19番目のカルテ 徳重晃の問診 2 ゼノンコミックス
著:富士屋カツヒト
医療原案:川下剛史
出版社:コアコミックス
様々な患者の症状を見極め専門医へバトンタッチする総合診療医、徳重とその下で学び始めた滝野の日々を描いた作品。その第二巻。
登場人物
大府健介(おおぶ けんすけ)
長距離トラックのドライバー
日常的なだるさや日中に強い眠気を感じており、それが原因で事故を起こしかけムチ打ちに。
そのだるさの原因を探る為、整形外科から総合診療科に回された。
安城(あんじょう)
糖尿病を患う男性
髯で眼鏡の物静かな男性。
それとは逆に彼の妻は勝気で良く喋る。
夫婦仲が良くないのか奥さんはいつもイライラしている。
東郷(とうごう)
頭頸部外科の医師
外科部長である東郷の息子であり、未来の幹部候補。
患者の男性に下咽頭がんを告知し、手術を提案した。
その際、患者から徳重の名前が出た事で総合診療科を訪れる。
堀田(ほった)
東郷の患者、男性
下咽頭がんを患い東郷から切除手術を打診される。
その際に伝えた声質の変化を彼は気にしているようだ。
赤池(あかいけ)
徳重が赴任した離島の診療所の医師
離島医療についての著作や、それを元にしたドキュメンタリーが作られる等されている有名な医師。
徳重もそれで彼に憧れを持っていた。
しかし、非番の日は常にハーフパンツで釣りなどして遊んでいる。
そのクマ髯とハーフパンツからついたあだ名はヒゲパン。
ぐうたらに見えるが島民の信頼の篤い優秀な医師。
あらすじ
総合診療科に移り徳重の下で学び始めた滝野。
しかし、徳重の様な診察はまだ出来ず現在は彼の後ろについて回るだけだ。
そんな中、同期の整形外科医、鹿山は当直を任されたという。
仲間の成長に焦りを感じつつ自分も頑張らないとと、滝野は気合を入れ直す。
そんな彼女に徳重は一人での診察を任せた。
張り切りつつも、徳重の過去の助言、「思い込みや決めつけは良くない」を意識し丁寧に患者の症状を探っていく。
その日、診察出来たのは八人。整形外科の時はもっと見れていた。
更には、徳重はその日、三十人診察したと言う。
落ち込んだ様子の滝野に、診察人数を自分の評価基準にしてはいけないと徳重は言う。
それでも落ち込んだ様子の滝野に「君はこの調子で大丈夫」と彼は笑みを浮かべた。
感想
今回は滝野の診察と臨床推論、夫婦の仲、外科医と総合診療医の仕事、離島医療と徳重の師匠の四つのエピソードが収録されました。
その中でも印象に残ったのは下咽頭がんの男性のエピソードでした。
その男性、堀田の職業はアナウンサー。
声の仕事をしている彼にとって声質の変化は死活問題の筈です。
告知をした頭頸部外科の東郷は腕も良く経験も豊富な外科医です。
ですがその経験に基づき最良の方法を提示するのみで、堀田のバックグラウンドに対する気遣いなどはありませんでした。
読んでいて感じたのは東郷は悪意とかでそうしているのでは無く、堀田が生きる為の最良の道を最短で提示しただけなのだろうなと言う事でした。
専門になればなるほど、その部位以外の事は見えなくなる。
それはどんな仕事でもそうなのかもしれません。
例えば俳優は自分の演技を気にし、メイクさんは髪の乱れを気にする。
それを撮影するカメラマンは被写体をどう撮るか気にする筈です。
そう考えると徳重は、彼ら専門医が円滑に仕事が出来る様にする監督やプロデューサー的な役割なのかなと少し思いました。
まとめ
今回は総合診療、特に臨床推論における会話やコミュニケーションの重要性がテーマに置かれていた様に感じました。
人はそれぞれがそれぞれの人生を歩いていて、同じ病でも人の数だけアプローチが変わる。
読んでいてそんな事を思いました。
この作品はゼノン編集部で一部無料でお読みいただけます。
作者の富士屋カツヒトさんのツイッターはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。