逃げる少女 ~ルウム復活暦1002年~ 3 ボニータ・コミックス
著:紫堂恭子
出版社:秋田書店
黒呪術師カイルの導きで忌地、旧魔国「イドラグール」に向かっていたセスとジュスベル。
そのカイルは夢見の術(眠っている者の夢の中に入り過去を探る呪術)を使いジュスベルの迷子の原因を探ろうとしたのですが、その術の最中、ジュスベルを追う何かに追い付かれ大規模な地震が発生してしまいます。
セスはカイルの事前の忠告通り、ジュスベルを抱えその場を離れたのですが、カイルは地震によって出来た亀裂に飲み込まれしまいました。
一方、その現場を目撃した兵士のチャルクは隊長のハスタムに報告。
ハスタムはルウムが進めている忌地の住人の移住計画に反対の立場を取っており、チャルクが見た呪術師カイル、そして彼と繋がりを持つ忌地の住人への危機感を更に募らせるのでした。
あらすじ
亀裂に飲まれたカイル。
彼の言葉に従い、セスはジュスベルを連れて忌地である「イドラグール」に足を踏み入れた。
住民達は当初、彼を警戒したがカイルの名前を出すと彼らを受け入れてくれた。
その後、イドラグールの指導者である導師の助けを借り、ジュスベルを里に預け、セスはカイル救出へとイドラグールの民達と向かった。
しかし、その隙を突きイドラグールに潜入したハスタム達がジュスベルを攫い逃亡。
亀裂に落ちたカイルを救う事が出来ず、里に戻ったセスはジュスベルが攫われた事を知り彼女を攫った者達の足取りを追う。
一方、その頃、ジュスベルを攫ったハスタムは自分達を追って来たイドラグールの民の死体をジュスベルに見せ彼女を脅迫、ジュスベルの置かれた状況を聞き出していた。
ジュスベルを追う何かが起こす地震の力。
それに目を付けたハスタムは彼女を兵器として利用する事を思い付く。
大国ルウムとロードリアス。
その二つに翻弄され戦の続く東方諸国。
彼はその戦争を終わらせる切り札としてジュスベルを使うつもりだった。
感想
地震を起こす何かに追われるジュスベル。
その力は凄まじく岩の砂漠に深い亀裂を生み出しました。
あらすじで書いた様にセスやハスタムの故郷、東方諸国は二つの大国の利益の為、武器を売られ戦争をずっと続けています。
それは現実でもあった東と西の対立と、少し似ているかもしれません。
武力では決して敵わない二つの大国。
ハスタムはジュスベルをその大国の重要な場所へ送り込む事で、翻弄される故郷を救おうとしました。
そんなハスタムにセスは真正面から反発します。
ハスタムの起こそうとしている事はテロであり、そんな事で戦争は終わらない。
読んでいてセスの言う事は正しいと感じました。
もう随分経ちますが、現実でも大規模なテロがありました。
しかし、それによって何かが変わる事は無く、起こったのはより大きな戦争でした。
恐らく、作中でジュスベルを使った攻撃が成功しても、その先にあるのは計画を考えた者への報復の様な気がします。
まとめ
感想で色々書きましたがそういった事はこの物語の一側面に過ぎず、メインはやはりセスとジュスベルのお話です。
次巻ではジュスベルが何処から来たのか、彼女を追うモノの正体、亀裂に飲まれたカイルの行方等、様々な事が判明します。
今回は読んでいてそんな事を感じました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。