真夏のグレイグー 3 KCデラックス
著：井上智徳
出版社：講談社
元囚人を率いる瀬能（せのう）。
その母親の姿を写し取ったナノマシンが起点となり、「KK-109」は巨大な集合体となった。
防衛大臣の弓月学（ゆみづき まなぶ）は日本全体への影響を考え、ナノマシンを封じ込めるべく娘、理々火（りりか）が筑波にいるにも関わらず総攻撃を決定。
ミサイルが降り注ぐ中、横転したトラックの運転席に挟まれた自衛隊員を助けた真夏（まなつ）は、ナノマシンとミサイルの爆炎から逃れるため、隊員を担ぎ利根川へと飛び込み……。
登場人物
竹原総司（たけはら そうじ）
瀬能が要求した理々火の身代金を運んだ自衛隊員の一人
一等陸士。
ナノマシンから逃れるため、真夏たちをトラックに乗せて移動中、瀬能の母（擬態）に襲われトラックが横転。
運転席の窓に挟まれたところを真夏に救われる。
神尾（かみお）
自衛隊の特殊部隊、第九小隊の隊長
第九小隊は黒いボディーアーマーを装備し、銃器、火炎放射器、忍者刀のような刃物で武装した特殊部隊。
防衛大臣秘書官、敷島（しきしま）の命令で、ナノマシン「KK-109」の開発者である鐘巻士郎（かねまき しろう）博士を探し、筑波へと潜入した。
野上（のがみ）
筑波から逃げ遅れた者の一人
黒髪ロングでハットの青年。
彼らのグループは、ナノマシンの弱点であるクエン酸で周囲を囲んだキャンプ場に立てこもっていた。
リカーブボウで武装している。
なんか生存能力が高そう。
葉月（はづき）
筑波から逃げ遅れた者の一人
栗色ショートの女性。
ごく普通の大学生。
ミナト
筑波から逃げ遅れた者の一人
金髪のうぇーい系インスタグラマー。
葉月とは元カップル。
木戸雄馬（きど ゆうま）
筑波から逃げ遅れた者の一人
黒髪ツーブロックの青年。
大手ゼネコン、木戸グループの御曹司。
大きなキャンピングカーでキャンプ場に来たが、動きが遅く脱出は諦めたようだ。
栞（しおり）
筑波から逃げ遅れた者の一人
黒髪眼鏡でおさげの女性。
物静かな女の子。
野上、葉月、ミナト、木戸、そして栞は昔からの友人同士。
オーナー
キャンプ場のオーナー
白髪に無精ひげの老人。
グレイグー現象の後、キャンプ場の物資の融通で木戸達から暴利をむさぼっていた。
あらすじ
ミサイルの爆発の余波で飛び散った破片で腹部を負傷した自衛隊員を肩に担ぎ、真夏は活路を求め橋から利根川へと身を躍らせた。
その他の面々、つむぎ、綾乃、理々火、そして身代金の受け渡しに筑波に入っていた敷島たちも利根川に飛び込み、何とか救助された。
そんな状況の中、真夏は負傷した隊員を抱え、彼を何とか川岸へと持ち上げた。
ただ、真夏が泳ぎ着いたのは安全な対岸ではなく、筑波側だった。
「しまった……柏は向こう岸だ！」
「う……」
「絶対助けるから我慢してね！ おーい！！」
「マスクを……外してくれ……」
ヒューと辛そうな呼吸音を響かせる隊員から、ガスマスクを外すとそこには口から血を流しながら微笑む顔があった。
「さっきは……ありがとな……助けてくれて」
その様子に涙ぐむ真夏の下に、綾乃が乗った自衛隊のゴムボートが向かう中、真夏の背後にはナノマシンの集合体が迫っていた。
「グレイグーだ、逃げろ！！」
綾乃の声に振り返った真夏にナノマシンの伸ばした触手が迫る。
そんな彼女を負傷した自衛隊員は庇い突き飛ばし、生きろよと手榴弾のピンを噛み絞め抜いた。
感想
今回は冒頭、総攻撃により落ちた利根川橋と柏への脱出から始まり、グレイグーの硬直と真夏を庇い死んだ自衛隊員、竹原、灯篭流し、ナノマシンの開発者、鐘巻博士の捜索と彼の娘、久遠の遺伝子、久遠の姿を擬態したナノマシンと話すため、再び筑波へ、植物への擬態、クエン酸とキャンプ場などが描かれました。
今回はその中でも、真夏に救われ、彼女を助けるために死んだ自衛隊員、竹原総司のエピソードが印象に残りました。
大きな災害や現在も続く疫病による死。
ニュースでは死者の数は発表しても、どこの誰が亡くなったのか報道はしません。
そんな表に出る事のない、数字の一つ一つにもそれぞれの人生があり、家族や友人、仲間がいたはずで……。
そんな人々の死を悼み、灯篭を流した真夏たちの姿がとても印象深かったです。
まとめ
この巻の終盤、再び筑波に潜入した真夏たちはキャンプ場に立てこもる木戸達と出会います。
普段は木々に擬態し、敷島の部下、深沢が発見した電波によるスキャンにも反応しないナノマシン達。
その襲撃を受けた真夏達とキャンプ場の生存者達はどう道を切り開くのか。
次巻も読むのが楽しみです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
