翌朝の出頭命令を無視し逃亡する。

ウォーレン艦隊を避けるため、喜望峰のケープタウンに寄港せず無寄港でインド洋を目指すことを決めたキッド船長は、ウォーレン艦隊の目的地であるマダガスカルも避け、コロモ群島に停泊した。

コロモ群島では熱帯特有の熱病により、乗組員の五十名が死んだ。
モアはキッド船長に別の場所に移ることを進言するが、激怒され航海士から解任される。

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あらすじ3

その後、キッド船長は方針を変更し海賊船だけでなく、一般の輸送船も見かけ次第襲うことを乗員に宣言する。
海賊討伐船が海賊船になった瞬間だった。

アラビア沖でムーア船団を発見したアドヴェンチャー・ギャレーは襲撃をかけるが、イギリスの軍艦セプターに阻まれ失敗する。
その後、ボンベイ沖でムーア人の乗るケッチ船の襲撃したアドヴェンチャー・ギャレーは初めての海賊行為に成功した。

インド洋西海岸沖でポルトガルの小型軍艦に遭遇したアドヴェンチャー・ギャレーは何とか返り討ちにするものの多数の負傷者を出してしまう。
船内ではキッド船長に対する不満が膨らんでいた。

キッド船長の怒りに触れた砲術長が死亡したり、不運に見舞われたアドヴェンチャー・ギャレーだったが、ムーア人の船「メイドゥン」を拿捕し、旗下に加えさらにアルメニア人商人の船「クェダ・マーチャント」を手に入れた。

クェダ・マーチャントから収穫を手に入れたキッド船長は、船員に金を分配し、クェダ・マーチャントに乗りイギリスへ帰ることにした。

モアはキッド船長を説得したが、聞き入れられずアドヴェンチャー・ギャレーをもらい受け、自らが船長として海賊を続けることを決めるのだった。

感想

十七世紀、インド洋や東南アジアで猛威を振るっていた海賊たちの物語です。

海賊と言うと荒くれもの無法者を想像しますが、今作の主人公ジェームス・モアは理性的な人物として描かれています。

元々東インド会社で航海士をしていたモアは、初航海で海賊に襲われ命はとりとめますが、助かったことで内通を疑われ解雇されます。
その後ロンドンに戻りますが、ロンドンでは妻の失踪、その後死を知らされます。

鬱々とした日々を送っていたモアを、かつての仲間大樽が再び海に連れ出します。

彼はキッド船長の下で航海士として働き、やがて自らが船長として海賊船アドヴェンチャー・ギャレーを率いることになります。

その後、剣の達人バロンや鍛冶屋のプラトン、泳ぎの名人イルカ
最高齢の制帆手、爺さま等の仲間を加えインド洋を中心に海賊として活動していきます。

この時代の航海術や海賊生活の様子が、生き生きと描かれ冒険心を掻き立てられます。

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