紛争でしたら八田まで 4 モーニングKC
著:田素弘
出版社:講談社
三陸データのインド支社の優秀な社員、ディリップ・アグラワル。
年収三十万で暮らせるインドで、彼は一千万近い報酬を得ていました。
しかし、何故か金に困り、会社へ給料の前借りを打診します。
ディリップが金を必要とした理由。
それは彼の過去にありました。
登場人物
ショビット
ディリップの過去を知った事で彼を強請っていた男
短髪で斜視のチンピラ。
バグワットという巨漢の男に借金がある。
ヴィバル・マンジェカール
ディリップの妻、ゾーラの父親
カーストの外の身分、ダリットであったディリップとゾーラの結婚に反対し、ゾーラを連れ戻そうとしている。
杉村
八田の依頼人
日本のバイオベンチャー企業、創和メディカルの社員。
優秀だが抜けた所がある。
M字ハゲで眼鏡で小太りのおじさん。
ビョークのファンで歌が上手い。
エステル
過去に八田と接点があった女性
赤毛のそばかす美人。
あらすじ
ヒンドゥー教におけるカースト制度。
生まれで就ける職が決められ下位の者は蔑まれる身分階級制度。
ディリップはかつてそのカーストから外れた最下級のダリット(不可触民:触れると穢れるとされ差別の対象となっている)と呼ばれる階級だった。
ダリットの仕事は汚物の汲み取り。
傷一つが命取りになる危険な仕事だ。
その過酷な仕事の所為で彼は父以外の家族を亡くしていた。
現在のインドでは憲法によりカースト差別は禁止されている。
しかし、カーストによる差別は根強く残っていた。
そんな社会の中でディリップは制度を利用し大学を卒業、高所得な企業で働きカースト的には上から三番目であるヴァイシャ(市民:商業、農牧、製造業等を担う)であったゾーラと結婚していた。
彼らはディリップの父サンジェイの勧めでヒンドゥー教からイスラム教へ改宗し、カーストから逃れ結婚したのだ。
ディリップが金を必要としていたのは、その事をショビットという男に知られ強請られていた為だった。
ディリップの父、サンジェイが誘拐されたのも、どうやらそのショビットとそのバックにいる者が関係しているようだ。
そう当たりを付けた八田は、送られて来た脅迫目的の写真からゾーラの協力で場所を特定。
北インドのヴァーラーナシーへと向かった。
感想
今回はインド編の後半とアイスランド編の前半が描かれました。
今回、その中でも印象に残ったのはディリップの父、サンジェイの姿でした。
ヒンドゥー教ではカーストにも入っていないダリット。
そのダリットであるサンジェイは、下水に潜り悪臭と不衛生な環境の中、汚物を汲み出す仕事をしていました。
しかし、そんな他者から蔑まれる環境にあっても、彼は誇り高く捻じ曲がる事なく真っすぐに生きていました。
身分制度、貧富の差、学歴の有無。
そんな物で人をはかる事は出来ないのだと、エピソードを読んでいて強く感じました。
エピソードのラスト、車の窓から身を乗り出しディリップに頼る事無く空を見上げ「自分で進む道を選びたい」と言ったサンジェイは最高にカッコ良かったです。
まとめ
次回はアイスランド編の続きから、八田と過去に繋がりのあった女性エステル、そして彼女と関わっているらしいタンザニアの件にも一枚噛んでいた青年も登場しました。
次も色々ありそうです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。