金沢古妖具屋くらがり堂 冬来たりなば ポプラ文庫ピュアフル
著:峰守ひろかず
画:鳥羽雨
出版社:ポプラ社
妖怪たちが使っていた古道具、古“妖”具を取り扱う店「蔵借堂(くらがりどう)」の物語、第二弾。
ひょんなことから蔵借堂でアルバイトをする事になった、人間の高校一年生、葛城汀一(かつらぎ ていいち)とその店で暮らす妖怪であり友人の濡神時雨(ぬれがみ しぐれ:唐傘お化け)の日々を描いた作品です。
登場人物
小春木裕(こはるぎ ゆう)
汀一が想いを寄せる少女、亜香里(あかり:送り提灯)が通う学校の先輩
痩身で古風な丸眼鏡をかけた髪の長い普段着が和装の少年。
文学、特に泉鏡花が好きらしい。
古い万年筆を使い、紙に妖怪を封じる事が出来る。
過去に妖怪によって母を亡くしたと思っており、妖怪に対し憎しみを抱いている。
話が長い。
鈴森美也(すずもり みや)
汀一達のクラスメイト
ショートカットで細身の人懐っこい女子。
とある妖怪が関係した事件で汀一に自転車を貸した。
その事で汀一と時雨が何か隠していると気付いている。
そんな事もあり、今回は二人に怪現象が起きる取り壊し予定の曽祖父宅の調査を依頼する。
志鎌果織(しがま かおり)
初雪の頃、汀一が出会った少女(妖怪)
身長百四十センチ程の中学生ぐらいの少女。
優しい汀一を兄の様に慕い懐いた。
狭霧(さぎり)
霧の中の宿「白姫荘」の主(妖怪)
和服を着た日本人形の様な若い女性。
仕事で訪れた温泉街を散策していた汀一達が、霧で迷い辿り着いた宿「白姫荘」に彼らを招き入れた。
冒頭あらすじ
九月のある日、アルバイト先の古道具屋、蔵借堂で汀一は肉付き面(被ると取れなくなり、人の心を操り鬼に変える。汀一は面に操られ自分の意思では無く被ってしまった)という曰く付きの面を被り騒ぎを起こしてしまった。
それはすぐに友人である時雨が治めてくれたのだが、先日の一件以来、ここ金沢では妖怪やその妖怪たちが使っていた道具、妖具が活性化しているらしい。
だが時雨や亜香里等、妖怪と親しく接している汀一はそれ程深刻に考えてはいなかった。
その後、汀一は戻って来た亜香里と時雨を交えて現代文の課題について相談する。
課題は金沢の文豪の作品を二つ読み、それについてレポートする事。
汀一は怪異について書いている泉鏡花を選んだのだが、難しく物語を読み解けずにいたのだ。
そんな汀一に、亜香里はどの作品が初心者には読みやすいかアドバイスしてくれた。
詳しいねと感心する汀一に亜香里は一学期に似たような課題があり、その際、学校の先輩に相談に乗ってもらったのだと答えた。
その先輩、小春木裕の事を楽し気に話す亜香里に、汀一は課題どころでは無く落ち込んだ。
顔色を悪くした汀一を気遣い、時雨は会話を止めさせ汀一に渡す物があると席を外す。
戻った時雨が差し出したのは護身具だった。
先日の一件で汀一に恩義を感じている時雨は、彼の身を案じ護身用の妖具を度々渡してくれる。
時雨は自分を気遣ってくれるが、友人だと思っている時雨にそんな風に恩返しされる事を汀一自身は少し心苦しく思っていた。
友人関係というのは恩の貸し借りといった物では無いと思うからだ。
しかし、この生真面目な友人の心遣いを無碍には出来ず、有難くその妖具を受け取った。
その日のバイト帰り、汀一は腐った太い木の枝の様な妖怪に襲われ水の中に引き摺り込まれそうになる。
一旦、時雨の妖具で難は逃れたものの妖怪は怯む事無く汀一を狙う。
だがその妖怪「水熊」は、突然現れた丸眼鏡の髪の長い少年の使う万年筆によって紙の中に封じられた。
礼を言う汀一に次は君の番ですと万年筆を構えた。
どうやら妖具を使った汀一を妖怪だと誤解したらしい。
このままでは封じられてしまう。
話の通じない少年に恐怖を感じた汀一は、「ああっ!」と叫び声を上げ後ろを指差すという古典的な方法で何とかその場から逃げ出すのだった。
感想
今回は妖怪ハンター的な事をしている少年、小春木裕のお話の他、友人の曽祖父の家で響く奇怪な声を調べる話、初雪の季節に出会った少女、温泉街の霧の宿、復活した大妖怪等の全六話が収録されました。
今回はその中でも汀一が出会った少女、志鎌果織の話が印象に残りました。
なんだか幻想的で本当に淡い雪のような、切なく優しいお話でした。
また、今回登場した小春木裕は今後も準レギュラーとして頻繁に登場する様です。
本の虫であり、妖怪を封じる力を持つ裕が今後どんな活躍をするのか、そちらも楽しみです。
まとめ
なんというか、汀一の恋愛事情は時雨が女の子だったら万事解決するんじゃなかろうか。
そんな感じを読んでいて受けてしまいました。
だって時雨、汀一にデレデレなんだもの……。(作品的には友情であり恋愛感情とかでは全くないのですが)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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