きみは謎解きのマシェリ 3 アクションコミックス
著:糸なつみ
出版社:双葉社
百貨店を営む蒴(さく)の実家。
その吉田家の跡取りである長男の人哉(ひとや)はヨーロッパ視察の最中、列車事故に遭い記憶喪失となってしまった。
蒴は吉田家では家族として扱われていたが、彼は母の連れ子という位置で吉田とは血のつながりは無い。
人哉が記憶を失ったことで蒴を跡継ぎにしてはどうかという話が出るなか、蒴自身にはそのつもりは無かった。
彼は吉田家の平穏を乱すつもりは無く、自分が身を引くことで吉田家の人々、父や兄と本当の家族になることを望んでいた。
そんな蒴の心中を聞いた美津子(みつこ)は彼の願いを叶えるため、列車事故に遭ったという人哉について調査を始め……。
登場人物
エリーザ・ユーペル
パリで活躍するファッションデザイナー
くせ毛ショートに眼鏡の老婦人。
ファッションに興味を持っていた人哉にパリへの切符を渡し、自分の下へ来ないかと誘う。
高峰佐和子(たかみね さわこ)
結婚を間近に控えた女学生
黒髪二つ結びの少女。
実家は吉田百貨店の顧客であり、裕福な家のようだ。
許嫁との結婚を間近に控えている。
栄吉(えいきち)
銀座に遊びに出かけ、友人とはぐれた佐和子が出会った青年
ハンチングに左目の下に二つ黒子のある男。
友人とはぐれた佐和子と共に、銀座の街で佐和子の友人を探した。
佐和子は彼との再会を望み、銀座の街を再び訪れるが……。
九条(くじょう)
新堂の部下の刑事
口が悪く威圧的な新堂と違い、物腰の柔らかな青年。
新堂から預かった封筒を無くし、自分は警察官に向いていないのではと思い悩む。
田辺(たなべ)
洋傘堂(こうもりどう)の薬品部の営業マン
黒髪オールバックで糸目の男性。
やせ薬のポスターをはがした犯人の捜索を銀座探偵事務所に依頼する。
あらすじ
蒴の頼みを聞いた美津子は人哉の部屋を調査。
そこでパリ行きのチケットを発見する。
事故列車は6382号。
一方で人哉が乗っていたと思われる列車はパリ行きの2938号。
つまり人哉は事故には遭遇していない。
結果として、彼の記憶喪失は虚言であると思われた。
なぜ、人哉が大勢の人々に影響を与えるような嘘をついたのか。
それには彼の部屋にあったスーツケースの中に収められていた、大量の本や雑誌、その本に載っていた人物が関係していると考えられた。
エリーザ・ユーペル。
ファッションデザイナーの彼女と人哉の関係。
美津子と蒴はそれを知るだろう吉田家の執事、廣瀬に人哉が乗っていた事故列車の一等車は、外務大臣一行が貸切っていた事実を告げ、彼に真実を語るよう迫った。
感想
今回は吉田家の跡継ぎ、人哉の記憶喪失についてのエピソードから始まり、高峰家のお嬢様、佐和子の恋、気弱な刑事、九条と封筒、やせ薬ポスター事件の始まり等が描かれました。
今回はその中でも、人哉と彼の父とのエピソードが印象に残りました。
人哉は幼いころから服飾の仕事に興味を持っていました。
しかし、彼には吉田百貨店の跡継ぎという将来が決まっており、夢であるファッションデザイナーになることは、諦めざるを得ませんでした。
そこで彼は列車事故を利用し、記憶喪失を装い、跡継ぎ候補から逃れようとしたようです。
人は全員が全員、望みの職業に着ける訳ではありません。
人哉のように、家業を継がねばならないという理由は多くないでしょうが、仮にサラリーマンだったとしても、やりたい仕事が割り振られるかはその会社にもよるでしょう。
ただ、作中、ファッションについて話す時、人哉が見せた笑顔は本当に楽しそうで……。
好きこそ物の上手なれ。
大好きなことを仕事にすることは、それだけで人を幸せにする、贅沢な事なのかもしれないな。
人哉のエピソードを読んでいて、そんな事を思いました。
まとめ
この巻のラスト、やせ薬ポスターについて調べていた美津子は、犯人だろう人物によって倉庫に連れ込まれ……。
探偵としては優秀でも、腕が立つとは言えない美津子。
蒴は彼女を救出出来るのか。
次巻も読むのが楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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