ダンピアのおいしい冒険 2
著:トマトスープ
出版社:イースト・プレス
十七世紀末、南洋(中央・南アメリカ周辺)の海を中心に活動していた私掠船バチェラーズ・ディライト号。
その船長であったジョン・クックを壊血病で失ったディライト号の乗組員たち。
生き残った者達も壊血病に苦しみつつ、ようやく陸に上がったのですが、そこは敵国スペインの支配する土地でした。
登場人物
ジョージ・ダンピア
ダンピアの兄
学問に励むダンピアに農夫として堅実に生きる様に諭す。
それでも海に出たダンピアを疎ましく感じている。
グレース・マーサ
ダンピアの従妹
兄からダンピアを庇い彼を擁護する。
ダンピア自身、彼女の事が気になってはいたが、グレースは海に出たダンピアを待つ事無く別の男と夫婦になった。
エドワード・スプラッグ
王立海軍 青色艦隊提督
ギラついた目の勇猛果敢な提督。
海軍の質の低下を嘆き、戦果を挙げて司令長官となり海軍を作り変えたいと望んでいる。
バジル・リングローズ
かつてダンピアが乗っていたシャープ船長の船にいた通訳
南海の海図を作る事を夢見ている、博識な青年。
各地の動植物を記録しているダンピアと意気投合し、友人となる。
あらすじ
食料の偏りで壊血病を発症したディライト号。
彼らはキャプテンであるジョン・クックを失いながらも、何とか上陸。
枯渇していた食料集めに奔走する。
しかし、ディライト号に同行していたイートン船長は、一等航海士のカウリーがスペインのスパイでは無いかと疑い、食料集めを口実に陸に残る事を提案。
イートン船長の提案は受け入れられデーヴィス達、ダンピアを含むディライト号の面々は船に戻ったが、イートン船長たちはカウリー共に陸に残りそのまま夜を明かす事になった。
だが、逃げ出したスペイン側の捕虜の報告で上陸の際使ったボートは焼かれ、彼らは這う這うの体で浜辺の先にあった岩の小島に逃げ、ディライト号にギリギリで救出される事になった。
命は助かったものの内通を疑われたカウリーは、自分が貿易商組合からの指示で私掠船の調査をしていたことを告白。
結果、カウリーはデーヴィスの怒りを買い船倉に監禁される事となってしまった。
感想
今回はカウリー、そしてイートン船長との別れの他、ダンピアの幼少時代から船乗りとしての過去が詳しく描かれました。
両親の死により学問の道を諦めたダンピアは、船乗り、東インド会社、英国海軍、ジャマイカの農園、中米でのログウッド伐採、私掠船と色んな職業を渡り歩いていたようです。
終盤、意気投合したリングローズとの会話を聞いていると、彼は本当に世界の事が知りたくて海に出たのだなという事を強く感じました。
それと同時に海賊行為に強い忌避感を抱いている事も伝わってきました。
恐らく現代であれば、彼は戦いに関わる事無く、学者として世界中を飛び回って活動していたのでは無いでしょうか。
まとめ
海軍に入ったダンピアは、オランダとの戦いに参加し不衛生な食事に苦しめられ、更に砲撃によって味方が死んでいく所を目撃します。
そんな経験をしても海に拘ったのは、作中の彼の言葉「船が好き」という事に尽きるのでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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