逃げる少女 ~ルウム復活暦1002年~ 4 ボニータ・コミックス
著:紫堂恭子
出版社:秋田書店
東方諸国の兵隊長ハスタムに捕らえられ、イドラグールから東方諸国へ運ばれたジュスベルでしたが、見張りの兵の隙を突き脱出。
その街並みからセスが話していた彼の故郷ヴァレスだと推測したジュスベルは、セスとの会話を頼りに彼の実家を目指します。
一方、セスもジュスベルを取り戻す為、イドラグールから東方諸国、ハスタムが目指しているだろう中立都市トリヴィウムに向かっていました。
しかし、その選択が間違っていると気付き、故郷ヴァレスへ進路を変えました。
彼がヴァレスを除外していた理由。
それは家族を全て無くし、墓しか無い無人の家に戻る事を無意識に躊躇っていた為でした。
登場人物
マニー
セスの実家のご近所さん
とても親切なおばさん。
家族を亡くしたセスを気遣い、世話を焼いてくれた。
セスの家を探していたジュスベルに道を教え、お菓子を与える。
ヴィゴ
東方諸国の中立都市トリヴィウムで捕らえられていた男。
人懐っこいお調子者。
ジュスベルを探しトリヴィウムを訪れ街警察に捕まったセスを手助けする。
彼が捕まった理由は不明だが、トリヴィウムの街警察は腐敗しているので恐らく保釈金目当てでは無いかと思われる。
あらすじ
セスとの会話を頼りに彼の実家へと辿り着いたジュスベル。
その辿り着いたセスの家で疲れから眠ってしまったジュスベルが目覚めた時、目の前にいたのはセスでは無くハスタムだった。
ジュスベルを兵器として利用しているハスタムは、大国ルウムの貴族と通じその貴族の使いにジュスベルの力を見せる為、彼女の過去を占い師に占わせる。
ハスタムはジュスベルから聞きだした情報で、地震の発動が呪術に関わりがあると考えていた。
以前、占い師の水晶玉を覗いた事で、自分を追う何かが水晶を砕いた事を覚えていたジュスベルは必死に目を閉じ水晶玉を見ないよう抗う。
しかし、セスの家への道を教えてくれたマニーの介入で思わず目を開けてしまった。
その視線の先には水晶玉が。
その水晶玉を見た瞬間、水晶玉は砕け、雷に似た何かと奇妙な声、そして激しい地震が発生した。
その二日後、ヴァレスに着いたセスは、一昨日聞いた世界中の空気が振動している様な奇妙な声がジュスベルに関係していると考え、家への道を急いでいた。
辿り着いた実家は倒壊、家の裏にあった三つ並んだ家族の墓石も全て倒れていた。
まさか、ジュスベルが下敷きに!?
倒れた家の残骸をかき分け、名を呼びながらセスはジュスベルを探す。
やがて彼は砕けた水晶の欠片を見つけた。
恐らくハスタムが黒呪術師を使い、意図的に「何か」を呼び寄せたのだ。
そう考えセスがハスタムに黒い感情を募らせていると、明るい声がセスを呼んだ。
そちらに目を向けると、お隣さんであるマニーおばさんが驚いた顔で駆け寄ってきた。
マニーから話を聞くと、想像通りハスタム達だと思われる兵士らがジュスベルに呪術を使い引き起こした事の様だった。
ジュスベルを連れ、馬でその場を去ったという男達。
セスはすぐさま追おうとするも、せめて墓だけはと倒れた墓の修復を口にした。
そんなセスにマニーはお弁当をといそいそとその場を後にする。
去っていくマニーの背中を見ながら、セスは彼女の事を含めた故郷の事、そして戦場での経験を思い出すのだった。
感想
この巻で物語は完結です。
離れてしまったセスとジュスベルの再会、彼女を追う正体不明の何か、忌地にも無かったジュスベルの故郷等、これまで分からなかった部分が一気に解明して行きます。
ラストは切なさを感じましたが、ああする以外無かったのかなとも思います。
また、今回はセスの彼が兵士になったいきさつも描かれました。
大国貴族の利益の為、翻弄される東方諸国。
セスもまた、その大国の都合による犠牲者の一人でした。
戦争による混乱が家族を奪い、その悲しみと怒りを戦いに身を投じる事で彼は晴らそうとしていました。
しかし、いくら敵を殺しても、その憎しみが晴れる事はありませんでした。
そんな彼を救ったのはジュスベルの優しさでした。
作品は完結しましたが、セスのその後を見てみたいと強く感じるエンディングでした。
まとめ
この作品はこの巻で完結ですが、辺境警備の外伝が始まっているようなのでそちらもとても楽しみです。
今度は神官さんや隊長は出るのかな……。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。