小説 小説短編

瞳輝ける夜 ソード・ワールド短編集 各話冒頭部分あらすじ・感想

投稿日:2018年9月16日 更新日:

街道
瞳輝ける夜

安田均 編
友野詳 他
イラスト 米田仁士
富士見ファンタジア文庫

テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」の世界フォーセリアを舞台にした短編集、第八作目。

今回はアレクラスト大陸を東西に貫く「自由人たちの街道」をテーマにして書かれています。

この短編集では4作品が収録されています。

 

各話のあらすじや感想など 

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空に消えた髪飾り 白井英

あらすじ
アレクラスト大陸、最大の国オラン、そのオランで重要な役割を担っていたノルン卿という貴族が殺害された。

「車輪の騎士団」の騎士であるアーヴェルはノルン卿殺害の真相の究明を命じられる。

プリシスは軍事国家ロードリルと戦争状態にある、これまでは指し手ルキアルという天才的な軍師がおり、ロードリルの侵略をことごとくはねのけていたのだが、ルキアルがロマールの招きを受け、プリシスを去ったことで、大幅に弱体化してしまったのだ。

オランとしては直接介入は避け、秘密裏に援助とするという形でプリシスに協力していた。
その指揮を執っていたのノルン卿だ。

ノルン卿殺害の実行犯は、卿の存在を邪魔に思った、ロードリルから差し向けられた刺客であると考えられた。

アーヴェルはノルン卿の館で愛妾リーマが卿が殺害された後、館から姿を消したことを知り、彼女に話を聞くべく行方を追うのだった。

感想
スーパーファミコンで発売された、ソード・ワールドSFC2のプロローグ的な物語です。

ゲームではアーヴェルは国王カイアルタードVII世から、自由人パルマーの手記を手に入れることを命じられます。
このお話では国王がアーヴェルに、手記の入手を命じることになった経緯が語られます。

短編のみでも面白いのですが、小説「自由人の嘆き」をお読みいただければより楽しむことが出来るでしょう。

父と子の剣 中川政博

あらすじ
職人たちの王国エレミア、バート達は義父の形見である剣の修繕のため鍛冶屋を訪れていた。
その鍛冶屋で店主の息子であり見習のナットという青年と出会う。

彼の態度にバートは怒りを覚えるが、仲間のシラムル達になだめられ矛を収める。
ナットに代わり対応してくれたのは店主であるハルドだった。
彼に剣の修繕を頼み、工房内を見学しつつ話を聞いているとナットの不機嫌の理由も判明した。

ナットが打った剣はまだ店では販売しておらず、そのことで父であり師匠でもあるハルドはうまくいっていないらしい。
さらに店にインプが出て、ナットの幼馴染の女の子が怪我をして帰ってしまったらしく、余計に荒れていたようだ。

バート達は泊っている宿をハルドに伝え、手伝えることがあれば力になると約束し店を後にした。
翌日、冒険者の店の紹介で、魔術師ギルド訪れていたバート達は、ルスと名乗る魔術師から、弟子を探して欲しいと依頼される。

彼の弟子は暗黒神の教えに手を染め、さらに魔界の住人であるデーモンを呼び出そうとしているらしい。

現在エレミアでは行方不明事件が多発しており、そのことも依頼とは無関係ではないだろう。

バート達は弟子の行方を追い、調査を開始した。

感想
小説「死せる神の島」のメインキャラクターであるバート、シラムル、プラムたちのお話です。
上記小説の事件から数か月後の出来事で、バートの義理の弟であるリザンの事も少し語られます。

ジェライラの鎧の時もそうでしたが、武具や鍛冶にまつわる話は好きでワクワクします。

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いわれなき濡れ衣 高井信

あらすじ
前回ロマールで、闘技場見物を無事果たしたデュダとリュークは、一緒に来ていたゲラン達とはぐれ、仕方なく二人で故郷であるピムラに向かっていた。

ザインの街道沿いの村、「ルーデン村」で一夜の宿を求めたデュダたちは、酒場兼宿屋のマーファーの恵み亭で、久しぶりの酒を楽しんだ。

酔いが回り気をよくしたデュダは、自分がドワーフの賢者であり、これまでどんな事件を解決したかを店主に話す。

自分の活躍を大いに語り満足したデュダは、旅の疲れもあり、宿のベッドで死んだように眠った。

翌朝、デュダたちは宿の主人ジャペル達にたたき起こされた。
彼らの主張では、デュダはリンガー村のスタイナーから宝石をだまし取った犯人だというのだ。

詳しく話を聞くと、バニマールというドワーフが自分は賢者であり、リンガー村で起きている幽霊騒動の解決を買って出たらしい、しかし報酬である宝石を受け取って、そのまま行方をくらましたのだ。

ジャペル達はドワーフの賢者等という珍しい存在が、何人もいるわけがないと考え、デュダ達をバニマールと決めつけ拘束した。

デュダは自分たちの無実を証明するため、リュークを人質としてルーデン村に残しリンガー村へ向かった。

感想
迷探偵デュダと助手リュークの物語、第3弾。
今回はリュークが人質になってしまい、デュダ一人で事件解決に挑みます。

ザインは伝統的に魔法に対して嫌う習慣があり、リュークが精霊魔法の使い手であることが災いして、濡れ衣を着せられる結果になってしまいました。

物語の味付けとして、その土地の文化風土を盛り込む事は、大変面白く感じました。

瞳輝ける夜 友野詳

あらすじ
芸術の都、ベルダインで彫刻家である私は、作品の素材を求め街をさまよっていた。
下町の酒場で偶然それを目にした時、引き込まれた。

それは女性の首の像だった。
素材はよくわからない、大理石ではないしその他の彫刻によく使われる材でもなさそうだ。

私は像の持ち主である冒険者であろう男に声をかけた。

男は私の質問には答える気は無いようだった。
私は諦められず像を手に取って見せてくれるだけでいい、相応の謝礼は払うと言ったのだがそれが相手の逆鱗に触れたようだ。

私は咄嗟に昔、友人の吟遊詩人から聞いた呪歌を口ずさんだ。

すると男は驚いた表情をして、首について語りだした。

感想
物語はベルダインで語られますが、舞台はドレックノールです。
盗賊都市ドレックノールの盗賊、その末端の構成員たちのお話でした。

ずっと過去を見ていた男が、これからどんな生き方を選ぶのか、芸術家である私がどんな作品を作り出すのか気になります。

まとめ

今回のテーマは自由人たちの街道でした。

この街道はパルマーを中心とした国家に属さない人々、自由人たちによって作られました。
街道によって人の交流がうまれ、東西の往来も遥かに楽になりました。
しかし良いことばかりではなく、交流によっておこる諍いも生み出します。

小説「自由人の嘆き」では、その事がさらに深く語られます。
気になった方はこちらもお勧めです。

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