庭先案内 5 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
各話あらすじ
幻燈機6
モンゴルの平原を訪れた老人。
そこで遊牧民の一家に家族と間違われる。
自分は違うと説明していた所に帰って来た男は、老人と瓜二つだった。
お願いパティシエール
自宅を改造した小さな洋菓子店。
そこに女子高生が二人尋ねて来る。
スイーツクラブだと名乗った二人を、店主はキッチンに招き入れた。
待ち合わせ
友人と花火大会に行く予定だった少女。
しかし一人はぐれてしまい、一緒に花火を見たかったボーイフレンドのトモキも遅れて来るという。
途方に暮れる彼女を、一人の老婆が自分のレジャーシートに招いた。
南方より来る
旅行好きな老夫婦は、ハワイ土産として買ったフラ人形を、土産物が飾ってあるガラスケースに飾った。
夫婦がその場を離れると、新入りのフラ人形に、他の土産たちが話しかけた。
フローラさまの夜
村の集会場に大人が集まり騒いでいる。
奇妙な声を聞いた彼らは、声の主であるボイスレコーダーを持った女性を集会所に引き入れた。
彼女はルポライター志望で、村で行われる奇祭を取材しに来たという。
町工場の秘密
工場で働く少女は、今日も仕上がった製品のバリを、ヤスリで削っていた。
製品を見ているとお腹がすく。
形が彼女の大好きなパンに似ているのだ。
昼休憩になり、工場前の土手に上ってパンを食べる。
横並びの工場の人達と、土手で一緒に食べるのが彼女の日課だ。
彼らとの話の流れで、自分たちの作っているモノの話になった少女は、自分の作っているモノが武器ではないかと不安になる。
ローリングニューイヤースペシャル
初日の出を見に、観光地を訪れたおねえちゃんと妹。
しかし、正月だというのに店は閉まり、展望台に行くケーブルカーも運休していた。
帰ろうかと相談していると、通行止めになっていた坂の上から、巨大な玉が転がり落ちて来た。
落ちてきたのは、甲羅を背負った種族で、彼らは元旦に坂に開いた穴を使い今年の運勢を決めているという。
出会ひ船
岸を渡る最終の船を逃してしまった少女。
船なら三分で渡れるが、電車となると遠回りだし、自転車の事もある。
ジュースを飲んでどうするか考えていると、船が乗り場についた。
最終だと思っていたが、勘違いだったのかと乗り込んだ船には、大量の盛りの付いた猫が乗っていた。
あっちこっち
老婦人は自分が何をしようとしていたのか、少し混乱していた。
掃除機はかけたし、取り敢えず孫に昼を食べさせようと、台所を覗くと、巨大な食材が並んでいた。
そこにいた見知らぬ人達が言う事には、自分たちはかつてこの場所に住んでいた者で、彼女も死んだので自分たちの事が見える様になったのだという。
卒業
演歌を流しながら網を引き揚げる漁船。
乗組員は二人、おやっさんと兄ちゃんだ。
その日は網にとんでもないモノが掛かっていた。
全裸の女性。
彼女に事情を尋ねると、どうやら人魚で人に捕まり、咄嗟に下半身が人になる薬を飲んでしまったようだ。
一人前の人魚になる為、一生懸命勉強したのにと泣く彼女を、おやっさんは孫娘とだぶらせてしまい、彼女を人魚の島に送る事にした。
感想
今回、待ち合わせで出てきた女の子は、四巻で刺繍を習っていた子でした。
トモキとは上手くいっているようです。
また、奇祭を取材に来たルポライター志望の女性は、今後も色々不思議なモノを取材する事になります。
今回一番好きだった作品は卒業です。
人魚とおやっさんの歌の張り合いが楽しい、人情味溢れるお話でした。
最後にこの巻で好きなセリフ
人魚「オヤさん、キました、ウタ。グーッとキて、クゥーッでした」
まとめ
今回は花火、工場、渡しの船、漁船等、日本の暮らしを感じる作品が多く収録されていたように思います。
最終ページのカット、人魚が幸せそうでとても良かったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。