逃げる少女 ~ルウム復活暦1002年~ 2 ボニータ・コミックス
著:紫堂恭子
出版社:秋田書店
何かに追われる少女ジュスベル。
彼女が語る故郷、カルワリアのセミタ村。
元兵士で地理に明るいセスも、そんな村は聞いた事がありませんでした。
もしかしたらジュスベルは北東の岩砂漠を超えた先、忌地と呼ばれる旧魔国「イドラグール」の住民では無いか。
セスとジュスベルに出会った彼の元上司ハスタムはセスと同様にそう考え、部下のチュルクに忌地の民の危険性を語ります。
その後、周囲の探索を命じられたチュルクは偶然、猟師小屋で眠るジュスベルを見つけ……。
登場人物
チャルク
兵隊長ハスタムの部下
ジュスベルを忌地「イドラグール」の住民、呪われた民では無いかと疑い追及する。
カイル
黒呪術師(ドラティア)
魔物を使役する他、様々な呪術を使う黒髪の男。
鋭い目つきや不遜な物言いから、初対面の人が持つ印象は多分良くない。
でも根っこは凄くいい奴。
忌地の民と大国ルウムとの橋渡し役を担う。
導師
忌地と呼ばれるイドラグールの指導者
かつては冥王が封じられ魔物が蠢く不毛の土地だったが、カイルやエルディア救世王の活躍で冥王は滅び土地は浄化されつつある。
そのイドラグールに住む達を導く老人。
現在は東方諸国の西、ルウム及び東方諸国の北への移住の準備を進めている。
あらすじ
ジュスベルを忌地の民だと思った兵士チャルク。
彼は真相を知るべく一人寝ていたジュスベルに詰め寄った。
ジュスベルを一人小屋に残し、周囲の道を確認していたセスが小屋に戻るとそこにはジュスベルの姿は無く、男の物と思われる足跡が残るだけだった。
セスはジュスベルを救うべく夜の帳が下りる中、その足跡を追う。
しかし、暗い森でランプの明かり一つで足跡を追う事は、元兵士であるセスでも厳しかった。
そんなセスの前に蛍火の様な光が現れ、ジュスベルの声で語り掛ける。
思わずそれを追ったカイルだったが、同時に蛍火に対して警戒感を感じていた。
やがて蛍火は天に上り消え、暗闇の中から人の手が伸びた。
やはり呪術か妖術の類!? それとも俺がおかしくなっているのか!?
そう考えたセスの胸に闇の中から、現れたジュスベルが飛び込んで来た。
その温かさに本物のジュスベルだと胸を撫で下ろすセス。
そんなセスの前に怪しい雰囲気の黒髪の男が現れる。
どうやら男はジュスベルを襲っていた兵士から彼女を助け、セスに会いたいというジュスベルの願いを聞き入れ、彼を術を使い導いたようだ。
彼は危険な忌地近い土地に幼い少女を連れて来たセスに憤っており、理由を説明出来ないならジュスベルを預かると息巻いた。
妖術士(マスコ)らしい男にセスは正直にカルワリアのセミタ村が忌地に無いか調べに来たと話した。
そして多分と、もう一つの理由を付け加えた。
「あんたに会うためだ」
それを聞いた男はいい加減な事を言うなと声を荒げる。
険悪な雰囲気になった二人を、ジュスベルのお腹が空いたという言葉が慌てさせた。
疲れた、寒いと震えるジュスベルを休ませる為、男達はワイワイと騒ぎながらその男、カイルの野営地へ足を進めた。
感想
二巻では前作にも登場したカイルの導きで、セスとジュスベルの二人は忌地であるイドラグールに足を踏み入れました。
その土地では懐かしい顔も登場し、懐かしいと同時にとても嬉しく感じました。
カイルの登場は一ファンとしてはとても嬉しく、作中でも重要人物ではあるのですが、あくまでメインはセスとジュスベルで進み前作を知らなくても楽しめる作りになっています。
ただ、やっぱり過去作「辺境警備」を読んでいた方が作品をより深く楽しめると思います。
まとめ
感想で書いた様にこの作品は辺境警備の最後のエピソード、その後日談としての側面も持っています。
冥王が封じられていた土地、そこで暮らす人々の今後、そして交流の無かった人々が混じり合う事の弊害。
今回は読んでいてそんな事を感じました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。