小説 小説短編

後宮の烏 4

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筆と硯後宮の烏 4
著:白川紺子
画:香魚子
出版社: 集英社 集英社オレンジ文庫

後宮の最奥、夜明宮(やめいきゅう)と呼ばれる殿舎に住む夜伽をしない妃、烏妃(うひ)寿雪(じゅせつ)の物語。

今回は寿雪達の住む国、霄(しょう)の南、賀州(がしゅう)を治める沙那賣(さなめ)の長、朝陽(ちょうよう)が京市(みやこ)を訪れます。

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登場人物

淡海(たんかい)
寿雪に仕える宦官
同じく寿雪に仕える宦官、温螢(おんけい)とは対照的に軽薄な発言が目立つ。
烏妃としての寿雪ではなく、彼女個人に恩義を感じているようだ。

晩霞(ばんか)
皇帝の妃の一人、鶴妃(かくひ)
賀州の有力豪族、沙那賣の長、朝陽の娘
父である朝陽への想いと、自分を救ってくれた寿雪への友愛の狭間で揺れている。

朝陽(ちょうよう)
沙那賣の現当主
彼の行動指針は一族を守る事が第一に置かれている。
現在は皇帝高峻(こうしゅん)に従っているが、それも一族の益になると踏んだため。
国を乱れさせる可能性のある烏妃の存在を危険視している。
その為であれば少数の一族の者が犠牲になる事も厭わない。

白雷(はくらい)
朝陽とは共闘関係にある巫術師
新興宗教「八真教」の教祖。
烏漣娘娘及びそれを守る烏妃を憎んでいる。
呪術を用い寿雪の排除をもくろむ。

隠娘(いんじょう)
八真教の巫婆
幼いながらも強い力を持っている少女。
寿雪に仕える宦官の少年衣斯哈(いしは)とも関係があるようだ。

梟(ふくろう)
幽宮(かくれのみや)に幽閉された力ある存在
烏妃の中に封じられた烏漣娘娘の解放を望む。
現在は大海螺(おおまきがい)を使い烏漣娘娘と烏妃、両方を救う道を探るべく高峻に助言を与える。

斯馬盧(すまる)
烏漣娘娘の鳥
褐色の羽毛に白い斑点のある星烏(ほしがらす)
寿雪の願いを受け、その羽根は剣に変わる。

蚕神(さんしん) あらすじ

鶴妃、晩霞の住まいである泊鶴宮の北、桑畑にある蚕室(養蚕を行うための施設)に宮女の幽鬼が出るという。
そんな噂を侍女の九九(ジウジウ)から聞いた矢先、寿雪はその蚕室で働く宮女、年秋児(ねん しゅうじ)から件の幽鬼が蚕の繭を盗んだと聞かされる。

繭は鶴妃、ひいては皇帝である高峻の物であり、数が足らないとなれば大事となる。
秋児は事が発覚し罰を受ける事を恐れ、寿雪に事件の解決を願いに来たのだった。

金の杯 あらすじ

勒房子(ろくぼうし)、後宮内の犯罪を取り締まる皇帝直属の組織。
以前、後宮は皇后が長として全権を取り仕切っていたが、先の皇后の悪逆な振る舞いから高峻が権限を分散させる為生まれた組織だ。

その勒房子達が寿雪に仕える宦官、淡海を捕縛する為、夜明宮を訪れる。
聞けば内侍省の宦官が殺され、その殺人の疑いが淡海に掛かっているという。

殺されたのは牧憲(ぼくけん)という名の宦官で、かつて淡海の家で知家事(ちけじ:召使い頭)をしていた者だという事だった。
牧憲は淡海の家が没落した際、家財の一つ金の杯を盗み逃亡した。

勒房子は淡海がその牧憲が内侍省にいる事を知り、復讐の為殺害したと考えている様だった。

墨は告げる あらすじ

新たに中書令(ちゅうしょれい:皇帝の秘書官)となった何明充(なん めいいん)に使われている令孤之季(れいこ しき)は妹の仇である白雷への恨みを捨てる事が出来ず、今も袂を妹の小明(しょうめい)に引かれながら学士として宮中で働いていた。

彼は訪れた洪濤殿書院の史館(国内の書物を蒐集保管する書庫)で鴦妃・雲花娘(おうひ・うんかじょう)と出会い彼女と共に自らの書いた書物を探す幽鬼を見る。

紙を盗み(防腐処理された紙は大変高価)処刑されたという経生(古文書の写本を行う)を楽土に送ろうと渋る之季を他所に、花娘は寿雪に幽鬼の事を話すのだった。

禁色(きんじき) あらすじ

人との関りを持ってはいけない。
先代烏妃である麗嬢(れいじょう)の言いつけを破り、様々な問題を解決してきた寿雪。

そんな寿雪の周辺が最近俄かに騒がしい。
情報に聡い淡海の話では、寿雪を緇衣娘娘と呼び崇める事が広まっているらしい。
国の成り立ちに関係し皇帝と対を成す烏妃。

その烏妃が人心を集める事は災いの種になる。
寿雪は暫く夜明宮に人を通さない様、温螢、淡海に命じるのだった。

感想

今回は南の有力豪族、沙那賣の長、朝陽の思惑を語りつつ後宮内で起こる事件が描かれました。

朝陽は人物紹介で書いた様に一族の存続を第一に考え、娘である晩霞、その側仕えの宮女であり一族の一員である吉鹿女(きつ ろくじょ)も存続の為の道具と見ているようでした。

朝陽は一族の安寧の為、国が揺らぐ事を危惧し朝を二つに割るかもしれない烏妃の存在を危険視しています。
彼が何処まで烏妃について知っているのか、現状では分かりませんが出来るなら取り除いてしまいたいと考えている様でした。

寿雪自身は周囲の人々を助け、苦しみ現世を彷徨う幽鬼を楽土に送りたいだけだと思うのですが、彼女の出自と烏妃という存在がそれを困難にしています。

彼女の優しさが周囲に慕う者を集め、それが国を乱れさせるかも知れない。
果ては高峻と寿雪を引き離すという事にもなりかねない。

物語は微かな光が見えるのみで暗雲が立ち込めていますが、高峻と寿雪には末永く仲良く碁を打っている未来があればと願います。

まとめ

少しずつ明かされる烏漣娘娘と鼇の神。
寿雪の身の内に封じられた神の半身。
今回はその解決の糸口の様な物が少し見えました。
次巻も楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品は集英社公式サイトで試し読みが可能です。
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※イメージはPixabayのSpencer Wingによる画像です。
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