ルート ~雪の王国 目覚める星たち~ 2 KCデラックス
著:秦和生
出版社:講談社
故国である南の国と結び、嫁ぎ先のノルン王国を売り渡そうとしている王妃。
その野望を挫くため、ノルン王国の王子エミルは城の書庫番の少女ルートに外国語の教師を頼む。
現状、エミルの生活は王妃から制限を受けており、最低限の帝王学しか学ばせてもらっていない。
側近のヨアキムと勉強を続けていたが、それにも限界を感じていた。
教師役は誰でもいいわけではない。
王妃とのつながりが無く、北と南の言語に精通している人物。
その出自から現在、国民議員として王妃と対立している兄のラーシュの事もあり、ルートに白羽の矢が立ったのだ。
民を苦しめる愚かな王にはなりたくない。
そう話すエミルの言葉にルートは教師役を引き受ける事にした。
そして、城の隠し部屋で語学の勉強を教え始めたルートだったが、彼女を心配したラーシュに後をつけられてしまい……。
登場人物
サンナ
城の掃除婦
黒髪ロングの女性。
職業柄、城の内部に詳しい。
ルートに城の間取りについて教える。
トキ
国民議員の一人
黒髪ツーブロックロングで顎鬚の男。
軍費や豪族への賄賂にばかり金を使う王妃のやり方に反発する国民議員の一人で、秘密集会の参加者の取り纏め役。
イェールハルド
北の王子
黒髪ロングで褐色の肌の青年。
北の国は王位継承者を国民の誰でも参加出来る祭で決める。
その祭で文武両道の実力を示した者が、国民投票により次代の王となる。
つまりは王子であっても、力がなく国民の人気を得られなければ国を引き継ぐことは出来ない。
彼はその祭で実力を示し、名実共に北の国の王位継承者となった。
ルートの兄、ラーシュと面識があるようだが……。
あらすじ
ルートの後をつけ、秘密の部屋に踏み込んだラーシュ。
彼は母親である王妃の言いなりで覇気のないエミルの事を低く評価していた。
また、ルートが王子に近づくことで、王妃の視界に彼女が入る事にも危惧を抱いていた。
現状で前王の子であるラーシュは王妃から監視されていた。
城の書庫番、それも下っ端のルートには今はまだ、監視はついていないが、王子との事が発覚すれば危険に巻き込まれるかもしれない。
ラーシュはそれに不安を感じていたのだ。
そんな兄の言葉を聞き、ルートは考える。
エミルもラーシュも王妃が相手だ。
王妃を共通の敵として二人は手を取り合えるのではないか。
ルートは自分を信じて少し待っていてほしいとラーシュに告げ、エミルが暮らす城について書庫で調べものを始めた。
城の掃除婦、サンナから城の間取りを聞き出し、彼女は計画を進めていく。
そして数日後の夜。
今後の事を考え、焦りを抱いていたエミルの部屋の衣装棚がギシギシと鳴った。
その後、棚の扉がおもむろに開き、そこからにゅうと二本の足が突き出た。
驚き目を見開くエミルの前に姿を見せたのは、ルート、そして彼女の兄ラーシュだった。
感想
今回はルートの身を案じ、彼女の後をつけたラーシュにエミルとの勉強会がバレるシーンから始まり、ラーシュの危惧する事、エミルとラーシュの話し合い、国民議員の秘密集会とエミル、北の国の祭、人形劇とエミルを知ってもらうために、北の王子の来訪などが描かれました。
その中でも今回は、王妃が国民に王子が無能だと思わせるため行っている人形劇についてが印象に残りました。
劇は勇敢だった国王の死後、彼の意思を引き継いだ王妃と、その王妃の導きが無ければ何も出来ない王子の姿を民衆達に伝えるものでした。
作品の世界観は中世のような、民衆の識字率が低い時代。
そのため王妃は新聞等の文字で情報を伝えるものではなく、多くの人が理解出来る人形劇によって王子の無能さを印象づけたようです。
エミルの為人を知れば、それが嘘であるとすぐに理解出来るのでしょうが、今のように情報機器が発達していない時代では、一気に印象を正すことは難しいように感じました。
そんな状況の中、ルートはエミルのために何か出来ないかと行動し始めます。
その事が王妃に目を付けられる結果を生まないか。
エピソードを読んでいて、少し不安に感じました。
まとめ
この巻のラスト、北の王子、イェールハルドはルートの兄、ラーシュとの再会を果たします。
過去に接点のあった様子の二人。
彼らの邂逅が物語にどんな影響を及ぼすのか。
次巻も読むのが楽しみです。
この作品はPalcy(パルシィ)にて第一話が無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。